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「ジュン様は、女の子に対してとことん

脇が甘いです。甘すぎです。」

ジュンの隣を歩くアシャが、少しムスッとした顔で

話し出す。

「何?突然。」

「先程のお綺麗な方がメイラールさんですよね?

昨日、メイラールさんとお買い物行きましたよね?」

「うん、まぁ。」

え?何が問題なの?ってか、何で知ってるの?

「あんな、街1番の美人と噂されてる方と一緒に

買い物してて、周りが無関心と思いますか?」

「あー、まぁ確かに凄い周りに見られてた感じは

したよ。あんな綺麗な人と俺みたいなのが一緒に

買い物なんてしちゃダメじゃないかな?って

恐縮もしてた。」

アシャは更にムスッとして

「私と一緒に歩く事は、何とも思わないのですか?」

「ん?アシャとは、やっと一緒に街を歩けて

嬉しい、が強いかな。

約束してたしね。街を案内してもらうって。」

笑顔で答えると、アシャの顔はあっという間に緩み

いつもの愛らしい笑顔を向けてくれた。

「覚えててくれたのですね。」

「もちろんだよ。楽しみにしてたし。」

うー、そういう所ズルいです、ジュン様。

これじゃ怒るに怒れません。ニヘッと満面の笑みで

ジュンの横を歩くアシャ。

「おー不殺!昨日はメイラールと逢引きして、今日は

こんなかわいい子連れてんのかよ!出てきて早々に

お前やるなー。」

ん?この人って飲んだ時、すごく話しかけてきて

くれた人だよな?券売屋さんだっけ。

って、え?何?今、逢引きって言った?逢引きって

デートってことだよね?まてまて!

「ちょっとタンマ!昨日のはただの買い物だよ?

デートじゃないよ?」

「何言ってやがる。お前がどう思ってるか知らんが

メイラールはそう思ってないだろーよ。

俺はメイラールのあんなデレデレな表情、見たこと

ねーぞ?」

ええ?そうなの?

確かに綺麗過ぎて目が合わせづらくて、表情

見てなかったけど。

「ジュン様、お分かりになりましたか?噂。」

「これ、昨日だけで街中?」

「どころか、城内にも届いています。」

マジか・・・。それでシアからの呼び出しか・・・。

ジュンは少し気が重くなった。


次の日の早朝。

ジュンは昨日の丘に向かって走っていた。

部屋でずっと練習してた時は、ランニングが

出来なかったから、やっぱり外は良いな。

しかし昨日は大変だった。

シアは凄くムスッとして、また語尾伸びるし・・・。

不安なんだよって寂しそうな顔で言われてしまった。

旅に出る前に、毎日シアに会いに行く話で

渋々納得してくれたけど。それに城内の人の視線が

痛かった。リシェさんが城内の噂は収拾を

してくれたみたいなんだけど、噂って怖い・・・。

丘の上まで来て、筋トレを始めた。

ヒヒィーン。

ん?遠くで馬が嘶く声。

そっちを見ると、まだ日も登って無いのに、街から

離れた街道に馬車が停まってる。

何か、悲鳴も聞こえる!剣を持ち走り出した。

何か起きてる!全速力で走り、馬車に近づくと

はっきりと男性の助けを求める声が聞こえて来た。

見えた!男性2人が、10人?匹?くらいの

緑色の小さいのに、襲われている。

これは、俺にそこまでの知識が無くても分かる。

ゴブリンだ!

全速力の速度を落とさず、背後から1番後ろの

1匹を蹴り込む!

ゴシャ!

ぐぎゃ!

断末魔の声を出して、前にいるゴブリン達の上を

飛び越えて数メートル転がり、動かなくなった。

何事かと一斉にこっちを見るゴブリン。

最初の一太刀は殺す殺さないを

意識してしまうのかなという不安もあったけど

勢いで1匹仕留めてしまった。

思ったより大丈夫だったな。よし。

剣を抜きざまに、2人の男性に集っていた右側の

ゴブリンの胴を切り払う。

ガスッ!

ゴブリンとはいえ、肉と骨の感触は慣れないな。

11匹のちょうど真ん中に飛び込んだから、背後に

いる事を意識。振り向きざまに、もう1匹の胴を

切り払う。

ぐぇ!

嫌な声だなぁ。更に左の男性の前にいたゴブリンの

頭を串刺し、素早く引き抜く。めちゃくちゃ

切れるな、この剣!自分の周りのゴブリンを早々に

仕留めると、ゴブリン達は俺から一度距離を取った。

その隙に男性達の所に駆けつける。

ザッと見た所、あちこち斬られているけど

致命傷には至らなさそう。良かった。

すぐゴブリンに向き直る。2匹が既にこっちに

向かって、小さな斧で斬りつけてきていた!

ゴシャ!

左手のガントレットで1匹の横っ面を

バックブローで叩き

ガスッ!

ぐぇ!

バックブローで回した身体で、そのまま2匹目の胴を剣で払った。あと5匹!

「危ない!」

後ろの1人が声を上げた。残りのゴブリンを見ると

弓を引き絞っている奴がいる!矢が放たれた!

俺の顔に向けて飛んでくる、けどランガースさんの

剣速の方が速いなこれ。

カィン!

ガントレットで弾く。

分の悪さを感じたゴブリン達が、一斉に逃げ出した!

追いかけようかと思ったけど、深追いって

危ないっていうよな。

姿が見えなくなり、深呼吸をした。良かった。

わ!っと喜ぶ後ろの2人。ありがとうございます!と

感謝の言葉を向けられた。

「とりあえず、怪我されてるから街に

入りましょう。」

俺が勧めて、2人は馬車を動かし始めた。

馬車に乗せてもらい、戻っては来ないと思うけど

ゴブリンを警戒。

それにしても、こんな街のすぐ側にまでいるんだ。

危ないもんだな。

「本当に危ない所をありがとうございました。

自分はカイノと言います。

それにしても、お強いですねー。あっという間に

6匹を倒してしまった。冒険者の方ですか?」

比較的傷の浅い男性が手綱を引き、話しかけてきた。

「あ、いえ、冒険者ではないんです。」

「そうなんですか。それは残念。リナルドまでの

護衛をお願いしたかったのですが。」

「護衛ですか。」

「はい。最近は、セジアに繋がる街道にもあの様に

ゴブリンが出てくる事が増えました。

朝早くに出れば大丈夫ではと思って動いて

みたのですが浅知恵でしたね。

やはり、ギルドに依頼して護衛をちゃんと

付けようと思います。」

街の中に入った。街は起き始め、少しずつ

賑わいつつある。2人の男性に再び礼を言われ

その場で別れた。

移動をするのにも、路上で襲われる可能性が

あるもんなんだ。

ゴブリンだって数集まればかなり驚異だよ。

この世界での、自分が抱いていた旅の認識の緩さを

実感した。

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