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「ところでよージュン。」
部屋に食事を持ってきてくれたロナール。
俺は寝台から降りて、テーブルでその食事を
いただいていた。
それにしても綺麗な部屋を借りてくれたんだなぁ。
「何?」
何とも難しい顔をしているロナール。
ん?何だ?
どうしたのかとメイとセフィルの様子を見ると
2人とも、あー・・・それねって顔。
え?何?俺何かした??
「な、何?どうしたの?みんなして。」
ロナールが顔を指でコリコリ掻きながら
「ジュンはよ?
今回、自分が何をしたか、分かってっか?」
ん?今回、何をしたか?何をしでかしたかって事??
「え?・・・えっと、ひょっとして
流浪の魔術師を、手負いで逃してしまった事?
かなりの深手を負わせて取り逃しちゃったから、また
どこかで被害が出てるんじゃって、気には
なってるんだけど・・・
もしかして、何か問題になってる?」
俺の返事を聞き、はぁ・・・ロナールが
深くため息を吐いた。
「やっぱそうかー。
ジュンよー。お前って何でこう、自分のした事を
低くみるのかねぇ。」
「本当、そうよね。」
少し呆れ顔のセフィル。
「うんうん。」
腕を組んで深く頷くメイ。
ええ?
「何?みんなして!
え?逃したのがそんなにまずかったの?」
俺がめちゃくちゃ不安な顔をしていると、開いたままの
扉の所から、クックッと笑う声。
「あ、ヤムとコッツ。え?何で笑ってんの?」
「意地悪してないで、教えてあげなさいよロナール。」
ロナールは真剣な顔になり、テーブルの上に
両肘を着き手を組む。
「ジュンよ。お前・・・無事にカイダールから
出られると思わない方がいいぞ?」
「ええー!何?!」
あははは!!
みんなで笑ってる。コッツまで声を殺して!
何なんだよー!
俺が本気で怒りそうな顔をしていると
「悪かった、ジュン。
教えてやっから、一緒に来てみ。」
ロナールに誘なわれて、ふて腐れ顔で部屋を出る。
寝台のある部屋も綺麗な部屋だったけど、え?
リビング?じゃあさっきのは寝室?
何?この立派な部屋。
「この扉の先が外だ。自分で開けてみ?」
カイダール、何だよね?
さっきセフィルもロナールも言ってたもんな。
恐る恐る扉を開けて外を見る。
ベランダ?いや、バルコニーって言うべきか?
出てみると、ここが二階の部屋だと分かった事と・・・
外を見下ろした目の前に、とんでもない人集り??
目の前のすごく広い広場に、ぎっしり、更にその先の
道まで。見える所は人で埋まってる。
「な、何?何事?」
「あ!見て!出てきた!ジュンだ!」
誰かの一言から
どわぁーーーー!!!!!
大歓声!!
ジュン!!ありがとうー!
ジュン様ー!!ありがとうございまーす!!
不殺ーー!!やっぱりすげーぞー!!
色んな呼び声、大勢の呼び声に、思考が固まる。
ロナールが隣に来て、俺の肩をポンッと叩き
「こんなに大勢がジュンを呼んでんだ。
手でも上げて返すべきじゃねぇか?」
ええ?
「あ、ああ。」
そっと手を上げると
どっわぁぁぁーーーーーーー!!!!!
うわぁ!
更にバカデカい歓声で返ってきた!
人数が凄い。闘技場の比じゃない。
真正面からぶつかる様にかかる音の圧力。
「分かったか?ジュン。今回、お前がした事。
流浪の魔術師を逃したんじゃない。
追い出したんだ。
お前はカイダールを救った救世主なんだよ。」
「・ ・ ・ ・はぁ??!!!」
身体が潰されんばかりの音量に圧倒され
ただただ立ち尽くす。
だけど、こっちを見てくれているみんなの表情は
笑顔ばかりで、あれだけの被害を出しながら
こんなにも喜んでもらえて、元気を出してくれてる。
その事だけはたまらなく嬉しくなった。
これで、第5章は終わりになります。次が最終章なのですが、先日書いた通り、申し訳ありませんが仕事の忙しさを抜けるまで少し休載させていただきます。何度もすみません。




