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かなり広い広場から警笛が聞こえ、手にある石の光が
そこを指している。遠くに見える大勢の取り巻き。
人が多いせいで流浪の魔術師が見えない。
どういう状況なんだ?
走る身体に少し重さを感じつつ近づく。
「全員近すぎる!固まるな!さっき東区では
魔法の一撃で壊滅させられている!もっと散らばれ!」
カルソさんがキツそうにしながらも
声を張って叫んだ。
「散開!」
こちらの警備隊の隊長らしき人が声を上げて指示する。
人集りが大きくばらけた。
そのおかげで、取り巻きの中心の流浪の魔術師が
視界に入った!
1人が影に捕まり足元に3人、痩せ細って倒れている。
その向こうにも数人倒れているのが見えた。
捕まえては吸っているんだ。
今は矢や投擲武器、魔法を打ち込んでいるから
俺は安易に近づけない。少し離れた所で足を止めて
少し静観する形になった。
攻撃も魔法も全てあの影に止められている。ただ
流浪の魔術師もまだ苦しんでいる感じに見える。
遠目から、さっき刺したダガーがそのまま
刺さってるのが見えた。抜く事をしないのか。
さっきダガーを刺した時、出血は無かった。
きっと命そのものはもう・・・だけど、ダメージは
明らかに入った。
ここからは想像だけど、流星のかけらはやっぱり意識を
持っていて、セフィルのお父さんの意識と精神的に
繋がってるのかもしれない。
だから、ダガーが刺さった時に、身体は亡くなって
いてもお父さんの意識は、ダガーが刺さった痛みとして
認識して、それが流星のかけらにも強い痛みとして
認識された。そんな感じだろうか。なら、身体に
ダメージを入れられれば、流星のかけらにダメージが
入ってくれるのか?
考えを巡らせていると、フッと流浪の魔術師の姿が
消えた!すぐ近くの集団の一角に現れる。
影が3人を捕え生気を吸い取り始めた。
うわー!
その周りにいた人達が、慌てふためきながら
蜘蛛の子を散らす様に逃げ出す。
このままじゃ被害が増える一方か!動き出そうかと
思った瞬間、流浪の魔術師が生気を吸いつつ
同時に詠唱に入った!回復された!マズい!
「いかん!流浪の魔術師が詠唱を始めた!退避しろー!
全員その場から可能な限り退避だ!」
叫ぶカルソさん。ここからだとまだ少し距離はあるにも
関わらず全身に鳥肌が立つ!
「セフィル!下がるぞ!ここでも危険だ!」
セフィルを見ると、辛そうな表情で固まったまま。
あんな、人の生気を吸い取り続けている姿を
見てるんだ。無理も無い、けど!
「セフィル!しっかりしろ!」
肩を掴み揺すると、ハッと気を戻し
「ジュン!ごめん!」
「下がるぞ!行こう!」
の、言葉と同時に流浪の魔術師に目線を移す。
詠唱する流浪の魔術師が、杖を上に掲げていた。
杖の先端から上に向かって、とんでもないサイズの
火の玉が出来上がっている。
あれ、ファイヤーボール?
ボールなんて可愛らしいサイズじゃないぞ!
「マズい!走れ!」
業炎
流浪の魔術師の呟く言葉と共に、杖が振られた先に
向けて炎の塊が飛ぶ。
こちら側よりももっと左の方!
1番人の多い方向に飛ばした!
左側を走るセフィルの腰を掴み、右側の少しだけ
積み上がっていた石畳の山に向かって強く飛ぶ!
伏せてギリギリ身体を隠せるくらいの高さ。
「伏せろー!!」
周りに聞こえる様に叫び、セフィルを抱き込み
自分の下に引き込む。
ズッ
遠くで着弾した音が聞こえた途端
カァーーー!!!
高熱が奔り背中を掠める様に焼く
ドォーーーー!!!
次いで爆風と爆炎が飛んできた。頼りにした
少しばかりの石畳みの山は次々と吹き飛び、身体が
炎に晒される。
左手の指輪が今まで見た事ない強い光を発していた。
しばらくしてやっと、爆風と爆炎が徐々に弱まり
終えた。
範囲内とはいえ、着弾点からかなり距離が
あった事、小さな山とはいえ、少しの間遮ってくれた
石畳みの山があった事、そして、指輪があった事。
全てがギリギリで好転してくれて・・・セフィルを
何とか守り、俺もギリギリ一命を取り留めた。
ただ、背中は熱波と爆炎で強く焼かれ
レザーアーマーは、背中側が完全に焼け落ちた。




