4
ジュン!意識を落としちゃダメ!気をしっかり持って!
お願い!私を呼んで!ジュン!
また、この声だ。
頭の中に響いている。誰なんだろう。
ぼんやりと夢と覚醒の狭間で聞こえる声。
俺を呼ぶその声が、徐々に聞き覚えのある声に
変わっていく。
「ジュン!起きて!ジュン!」
ハッと意識が戻る。ここは・・・
目の前には泣き顔のセフィル。と、えっと
そう、カルソさん。
「ジュン!ジュン!良かった!」
首に抱きつくセフィル。
「目が覚めて良かった!途中で外せたとはいえ
生気を吸い取られたのに大した精神力だ!」
少しずつ頭が回り、やっと状況を思い出した!
「る、流浪の魔術師は・・・どうなった?」
「奴は、再び苦しみ、つい先程姿を消した。」
「姿を、消した?・・・転移?」
俺はガバッと起き上がろうとしたが、身体が
とてつもなく重く、いう事を聞かない。無理矢理に
上半身を起こし、手元にラルさんから貰った石が
無い事に気付く。
周りを見回すと、少し離れた所に光を見つけた。
くっ
立ち上がろうとする身体がとてつもなく重い。
頭がフラつき、倒れそうになるのを何とか堪えた。
「無理するな!今私が精神力贈与をしたが、あの短い
時間では大して回復出来てないはずだ!」
「大丈夫、です。それよりも流浪の魔術師が・・・
流星のかけらが、どこに向かったのか調べないと。」
「どこに向かったのか、なんて分かるのか!」
セフィルが石に気付いて取ってきてくれた。
光はまだ強い!そんなに遠くに離れていない。
傷を負って、遠くに飛べないって事か?方向は・・・
「こっちの方向は、どこになりますか?」
カルソさんに聞いた。
「そっちは・・・西地区、だ。」
「西!街の反対側!まだカイダールにいる!」
「何だと!」
ピィー!ピィー!!
遠くから警笛が聞こえてきた!
「いけない、西には孤児院が、みんなが行ってる!
行かないと・・・。」
走り出そうとしたが、数歩歩いて頭がフラつき
片膝をついた。くっそ・・・
「ジュン!無理しないで!」
「でも、行かないと。みんなが危ない。」
「レイナル!急いで馬車を持ってこい!
それと、向こうでオプトーヤが怪我人を
癒しているはずだから、急いで連れてこい!」
「分かりました!」
「ジュンと言ったな。君を馬車で西地区まで運ぶ。
その間、私が君に精神力贈与をかけ続け、今連れてくる
オプトーヤに、君の体力を回復させ続けよう。
私達の力量では、全回復までは程遠いかもしれんが
今よりは随分マシになるはずだ。」
「良いんですか?」
「君は唯一、流浪の魔術師に一撃を入れられた。
奴をカイダールから追い出すには、今の所君に頼るしか
方法が無い。」
「ありがとうございます、助かります。」
「隊長ー!」
レイナルさんが馬車を走らせて叫んできた。
「ジュン、肩に掴まれ。行くぞ!」
運ばれながら、西の上空を見上げる。まだ、隕石は
見えない。
「みんな・・・無事でいてくれ・・・。」