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カイダールの東側に戻ってきた。
隕石が、降り注ぐ光景が目の前に広がっている。
あちこちから上がる火事、煙。
「第2波が東地区に落ちているぞ!
東地区から離れろ!」
叫ぶ声が聞こえる。これは第2波!
1回目はどこに落ちたんだ?!
首飾りを見ると俺たちの位置から北の方を指している。
街の形を大まかに考えると北東か!
だとすると北と東に落としたのかもしれない。
何にしても、この隕石の落下の中を光が指している。
俺はセフィルを見て
「隕石の中を通過しようと思う。
かなり危険だけど、セフィルは」
「もちろん行く!」
俺が言葉を言い終える前に返事が戻ってきた。
「行くぞ、気をつけてね。」
「うん。大丈夫。」
再び全速力で走り出した。
隕石の雨を走り抜ける中、凄惨な光景が目に映る。
潰される建物、人、燃え盛る火事。それでも容赦無く
降り注ぐ隕石。
俺はセフィルが心配になり、走りながらセフィルを
見た。ローブで表情は見れない。でも、俯いて
走っている。この光景を直視出来ないでいるんだ。
そうだよ、辛く無いはずが無い。
俺は走りながら叫んだ。
「セフィル!俺は、これは流星のかけらの意思だと
思ってる!
決して!セフィルのお父さんの意思なんかじゃない!
お父さんは200年に渡って、流星のかけらに
身体を使われてしまった被害者なんだ!」
「ひ、がい、しゃ?」
余りにも凄惨な状況を父が作っている、その現実を
受け入れ切れずに、可能な限り周りを見ずに顔を伏して
走っていたセフィルが、ジュンの言葉に少しだけ
顔を上げた。
お父様が、被害者?
「そうだよ!森のためにって動いたお父さんが!
加害者であってたまるかぁ!!
きっと!今でもお父さんは!流星のかけらの意思と
戦ってるって、俺は信じてる!!」
セフィルは、顔を上げた。流れる涙を拭い
キッと前を見る。
「そうだよね!お父様は戦ってる!
お父様の意思はきっと残ってる!」
そうだ。絶対にセフィルの声を届けるんだ。
大き目な隕石の飛来!マズい!俺はセフィルの
腰を抱えて強く横に飛んだ!
ズドォ!!
俺らが走っていた道や、その周りの建物を巻き込み
地面を大きく抉り隕石は地面に衝突した。幸いな事に
この辺はもう、人は居なくなってる。
「ジュン!ありがと!」
「うん、行こう!」
再び走り出す。もう道に、隕石が落ちてない所の方が
少なくなってるくらい降っている。とにかく光を
頼りに走り続けるといきなり隕石群から抜けた!
抜けた先は・・・何十人もの人達が黒く焦げ
倒れている場所。
その中心に、黒い影を纏う者。
俺の手に持つ石の光が強く輝き、黒い影に届いていた。
「・・・見つけた。流浪の魔術師。」
・・・ゴ・・・ゴ・・・ゴ
空を仰ぎ、隕石を呼ぶ黒い影。
その胸に輝く赤い光。
俺とセフィルは、目の前の凄惨な光景に
一度足を止めた後、ゆっくりと近づいていく。
倒れていた人が1人、苦しそうに起き上がった。
「近づくな・・・あれは、厄災、だ・・・危険だ。」
「大丈夫ですか?!」
声を掛けてくれた人に手を差し出し、掴んで
起き上がらせる。
「大丈夫だ。私は警備隊隊長、カルソだ。
この倒れている者達にもまだ生存者は多くいるはず。
何とか治療にあたりたいのだが。」
「では、治療を優先して下さい。
流浪の魔術師を、何とか食い止めてみます。」
「1人でか!?無茶な!」
不意にセフィルが数歩前に駆け出しフードを外した。
「お父様!聞こえる?!お父様!!」
空を仰ぐ流浪の魔術師に声をかけた。
セフィルの声に対して反応は無い。
「お父様?」
カルソさんが、どういう事だ?という顔で
こっちを見る。
「彼女は、あの胸の流星のかけらに身体を
奪われた魔術師の、娘です。」
「厄災の娘?!」
「違う!!厄災は、あの流星のかけらだ!
身体はただの人なんだ!」
「流星のかけら・・・そうか。
流浪の魔術師の事情を知っている者、と言う事か。」
「お父様!!私だよ!!セフィルだよ!!
思い出して!!お願い!!負けないでー!!!」
懇願する様に叫ぶセフィル。
ゴ・・・・・・グ、グ
発していた声が止まった。いや、無理やり、止めた?
「お父様!!」
グ・・・ゴ、グ・・・
「厄災が・・・苦しんでいる、のか?
彼女の声を聞いて。・・・抵抗している?」
カルソは明らかに先程までの様子と違う厄災に
「分かった。厄災を頼む。
こっちは少しでも多く治療していく。」
「お願いします。」
そう言って、セフィルの隣に行った。
セフィルの肩に手を置く。
「セフィルの声届いてる。お父さんが戦ってる。」
「うん、うん!」
「セフィルは声をかけ続けて。俺は・・・
あの首の鎖を、流星のかけらを断ち斬ってくる!」
セフィルは肩に置いた俺の手を掴み
「ジュン!お願い!!」
俺は頷き、一気に全速力で駆け出した。