13
「カイダールから東に向かうならよ?アジトを
通過した方が楽になるから、案内するぜ?」
ロナールが提案してくれた。
そういえば、街道は登り下りが結構あったけど
ロナールのアジト通過してる時の方が、登り下りが
少なくて楽だったな?
山の脇を抜けて行く感じになるのかな?
「結構深い森林で方向感覚無くすからな。
通る奴はまずいねぇけど、慣れるとこっちの方が
全然楽なんだ。」
カイダールから1時間も歩かずにアジトの村に着いた。
前に早朝、アジトからカイダールまで送って
もらったから2回目の筈なんだけど、全然分からない。
「おや!ロナール。もう戻ってきたのかい?
あんたもしかして、もうヤムちゃんに振られて
帰ってきたの?」
オリビアさんの開口一番の爆弾落とし。
「ば!ばっか!オリビア!」
慌てるロナール。そりゃそうだよな。
「あら、何だ。みんな後ろに居たのかい。
よく来てくれたねー。」
オリビアさんは俺らを見て、・・・主にヤムを見て
歓迎してくれた。
ヤムは、何とも複雑な表情をしていたけど
オリビアさんには笑顔を向けた。
「ゆっくりしていってくれるのかい?」
「いや、セジアに向かう通りすがりに寄っただけだよ。
しばらくは留守にするから、アジトの事は
よろしく頼むな。オリビア。」
「こっちは任せておきな。
ちゃんとヤムちゃん捕まえて帰ってくるんだよ?」
笑って言うオリビアさん。
もう隠す気無いな。
焦り顔のロナールを見て、みんなが笑ってる。
すごく平和な時間。
そんな時だった。
「ジュン!!」
え?コッツ?!
かなり珍しいコッツの張った声に、一同が
コッツを見る。
コッツの胸にある、ラルさんから貰った石が
物凄く光っている!
「え!まさか!」
俺とコッツ、セフィルの3人が険しい表情で
顔を見合わす。
「ジュン!どうした!」
俺の緊迫している表情に、ロナールが聞いてきた。
「この石が強く光るって事は、近くに流浪の魔術師が
来てるって事なんだ。」
俺の言葉に表情が固まるロナール。
「まじか。」
周りを見回すロナール。
「そんな、気配、は無いぞ。」
確かにそんな感じしない。
石の光がどこかを指し示しても・・・いない?
いや!違う!
「コッツ!振り向いて!」
俺の言葉にコッツがハッと気付き、後ろを向く。
光が、伸びた!来た道の方向に・・・。
「・・・カイダール。カイダールにいる!」
「どういう事?ジュン!」
ヤムの問いかけを聞きながら、カイダール上空を
見上げる。晴れ渡った空の中、黒い点が幾つも
見え始めた。背中に悪寒が走る。
「時間が無いから簡潔に話す。
この石は流浪の魔術師が近くなる程、光が強くなって
光る方向でその場所を指すんだ。
光の強さからしてかなり近いはず、そして
光の伸びる方向がカイダールなんだ。」
「そんな・・・。」
ヤムとメイが青ざめる。
そうだ、あそこには孤児院も、2人と仲の良い街の人も
大勢いる。
「コッツ!首飾りをかして!あと教えて!
隕石落としって、カイダールの街全体に
落とせるもの?!」
「大きい街、だから、全体は無理、と思う。」
「なら、何ヶ所かに分けて落とすつもりか?」
俺はコッツから首飾りを受け取りながら、一瞬逡巡し
「俺は一足先に全速力でカイダールに向かう。
そのままこの石の光で、流浪の魔術師の所まで
一直線に向かう。
もし、居る場所が西の孤児院の近くで、隕石が
落とされている様なら、孤児院のみんなを助ける事を
優先する。
違う場所なら、その場で食い止めてみる!
みんなは後から来たらそのまま孤児院に向かって
避難させてあげて!
シスの町に向かえば大丈夫な筈だから!」
「分かった!」
みんなが一斉に返事をした。
「ロナールはみんなと来て、道を先導してあげて。」
「了解だ!」
「ジュン!私が森を通る道を選んだ方が、光を真っ直ぐ
行くよりも早くカイダールに着ける!
私についてきて!」
「分かった!セフィルは俺と同じ速度で走れるから
助かる!動こう!みんな!気をつけて!」
全速力でカイダールに向けて走り出す。
セフィルは精霊語を呟くと俺と並んで走り出した。
「ジュン様!気をつけて!みんなをお願い!!」
メイの声があっという間に後ろに離れていく。
とにかく急げ!
上空に見えていた黒い点がずいぶん下がっている。
もう落ちている頃かもしれない。
斜め前を走るセフィル。表情は見えないけど
気持ちが早ってるのがすごく伝わる。
セフィルの為にも、何としても止めたい。
これで第4章は終わりになります。書き溜めもほぼ無くなったので、5章を出せるのは少し先になりそうです。すみません。