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「ジュン様ー!おかえりなさーい!」
カイダールに着く少し手前。
聞き覚えのある声がかかった。軽い登り坂の1番上から
メイがこっちに手を振っている。
俺も軽く手を振り返した。
まだちょっと距離のある場所から俺が
「こんな街外れまでどうしたの?」
「そろそろジュン様達が戻る頃かなって思って
薬草詰みながら待ってました。」
「わざわざお迎えに来てくれたんだ。
ありがとう、メイ。」
メイラールは嬉しそうに華やかな笑顔を見せた。
メイと合流してカイダールの街中に向かって歩き出す。
「ジュン様、シスの町はどうでしたか?」
「うん。凄く綺麗な町だったよ。
やるべき事も全部終えた。」
メイは言葉を選ぶ様に
「パシム様の事、大丈夫でしたか?」
ジュンの表情を伺う様に聞いた。
「うん、みんな一緒に居てくれてね。心強かったよ。」
「そうでしたか。良かったです。」
みんな、ジュン様の支えになれたんだ。
「やっぱり、私も一緒に行きたかったな・・・。」
頭で思った事が、ポツリと言葉に出る。
「ん?何か言った?」
「あ!いえ!何でもないです。」
先頭をジュンとメイラールが歩き、すぐ後ろにコッツ。
コッツはメイラールの肩をトントンと叩く。
「どうしたの?コッツ。」
ちょっと自慢げに首飾りを見せた。
「え、綺麗な首飾り!少し光ってる。
どうしたの?これ。シスで買ったの?」
「・・・ジュンに・・・掛けて・・・貰った。」
ムフンと、嬉しそうなコッツ。
「え?!そうなんですか?ジュン様!」
「え?うん、まぁ。」
「コッツずるい!私もジュン様からの首飾りが
ほしいー!
ジュン様!あとで一緒にお買い物しましょう?」
コッツにプレゼントってつもりでは
なかったんだけどなぁ。でも、喜んでくれてる
みたいだし・・・まぁ用途が終わればあげても
構わないのかな?
賑やかにしている3人の後ろから、セフィルとパシムが
並んで歩く。パシムが
「しっかし、メイラールさんの綺麗さには
びっくりだよなー。
最初はフードかぶってたから分からなかったけどよ?
孤児院で初めて見た時はびっくりしたぜ。」
「ふーん、パシムさんもメイの事が気になるの?
ヤムの事好きって言ってたのに。」
フードの中から覗く様にパシムの顔を見るセフィル。
「へ?いや違う違う!俺はヤムさん一筋だって。」
「本当かなー?人間の男性って綺麗な女の子が
好きなんでしょ?」
「ま、大概の男はな?
でも俺にとってはヤムさんが1番美人だがな。」
ニヤけた顔でロナールが言う。
そっか。・・・ジュンもやっぱり、メイみたいな
かわいくて素直な子が好きなのかな。
頭によぎった言葉で、胸の奥がチクリと痛んだ。
ジュンとメイ、楽しそうに話す2人を
眺めてるセフィルを見て
「セフィルさんはいいのかい?」
「え?何が?」
「ここで、俺と話しててさ。」
ロナールの言葉に、あ、と思うセフィル。
改めてジュンを見る。ジュンの笑顔の向く先を見る。
「ちょっと、前で話してくる。」
「おお、頑張りな。」
ジュンよ、モテる男ってのは大変なもんなんだなぁ。
ロナールは2人に割って入ったセフィルを
笑って眺める。
今のはこの前の盗み聞きの分な、とセフィルを軽く
後押しした。