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次の日。中継地を出て歩き始める。
しばらく談笑しながら歩いていたのだけど
他の旅人達が見えなくなってから、ロナールが
足を止めた。
「一応、確認しておきたい事があんだけどよ?」
と切り出し、みんなが足を止めてロナールを見る。
「周りはちゃんと誰もいねぇ事は確認してっからな。
それでも答えられたら、でいいや。
昨日の話から察するに、セフィルさんは
エルフかハーフエルフって事でいいのか?」
そうだな。ロナールはまだ知らないんだもんな。
俺はセフィルを見た。セフィルもこっちを見て
ニコッと笑い、フードを外した。
「うん、でもちょっと違うな。
私はハイ・エルフなんだ。」
「うお!マジか!
エルフには2回会った事あっから、さして
驚かねーつもりだったけど、流石にハイ・エルフは
初めてだ!」
ハイ・エルフ。俺の元の世界の知識だとエルフよりも
少なくて珍しい、くらいしか覚えて無いなぁ。
もう少しファンタジー物の小説とかちゃんと
読んでおけば良かったなぁ。
ロナールは詳しそうだし、後で聞いてみよ。
「ありがとな!話してくれて。」
「もうロナールさんもパーティの一員だからね。昨日は
私の事情も聞いてもらっちゃってるし?」
悪戯っぽくセフィルが笑う。
「それは本当に悪かったってー。」
申し訳無さそうに頭を掻くロナール。
「ふふ、まぁ何よりもジュンがこれだけ信頼してる人
だからね。何も心配はしてないよ。」
ロナールがこっち向いてニヤッと笑う。
「だとさ、ジュン。」
俺もニヤッと笑って
「良かったな?ロナール。俺への信頼作っておいて。」
「このやろ。」
「2人でニヤニヤ見つめ合うの、気持ち悪いよ?」
セフィルにジト目で指摘された。気持ち悪いって・・・
「・・・うん。」
「コッツまで?」
気を付けよ。
「・・・コホン。
ちょっと真面目な話に戻すけど、俺からも1つ
セフィルに聞いておかないといけない事があるんだ?」
俺の言葉にセフィルは、うんと頷きこっちを見る。
「セフィルのお父さん、流浪の魔術師と対峙した時
セフィルはどうしたい。」
俺は真剣にセフィルを見る。
今すぐでは無いにせよ、いづれは探して会おうと
思ってる相手。
かなり危険な相手である事も間違い無い。
1つの判断の遅さが危険に陥る可能性も高い。
だから、セフィルの考えを先に知っておかないと。
セフィルは俺をジッと見て
「一度だけ、声をかけさせて。」
少し悲しそうに微笑んだ。
「分かってるんだ、もうきっと言葉が届かないだろう
なって事も。でも、それでも一度だけでいいから
声をかけさせてほしい。
シスは、お父様とお母様が初めて会った場所なんだって
聞いてた。あの場所に人知れず何度も来ている。
もし、お父様だった頃の想いも残ってるのかなって
思ったら・・・。」
「うん、分かった。俺もお父さんにセフィルのその想い
届いてほしい。届くといいな。」
「うん。ありがとう。ジュン。」
寂しそうに笑うセフィルの頭を、優しく撫ぜた。
「あ、ごめん。つい。嫌だった?」
セフィルはニヤニヤしながら
「私がジュンにされて嫌な事なんて1つも無いよ。」
と、また悪戯っぽく笑った。