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同日、朝。

夜通しで馬と人を乗り継ぎ、ここはセジア。

その白く背の高い塔に1頭の速馬が走り込んで行った。

「はぁ・・・。」

深くため息を吐いたのは、セス=エファス司祭。

速馬で届いた速報に、思わずため息を吐いた。

「速馬での報告、ご苦労様でした。

宿舎で休んでいって下さい。」

話を終えた修道士は、セスに一礼をし部屋を出る。

それを見送り

「やっぱり、ジュン殿は苦労を抱える星の元なの

でしょうね。しかし・・・

まさか、カイダールの有力商人の問題を解決とは。

しかもミノタウロスをお一人で討伐・・・。」

セスは少し頭を抱える。

前回の報告からシンシア様は事ある毎に、ジュン殿の

元に行きたいとおっしゃる。

以前の約束があるので、それを盾に何とか

やり過ごしては来てますが・・・。

ジュン殿が危ない事に首を突っ込まれ過ぎますと

シンシア様が何を言い出すか・・・。

まあ、シンシア様にとってはそれよりも、ジュン殿を

取られてしまうかもという危機感の方が

強いのでしょうけどね。

正直、私としてはそこは、お2人がご婚姻に至れば

他の女性の方達とはまぁ、重婚という考えもありますし

本人達が同意さえしてくれれば、どうにかなるかと。

ただ、その過程での1番の障害はメイラールという

娘よりも・・・。

セスは立ち上がり、自室を出て大聖堂に向かって

歩き出す。

今回の出来事の大きさからすると、そろそろ

ラスティアの皇女様の目にも留まりかねない。

出来る事ならば、戻り次第すぐにでもシンシア様との

ご婚姻を進めたいのですが、ジュン殿の考えも含めて

果たして間に合うのか・・・。

「はぁ・・・。」

また1つ大きくため息を吐くセス。

まさか、たかが3〜4ヶ月と思って送り出した事が

色々な出来事を招いて、これ程長く感じられるとは。

「ジュン殿、これ以上の大きな出来事への関わりは

どうかなさらずに、速やかに戻って来て下さい。」

セスは大聖堂にある戦女神アルテアの像に

手を合わせて祈った。


「メイはさ?ジュンに伝えないの?」

カイダールでジュン達の帰りを待つ間。

買い物から帰り、薬草を擦るメイを眺めながら

ヤムは聞いた。メイの薬草を擦る手が止まる。

「伝えるって、告白ってこと?」

「そうだよ。何も無いまま

カイダールに着いちゃったけどいいの?

ジュンが用事を終えたらもう帰路だよ?」

「うん、分かってるんだけどね・・・。

元々、ジュン様に私の気持ちを伝えられるのは

帰り道かな?っては思ってたんだ。

もっと私を知ってほしくて、ジュン様との時間を

いっぱい作ってから伝えたいって思ってたから。

でも、ジュン様の事情を知って、ご自分の帰る方法も

分からないのに、ジュン様は私がお家に帰る為に

危ない思いまでしてくれてたんだよ・・・。

だから、私も私の気持ちよりも先に、ジュン様が

帰る方法を探してあげたいんだ。」

ヤムは軽くため息を吐き

「ジュンを帰してあげたい。

でも、離れ離れになる・・・離れ離れになるくらいなら

伝えない方がいい、そう思ったの?」

「違うよ?ちゃんと大好きって伝えたいもん。

ずっとジュン様の傍で、ジュン様を支えていたいって

伝えたいから。」

「だけど、ジュンが元の世界に帰ってしまったら

きっともう会えないよ?」

?、メイラールは小首を傾げる。

「どうして?そんな事ないよ?

私も一緒にジュン様の世界に行けば良いんだもん。」

「・・・は?」

ヤムにとっては突拍子もない言葉が返ってきた。

頭が追いつかずに、呆然とする。

「私は一緒にジュン様について行くよ?」

さも当たり前の様にメイラールは言った。

「・・・、いや、いやいやいや!

ちょっと待ちな?

行きたいから行けるってもんでもないでしょ?」

「どうして?」

「どうしてって、え?だって違う世界だよ?

そんな簡単な話じゃない筈だよ?」

んー、と口元に人差し指をあて、思案する顔のメイ。

「でも、ジュン様はこっちに来れたんだし。

帰れる方法も見つかるんなら、私が行けないなんて事

無いと思うよ?」

え、ええー?

いや、まぁそう言われちゃうとね?

そんな気もして来なくはないけど・・・。

「じ、じゃあメイはそういう事も含めてジュンに

伝えるって事?」

「うん!そのつもり。」

そっか。メイもメイでちゃんと考えてるんだね。

それが可能かどうかはさておきとして。

鼻歌混じりに薬草を擦るメイを眺めて、この子も

強くなってるんだなぁって感じた。

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