16
小さい頃から覚えのある歩き慣れた道。
カイダールの1番の大通りから少し入った、小さな
商店がいっぱいある、いっつも賑やかなこの通り。
今は早朝で静かだけど、全然変わってない。
大好きだったなぁ。
あの頃は、ここを歩いてたらみんな声を
掛けてくれたっけ。
「メイ!お使いかい?偉いな!」
「メイラール!今日は何を買いに来たんだい?」
「メイ!ちょうど美味しいお肉焼けたから
1つ食べていきな?」
みんなの笑顔が好きだったなぁ。
朝もまだ早い時間。
お店もまだ開いていない。4人は朝靄のかかる通りを
歩いていた。
メイラールは、カイダールの街の中で
フードを外して。
「ジュン様!
ここのお店のお肉、とっても美味しいんですよ!
あとで食べに来ましょう?」
「ジュン様!
ここのおじさん、とっても良い人なんです!
買い物に来ると色んな物をオマケしてくれました!」
「ジュン様!」
子供の様にはしゃぐメイ。
嬉しそうに通りを歩く。満面の笑みで。
「メイ、まだ朝早いんだから、声大きいと
迷惑になるよ。」
軽く嗜むヤム。その表情も笑顔。
迷いの無い歩みで、通りから曲がり
住宅街を進むメイ。
「また、こうしてこの道を歩ける日が来るなんて
思いもしなかったよ。」
ジュンの前を歩くヤムが、ジュンに話しかけてきた。
「だけど昨日の夜、話聞いた時は肝を冷やしたよ?
ミノタウロスがいた事にも驚いたけど、まさか
1人で立ち向かうなんて。」
俺の隣のセフィルが少し怒った様に言う。
もう何回も言われてる。
ヤムの隣を歩くコッツもこっちを向いて何度も頷く。
雷撃の話も出たから。
「いや、だから俺1人じゃないってば。
ロジーさんの弓も、サムリスさんの魔法もあったし
何よりもロナールの技術があったから
みんな無事に帰れたんだよ。」
昨日は1日ロナール達の村で休ませてもらった。
メイに薬草での治療を受けて、俺の傷も随分と回復し
夜には宴会を開いてもらい、かなり遅くまで
みんな盛り上がってた。
とにかく熱く喋ってたのがサムリスさん!
ミノタウロスと1人で対峙、相手の魔術師に
雷撃を喰らっても立ち向かうジュンさん!
最後は、ジュンさんの必殺技でミノタウロスは
目の前で力尽きて崩れ落ちました!
なんてすごく持ち上げられて話されてた。
まるで、俺1人が戦ってる様に聴こえるから
都度ロジーさんとサムリスさん、そしてロナールの
行動を俺が話す。
これを何度も繰り返した。
お陰でお酒を飲んでても、全然酔いが回らなかった。
「そうなんだろうけど、ジュンは無茶をするからね。
こっちとしては、自分の身も案じてほしいのさ。」
ヤムが笑って言う。分かったよぉ・・・。
「ジュン様!聞いてますか!」
朝の静かな住宅街にメイの声が響き
俺とヤムとセフィルで
シッ!
と人差し指を立てた。