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「うちには音立てずに動ける前衛が居なくて
この考えは却下してたんだ。」
なるほどね。これはよく調べてあるな。
部屋の中にはロナールと弓使いの人、それに
魔術師の人、戦士2人と俺。
テーブルの周りを囲う様に立っている。
テーブルの上には屋敷の見取り図があり、ロナールが
代理人をつけた時に敷地内に潜り込んだらしい。
かなり細かく書き込まれている。
「屋敷の敷地内と周りは、見れる範囲で見てきたが
警備が常にあちこちにいる。中に何かあると踏んで
間違い無い。進入路も見当付けてきた。
兄さんから見てどうだろうか。」
「ドイルの自分の屋敷って事だよね?わざわざ
自分の屋敷で、捕まえた女性たちを閉じ込めて
おくなんて、そんな危ない行動するかな。」
「それは俺も最初に勘ぐったさー。んで、ドイルが
所有している他の建物もあたった。だけど
ここ以上に警備が厳重な所は無かったよ。
ま、警備に余程の自信あんだろうな。それに
役人との繋がりの強さが、より自信を持たせてる
感じだ。かえって、自分の目の届かない所の方が
不安なのかもしんねぇな。」
「自分の屋敷が強固ならそうかもしれないね。
この警備の配置の確認は一度だけ?」
ロナールはニヤッと笑い
「いんや、つけて行った日から毎日だ。」
「屋敷に出入りする人も確認した?
奴隷商って事は、買付けに来る人がいるんだよな。」
「ああ、抜かりない。今も監視を付けている。
向こうが脅しをかけてきてから、ずっと監視
しているが、買付けに来た様な馬車なんかは
一度も確認されてない。
何か動きがあれば、すぐに分かるはずだ。」
「何を見つければドイルを吊し上げられる?」
「まずは、攫われた本人達の発見はもちろんだが
売買を証明するような書類でも出てくれば
なお良しだな。
後はドイルと繋がってない役人が必要。それには
ドイルと対峙している商人が抱えている役人が
適任だな。その役人に書類や状況を引き継げば
連中が自ずと奴を引きずり落とすさ。
兄さんが受けてくれれば、その役人には
話を通しておく。」
俺が考えられそうな事は、全部確認済み、か。
突入は4人と言っていた。少数だけど、その方が
動きが取りやすいからだ。
「なるほど。よく分かった。
あんたの技量も理解出来たよ。大したもんだな。」
ニヤッと笑うロナール。
「じゃあ」
「ああ、手伝わせてもらうよ。
ロナールと呼んで良いかな?」
手を差し出す。ロナールは俺の手を握り
「そうこなくちゃな。
俺もジュンと呼ばせてもらうぜ。」
強く握手を交わした。
コンコン。
執事風の男が、部屋の扉をノックした。
「ドイル様、失礼致します。」
「何だ、こんな時に。」
執事風の男が部屋に入ると、ドイルと呼ばれる男の
居る部屋には、数人が寝れる大きな寝台の上で
数人の女性達が裸で、身体の至る所にアザを作り
泣いていた。
「お楽しみの所、申し訳ありません。
ロナールの所から情報が入りましたのでご報告を。」
「・・・ふん。」
ドイルは寝台から降り、ローブを羽織る。
そのまま豪華な装飾の椅子に座り
「それで」
「はい。報告されていたロナールの行動が
変わったとの事です。
どうも、1人仲間に引き入れた様で、当初
報告されていた攫った女共を使って潜入する、という
方法をやめて、4人で潜入してくる様です。」
「ほぉ、たった1人入れただけでか。
何者なんだ、そいつは。」
「セジア闘士、不殺との事です。」
「・・・なるほどな。噂には聞いとる。
近年最強闘士、か。
どこでそんな繋がりを作ったのか。」
「如何されますか。」
ドイルは口元を歪ませ
「丁度良い。中々アレが出せる時が無いからな。
早速、客も呼んでセジア闘士との闘いを観てみよう
ではないか。アレの力がどれほどの物か、測るには
丁度良い相手になろう。」
「では、このまま。」
「ああ、泳がせておけ。」
「かしこまりました。もう一つご報告が。」
立ち上がろうとしていたドイルは、少しイラつきを
見せながら
「何だ。」
「は。
どうやら、不殺の連れにメイラールがいる様です。」
ドイルは動きを止め、執事風の男を睨む。
「連中のアジトか。」
「その様です。」
ドイルはニヤリと顔を歪ませ、再び椅子に座り直し
深くもたれかかる。
「では、ロナール達で楽しんだ後迎えに行くか。」
「かしこまりました。兵達を手配しておきます。
お楽しみの所、失礼致しました。」
執事風の男は、部屋から退出する。
「くっく、やっと戻ったか。散々待たせおって。
あの女は付いた値が高かったからな。
充分楽しんだ後に売り捌くか。
アレの値の足しにはなるだろう。」
ドイルは顔を歪ませ笑いながら、椅子から
立ち上がり、寝台に向かった。