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リナルドを出て、しばらく徒歩の旅が続く。
順調に街を1つ、2つと過ぎ、2週間が経過した。
何度かゴブリンやオオカミみたいなのの
襲撃もあったけど、無事撃退。
驚いたのはセフィルの強さ!
レイピアの技術もだけど、精霊術師としての強さに
驚いた!エルフってすごいなぁ。
途中の街を全て過ぎ、いよいよカイダールが目の前。
山道に入ると、みんな少し疲れが出てきたかな。
「ちょっと休憩しようか。山道は疲れるでしょ。」
平地の頃はよくしゃべっていたメイもセフィルも
言葉数が減っている。
俺の言葉に少し安堵の顔を見せた。
2人とも、周りに誰も居ない時間が続いてるので
フードは外している。
山道の少し開けたスペースの端に各々座り込み
水や軽食を取り始めた。
「中継地まであとどのくらい?」
ヤムに聞くと、ヤムは地図を広げて
「今この辺だから、あと四半日くらいだね。」
「そっか良かった。日が落ちる前には着けそうだ。
少しゆっくり時間取って休もうか。」
「賛成ー。」
メイの声に全員が笑顔を見せる。
ふと、ふわりと俺の周りに風が巻いた。
キリキリ
ん?何か今小さく音が聞こえた!
「メイ!セフィル!フード被って!誰かいる!」
俺の声に、慌ててフードを被る2人。
音のした方向を警戒すると
カァーン!
勢いよく矢が俺に向けて飛んできた!警戒出来た分
はっきり見える。
カィン!
ガントレットで弾く。
「何で気付けたんだよ。どんな耳してやがる。」
矢の飛んできた方向から、10人程がゾロゾロ
出てきた。各々剣や槍を持っているが、弓を
持ってる奴が居ない。
まだ隠れてる奴もいるってことだ。
「よう、兄さん。後ろの女の子達を置いて消えれば
殺さず見逃してやるぞ?」
多分リーダーなのだろう男が、ニヤつきながら
話し出した。
俺はその男を真っ直ぐ見ながら
「ヤム、さっきの矢。飛んできたら弾ける?」
「来る事が分かれば問題無いよ。」
「じゃあメイを狙われない様に守ってあげて。
セフィルはどう?」
「私は矢は平気。シルフに守ってもらえるから。」
「おいおい!
何こっち無視してコソコソしゃべってんだよ!
俺の温情で命だきゃ許してやろうとしてんだろが。」
「別にお前に許してもらう必要なんて
これっぽっちも無いよ。」
「・・・テメェ死んだぞ。」
リーダーの男が手で何か合図した。岩陰の1箇所が
パッと光ると、俺に向けて光が飛んできた!
回避出来ない!ガントレットを前に受け止める!
バチィ!!
「ジュン様!」
「はっはー!!生意気な口きいてるからだ!
矢だけと思ったら大間違いなんだよ!」
ん?この前のシャーマン程の痛みすらない。
ガントレットで受け止めようと上げた左手の指輪が
ぼんやりと光っているのが目に映った。
これ、指輪の効力か!すげー!
今度ラルさんに会ったらお礼しないと。
「ただまー、その1発で許してやっから、今後は
デケェ口叩かねぇで」
何事も無かったように腕を下ろし男を見る。
ニヤついた男の顔がひきつっていく。
「無傷、だと!そんなバカな!」
ゆっくり歩き出すと、4人が前に立ち塞がり
剣を構える。
一気に全速まで速度を上げ、手前2人に向かう。
「はや」
ゴシャ!
言葉を出す前に、右の相手に向かって飛び、相手の
顔面に膝を打ち込む。着地に合わせ左の相手の顔面に
向けて回し蹴り。
グシャ!
とりあえず2人、倒れて身動き取らなくなった。
後の2人が後ずさる。
「何してんだ、テメーら!いっぺんにかかれ!」
自分は後ろに下がりながら、声をかけるリーダー。
逃がさないよ?
また全速で前に出ると、目の前の男が上から
斬りつけてきた。速度を落とさず右に躱し通過
その後ろの2人の男は、こんなすぐに自分達の方に
来ると思ってなかったのか、慌てて俺に向けて
剣を突く。
2人の間をスライディングして通過、素早く
立ち上がり正面のリーダーに向けて走る。
「うわー!!撃て撃て!」
カァーンと弓の放たれる音。鋭く飛んでくる矢。
弾こうとガントレットを構えた瞬間、ふわりと
矢が方向を変えた!俺を通過し後ろの山肌に刺さる。
何だか分からないけどいいや!
そのまま逃げるリーダーの足に向けて
ダガーを投げる、刺されー!
太もも裏にズドッと刺さった!
「ぐぁ!いてー!」
やった!刺さった!もんどり打って倒れるリーダー。
その首筋に剣を押し当てる。
「お、お前ら!何してる!そっちの女どもを
人質に取れ!」
声をかけた男の集団達は、霧に巻かれてバタバタと
眠りについていた。流石コッツ。
「ま、待て、待ってくれ!
殺さなくたっていいだろう!」
「俺を殺そうとしたのにか?」
「いやいや!本当に殺す気は無かったんだって!
な!許してくれ!」
そう言いながら岩陰をチラリと見るのが見えた。
全く。
「俺はセジアの闘士だからさ、人を殺す事には
慣れてるんだよ。
何か企んでるみたいだから、実行される前に
首落とす。」
見た目だと、セジア闘士って言葉に説得力無い気が
して、レザーアーマーの内側からネックレスを
出して見せた。
「ひっ!セジア闘士?!わか、わかった!
降参だ!もう何もしない!」
「なら岩陰の人もこっちに出てきて。」
「おい!お前ら!出てこい!」
岩陰から2人、手を挙げてこっちに出てきた。
弓を持つ男、ローブを着る男。
「さて。お前がリーダーみたいだから、このまま
一緒に街まで行って街の警備兵に引き渡すよ。」
「頼む待ってくれ。
俺ら、雇われてやってただけなんだよ。」
「雇われて?誰に?」
「いや、それは・・・。」
「ふーん。じゃあもう用事無いし、一緒に
カイダールまで行こうか。」
「分かった!言う、言うから!
言ったら見逃してくれるか?」
「いや、そういう訳にいかないだろ、流石に。
人を殺して攫ってなんてしてる連中。」
「殺しなんてやってねー!信じてくれって!
さっきのだって脅すつもりだけだったんだよ!」
脅しだけってのは、分かってるんだよね。
矢で狙ったのも、俺の身体から少しズラしてた。
外れただけかとも思ったけど、あの弓の人は強そう。
多分狙ってギリギリ掠るくらいで外した。
俺に対しての殺気も無かったし。
さて、どうしたもんかな。
今日は2話更新します