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ここは、大河の街の生き別れ亭。

セジア城下町では、人気の酒場兼冒険者の宿である。

普段から賑わう宿だが、今日は一際賑わいを

見せていた。

テーブルが足りず、立っている客で溢れかえる店内。

その大勢の客の中心に、ジュンとランガース、それに

ゴルザイの3人が席についていた。

少し前の事。

ジュンが城門を出ると、大勢の人が待ち構え

歓声と拍手で迎えてくれた。

その大勢の中から、ランガースとゴルザイの2人が

現れ、ジュンに話しかけてきた。周りの大勢は

興味本位で集まる。

2人は、ジュンから今日の宿を探す話を聞き

それなら良い所があると案内されて今に至る。

人壁の向こうから、どいとくれ!と

周りに声をかけながら、背が高めのスタイルの良い

女主人が人を掻き分け

「ちょっとそこの3人!悪いんだけど

お店の外に祭り用のテーブル用意したから、そっちに

移ってくれる?

あんたらがそこに居ると、店の中が人でいっぱいで

従業員が動けないんだよ。」

店の主人の言葉に周りを見渡す。従業員の人達が

カウンターの内側から出られないで困っていた。

「主人、これは悪いことをした。すぐに移ろう。」

「ぐはは!こんなに人が集まるとはな。

大盛況じゃないか!」

「ご迷惑おかけしてしまってすみません!」

「何言ってんだい。あんたらは客で、他の客まで

こんなに呼んでくれてんだ。有難い事であって

迷惑なんて事はないよ。」

女主人が笑って返してくれた。

「あんたは今日、泊まりもだったね。

これは部屋の鍵。2階の1番奥の部屋だ。

自由に使いな。」

「ありがとうございます!」

「今、注文聞きに誰か寄越すから。

ちょっと外行って待ってな。」

そう言って女主人は、再び人混みを掻き分け

戻って行った。

ジュン達が外に移ると、ゾロゾロと大勢が

ついていき、店内はガランと人が居なくなった。

その店内の入り口から、ジュン達の様子を覗く様に

伺うメイラール。店長がメイラールを見つけ

「何やってんだい。早く注文聞いといで!」

「ふえ!私ですか?」

「別に他の誰でも良いけど、早く動きな!

お客さんみんな待ってるよ!」

「は、はい!」

他の子達にジュン様達の所に行ってもら・・・

みんな違う所に聞きに行っちゃった!どうしてー?

誰か他の人をと後ろを見ると、目を合わせたヤムが

顎を動かして早く行けと無言で言ってる。

う〜・・・よし!

意を決して、メイラールはジュン達のテーブルに

向かった。

「ご、ごごご、ご注文お決まりですか?」

「おー待ってたぞ!とりあえずラジ酒3つだ!

あとは適当に、腹に溜まる飯をどんどん

持ってきてくれ!」

ゴルザイさんが注文してくれた、けど

ちょっと待って!

「え、ラジ酒?ってもしかしてお酒ってことだよね?

俺、飲んだこと無いよ?未成年だし。」

「ん?その歳まで飲んだこと無いのかジュン。」

ランガースさんが不思議そうに見る。

「それが俺のいた国では当たり前だったんです。」

「そうか。まぁでもここはセジアだ。

試しに飲んでみるのも良いのではないか?

今日はジュンの祝いだからな。」

そう言われると断り辛い。

「分かりました。じゃあ頂きます。」

「そうだぞ、ジュン!男が酒飲めなくてどうする!」

ゴルザイさんはその体格じゃ、浴びるほど

飲めそうだよね。ジュンは苦笑いした。

メイラールはジッとジュンを見つめる。

ジュン様、お酒飲んだこと無いんだ?

「そうしたら、始めはラジ酒じゃなく

スモ酒にしてみますか?

果実味が強いから飲みやすいですよ?」

「あ!ありがとうございます。そしたらそれで

お願いします。」

ジュンはメイラールを真っ直ぐ見る。メイラールは

それだけで顔が真っ赤になった。

こんな手を伸ばせば届く距離にジュン様がいる!

私のこと見てくれてる!

「あ、わ、わか、分かりました!お待ち下さーい!」

逃げる様に慌しく戻っていった。

え?何もしてないよな?俺。

ん?あれ?ちょっと待て。今の声、それに

よくよく思い出したら今の顔。

「ジュンは、セジア騎士団には入ろうと

考えなかったのか?ジュンなら間違いなく

大隊長位に就けると思うが。」

ランガースさんが話し出した。

「そうだ!何でだ!わしらは入団したぞ。

ジュンが入ってきたら、再戦しようと楽しみに

してたんだぞ!」

「あ、うん。ちょっとやらないといけない事が

あってね。

俺の友達の遺品を届けに、旅に出るつもりだから。」

セスさんから、異世界の話はなるべくしない方が

いいって聞いてたから、出さないでおこう。

「そうなのか。

なるほど。確かに、あれだけお前の心を乱す程の

友人だからな。仕方ないか。」

「え!見てたのですか?」

「ぐはは!見てたぞ!ジュンが全然動けん所もな!」

みっともない所を見せたなぁ。

「ふっ、それだけ想いが強かった友人だと

いう事だな。」

ランガースさん、フォローしてくれてる。

良い人だー。

「お待たせしました!」

メイラールとヤムがお酒と料理を運んできた。

「ありがとうございます。」

ヤムが、メイラールに話しかけろと目配せする。

が、メイラールは小さく何度も首を横に振る。

無理〜。

ジュンがメイラールに、闘技場の事で声をかけようと

すると、ランガースが先に話し出した。

「それで、いつ出るんだ?」

「え?あ、うん。7日後に出ようと思ってます。」

「何だ、それしかおらんのか!

再戦どころではないな。」

え!ジュン様7日で出るって、街を?

メイラールはヤムと目を合わせた。

「それで?どこに向かうんだ?」

「西にあるカイダールって国。届けに行くのは

その近くにあるシスって町なんだ。」

カイダール・・・

え?ジュン様、カイダールに行くの?

メイラールの表情が曇る。

「まぁとりあえず、ジュンの到達を祝おう。」

ランガースが木ジョッキを持ち上げる。

俺とゴルザイさんも木ジョッキを上げ、乾杯した。

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