第1章 1
セジア城内大広間。
大勢の騎士が周りにいる中、俺が1人ポツンと
大広間の真ん中に立っている。
大広間に入る前、3人からの使用人の方達に
揉みくちゃにされる様に身なりを整えてられた。
闘技場内と違って、めちゃくちゃ立派な屋内。
確かに、いつもの格好じゃ場違い過ぎるなぁ。
長く幅広で赤い絨毯が敷かれ、そこかしこの壁には
綺麗な刺繍が施された内装。
高い天井には、馬に乗る戦士の荘厳な絵が
描かれてる。
左右に揃いの鎧を着た騎士が囲み、俺の正面に
凄く立派な椅子が2脚。
玉座かなきっと。そこにはものすごい風格のある人が
座ってる。
国王様、だよな。中々な迫力だなぁ・・・
とんでもなく強そう。
そんな中で唯一、ボッチと思わないで済むのが
その隣にシアが座っていてくれたから。
俺を笑顔で見てくれている。たまらない安心感。
改めて見ると、めちゃくちゃ雰囲気持ってる。
やっぱり王女なんだなぁ。
「これより、到達式の叙勲の儀を始める。
到達者オキタ ジュン。前へ。」
「はい。」
こんな感じの、卒業式みたいのを無事終えて
初めて城の外に出た。
まぁ闘技場も外っちゃ外だけど。
出たと言っても、ここはまだ敷地内かな。
綺麗に手入れされた庭が広がり、少し先に
敷地を囲う塀、目の前に伸びる道の先に門が見える。
右を見ると建物も幾つか見えるけど、王城内の
施設だろうな。
その向こうに白くて背の高い塔も見える。
左は闘技場っぽい。高い壁が緩やかに
カーブしていってる。
それにしてもここから先、違う意味で
生きていけるのかな?俺。
歩きながら考える。ここはある意味、衣食住が
約束されてたからなぁ、命懸けだけど。
勝ち抜けて、手に残るのはどのくらいの金額か
ピンと来ない報奨金と、セジアの闘士の証の
ネックレス。
銀色で、1つ付いたプレートには国章が刻まれてる。
うん、意外と格好いい。
それと、剣。
ちゃんと細身のロングソードで鞘入り。
ずっと抜身の武器だったから、何だか
自分の物って感じで嬉しい。
城内だから、抜くのは控えてるけど
抜いてみるのが楽しみ!
それと、ガントレット。
いつも使ってたのと全然違って、凄く綺麗。
鉄?じゃないのかな?いつもより白くて
軽い気がする。ステンレス?なんてこっちには
無いよな?きっと。
「ジュン!」
後ろから声がかかった。シアの声。
振り向くと、ドレス姿のシアがこっちに走ってくる。
俺は焦って
「シア!走らなくて良いよ!転ぶよ!」
と声をかけると、立ち止まりキョトンとした顔から
あっはっはと大笑いした。
「大丈夫よ、慣れてるんだから。」
楽しそうに笑いながら、クルリと1回転して
ドレスを舞わせるシア。それでも心配なので
俺が戻った。
「ジュン。さっきの到達式、格好良かったよ。」
シアが嬉しそうな顔をして、俺を見上げる。
「いやー、俺としては何ていうか、場違い感が
半端無くて居た堪れなかったけどね。」
苦笑いした。シアも笑う。
「この後はどうするの?」
「うん。セスさんとも話したんだけど
7日程はここの街?にいるつもり。
色々準備したり、この世界に慣れてから
動き出した方がいいって。どういう事したら
良いかも聞いた。でもまぁ、とりあえず今日は
泊まる所を探そうかなって思ってる。」
「そっか、7日か・・・。
それから、しばらく会えなくなるんだね。
寂しいな・・・。」
俯くシアの頭をそっと撫ぜた。
「セスさんに聞いたよ。俺がカイダールから
帰ってきたら一緒に探す旅に出てくれるって。
すごく嬉しい。ありがとう。」
「うん。」
シアは微笑み、上目遣いで俺を見て、そっと
抱きついてきた。
「えっと、シア?」
「なーに?」
「周りの人が、すごく見ているんだけど・・・。」
シンシアはハッとして離れ、周りを見る。
通りがかりの大臣やら衛兵、使用人達が
みんな足を止めて、驚いた表情でこっちを見ている。
「あ、じ、じゃあジュン!またね!」
シアが顔を真っ赤にして、走って戻っていった。
かわいいなぁ。
・・・周りの注目がこっちに集まってる。
俺もそそくさと城門に向かった。