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取り敢えず街の散策してみようかな。
ヤムに鍵を渡して、自分の部屋に入り準備する。
装備付けてると冒険者って思われるよな。
装備を外して部屋を出た。階段を下に降りてると
「いーから、座っていきなよーおねーさん。」
・・・何か、この如何にもな台詞って。
声の先に目をやると、案の定、お店の女の子が
絡まれてる。・・・装備付けた如何にもな男3人に。
はぁーっと深いため息が出た。
愛想笑いで戻ろうとした女の子。1人が立ち上がり
背後から手を掴んだ。
「やめて下さい!」
毅然と女の子は言うが、お構い無し。
・・・見ちゃった以上、助けないとだなぁ。
近寄って手を掴んでいる男の手首に、強めに
手刀を落とす。
ビシッ!
「いってー!」
うん、痛いよねー。シアと鍛えた手刀なんで。
「いってーな!てめえ!何しやがんだ!」
手をさすりながら凄んできた。
「いや、女の子嫌がってるからさ、やめてあげて?」
笑顔で俺が答えると
「ふーん。兄さん、ずいぶんと勇ましいが
女の前だからって見栄張ると痛い目見んぞ?」
椅子に座ってる男の1人が、話しかけてきた。
雰囲気的にこの人がリーダーかな。他の2人よりは
強そう。俺は女の子に目線を移し、顔を動かして
奥に行きなと合図した。
「おっと!こっちの用事はまだ済んじゃ」
手刀を落とした男が、また女の子に手を伸ばそうと
したその手首を掴む。同時に
ガタン!
「こっちが優しく言ってやってるからって
つけあがんじゃねーぞ!」
リーダーっぽい男が怒鳴って勢いよく立ち上がった。
何なの?本当に。
冒険者ってみんなこんなに柄が悪いの?
俺の中のイメージ総崩れだよ!
少しイラッとして
「こっちも、優しくしているうちに引いて下さい。」
つい言ってしまった。
リーダーが額に青筋立てて、右拳で殴ってきた。
出口の方向はこっちか。
拳の方向を右手で払って変えて、足を引っ掛けて
よろめかせる。そのまま背中を軽く押して
出口に向かって転がし出した。
一緒に俺も歩いて出る。
「店の中で暴れるなよ、全く。迷惑になるのも
分からないのかなぁ、いい大人が。」
完全に真っ赤になるリーダー。剣を抜いた。
ザワッと周りの一般の人達が、不安そうに迷惑そうに
距離を取って、こっちの様子を伺ってる。
「兄貴!流石にそれは!」
「うるせー!!黙ってろ!」
怒ればすぐ剣を抜く。そりゃ怖がられるよな。
「ジュン!」
物騒な物音を聴いて降りてきたヤムが、声を
かけてくれた。
「こんなの、俺1人で大丈夫だよ。」
俺はヤムにニコッと笑う。それで余計に
キレたらしい。
「このクソガキがー!!」
とうとう切りかかってきた。でも、闘技の頃から
相手が強そうか、物凄く強そうかが分かる様に
なったけど、とても弱そうなんだよな。
上から斬り下ろそうとする剣を、持つ手首に左腕を
ぶつけて止める。こんな所で振り回されたら
周りが危ない。そのまま懐に入って、腕は伸ばさず
掌底じゃなく拳を脇腹にあて、軽い踏み込みで
すごく小さめに発勁。
ドンッ!
ごめん、発勁を小さく打つ練習にちょうどいいと
思って打ってしまった。相手は白目をむいて
その場にクタッと崩れ落ちた。
「兄貴!!」
仲間2人が、リーダーの男に駆け寄る。
おお!何今の?と、少しだけ上がる歓声。声を
出したのは見てた冒険者かな。一般の人は安堵の
ため息。仲間の人にあとよろしくと声をかけて
ヤム達の方に向かった。
「俺は街を散策してみるけど、みんなはどうする?」
「あ!私一緒に行く!」
メイの返事が真っ先に来た。
「あたしらは部屋で待ってるよ。
ジュン、メイをよろしくね。」
ヤムが意味深そうなウインク、んーごめん、意図が
読み取れなかった。ちゃんと守ってくれって事かな?
ま、いっか。
「じゃあメイ、行こうか。何か買い物とかもあれば
ついでにしてこようよ。」
「やった!」
凄く嬉しそう。
フードが外れてたから、華やかな笑顔に目が眩む。
メイのフードを被せ直し、頭を軽く撫ぜた。
あ!何かつい!フード越しだと癖か?
「ごめん!つい頭撫ぜちゃった!」
フードの中を覗き込むと、大きな目をさらに大きく
広げ、真っ赤な顔のメイ。
「気を悪くさせたらごめん。」
メイは首を軽く何度も横に振り
「ぜんぜんもっとえんりょなくなんどでもいつまでもしてください」
かたことの様な言葉で返してくれた。
きゃーーーーーーー!頭!頭!
頭撫ぜてもらっちゃった!!!どうしよーー!
ジュン様のお顔がまともに見れない!!
せっかくの2人きりのお出かけなのにー!
俯き加減に歩くメイの視界に、ジュンの手が見える。
あぁ、あの手が・・・私の頭を・・・。
はっ!思わず掴んでしまった。硬直。
「ん?どうしたの?メイ。」
「あ、あああ、あの、ふ!フード!フード越しは
まだ慣れなくて、ててっ手を繋いで良いですか?!」
「あ、そっか。ごめんね気が利かなくて。」
ジュンはメイの手を握り返した。
ジュン様と手を繋いで歩いてる。何だこれ?
夢の中?なんて幸せな夢なの?
ヤム絶対に起こさないでねー!しっかり繋がれてる
ジュンの力強い手に、メイラールはフードの中で
耳まで真っ赤にさせて隣を歩いた。