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第2章 1

第2章


馬車は広々とした草原の中、結構幅広めの道を

進んでいく。当たり前だけどアスファルトではない。

けど、意外としっかり平らな土道。

隣町のイゼまでは、途中森林はあるけど

登り下りのない平坦な道程らしい。

御者の席に、御者をするカイノさんと

2人の男の冒険者が、見張りとして左右に座り

もう1人は荷台の中で一緒に座っている。

俺たち4人は、奥の荷物に寄り掛かりながら

談話をしていた。

「そういえば、メイラールさん達はカイダールには

何の用事で行かれるのですか?」

「あ、あーそれは・・・。」

店長にあんな感じで言ってもらった手前、ジュン様と

もっと一緒にいたかったからなんて言えない。

「あの、カイダールは私の生まれ育った街なんです。

それで、しばらく会えてなかった母に会いに

行きたくて。」

「そうなんですか!じゃあメイラールさんは

カイダールに詳しい」

「あー、あのジュンさん!」

ヤムは割って入った。あまり、カイダールの話を

するのはメイが心配になる。

「はい?」

「提案ですが、これからしばらく共に旅するのに

このままの言葉遣いじゃ堅苦しいので、もっと

崩して話しませんか?」

「それ良いですね!じゃあ俺のことはジュンと

呼んで下さい。」

は!これはジュン様に呼び捨てで呼んでもらえる!

「私!私はメイって呼んでほしい!」

メイラールはジュンの目の前に、身を乗り出して

手を挙げた。

「うん、分かった。これからはメイと呼ぶね。

メイも俺の事、様付けしなくていいからね?」

きゃー!メイって呼んでくれたー!

「ヤムさんもコッツさんも呼び捨てでいいかな?」

「もちろん。」

「・・・。」

「コッツも良いって言ってるよ。」

代わりにヤムが答えてくれた。何で分かるんだ?

「みなさんは知り合って間もないのですか?」

冒険者の方に話しかけられた。

身なりからして修道士?僧侶?の女性。

さっきのことがあって、ヤムが明らかに

敵対視する目で見る。

俺は、その視線を隠すように動いて

「そうですね。知り合っては間もないですけど

俺にとっては充分、信頼に足る仲間ですよ。」

メイは闘技の頃からだからもちろんのこと、ヤムも

コッツも、良くしてもらった大河亭の人達だからね。

ジュンと呼ばれる人の言葉に、殺気立っていた

女戦士の表情が和らいだ。いいな。

「さっきはこちらのリーダーが失礼しました。」

「いえ、気にしないで下さい。」

「ジュンさんが、みなさんのパーティの

リーダーですか?」

え?いや、そもそもパーティとかではなく

「そうです!」

メイが即答した。おーい。

「良いリーダーを持って羨ましいです。

うちのリーダーは、先程も失礼な物言いを

してしまって。

貴族出身だからなのか、どうにも相手を下に

見てしまう人で・・・。」

「どうしてそんな人と一緒にいるの?」

メイが何も気にせず真っ直ぐに聞く。

少しはオブラートに包んでも良いんじゃないかな?

僧侶さんが苦笑いして

「きっかけは、駆け出しのあたしの装備を

揃えるから、メンバーにならないかって誘われて。

初めは良い人なのかなと思ってたのだけど、どんどん

彼の素を見る度に、ここのパーティにいて

良いのかなって思ってしまって。」

なるほど。

「パーティ組んでどのくらいなの?」

俺は聞いた。

「ひと月程です。」

「そっか。それで今悩んでるんだ?」

「はい。」

「でも、それならもう少しだけ様子を」

ヒヒーン!

馬の嘶く声に合わせて馬車が止まる。

何だ!荷台から顔を出すと、見張りをしていた

2人が、馬車の目の前に集まるゴブリンに向かって

走り出しているのが見えた。

周りを見回すと、10、いや、もっと多い!

草原の草むらに隠れて完全に囲まれた。

20匹近くのゴブリン。

更に、なんかデカめのゴブリンが2匹いる。

「ホブも一緒か。数も多い。ちょっと厄介だね。」

同じく顔を出したヤムが呟く。

早々に飛び出した2人が、あっという間に

ゴブリンに囲まれた。

時刻は夕暮れに変わろうとする頃。

もう少しで薄暗くなってくる。ゴブリンって

洞窟にいるイメージだから夜目も効くよな。

暗くなったらかなりマズイ。

後ろでは、どうしよう!と慌てる僧侶さん。

「ヤムはメイ達を守ってて!」

言って、俺は荷台から飛び降りた。

「ジュン!どうするつもりだい!」

「あの2人を馬車に戻して、道の前の連中をどかす!

カイノさん!道が拓けたら、馬車を全速で

走り出させて下さい!」

振り向かず叫び、カイノさんの分かりました!の

声を後ろに聞きながら、冒険者リーダーの方へ

走り出した。

夕暮れまでそんなに時間がない。

全速で走り、リーダーに集っている3匹の内

真後ろから殴ろうとしている1匹に、剣を抜き様に

胴を払い切り。

ガシュ!

走る足をシアのステップに変え、ランガースさんの

動きに変える。払い切った動きと合わせて

回転の速度を上げて、左にいた2匹目の首に

払い切り。

カヒュ!

流れのまま、その隣にいた3匹目の頭に向けて

左回し蹴り。

ゴシャ!

冒険者リーダーの周りを、くるりと半周する形で

3匹を仕留めた。

「速い!」

ヤムが呟く。

「馬車に戻れ!」

俺はリーダーに叫んで、もう1人の方に走り出した。

目の前に1匹!こっちに気付いて向かってくる。

突くのが1番速いけど、剣に刺さると

抜く手間が出るから、もう一歩進んで払う。

こっちは4匹。

速度を落とさず目の前のゴブリンを狙う。

ガヒ!

払って首を切る。正面に冒険者。そのまま走り

体当たりでゴブリンの輪の外に出す!

少し痛くても我慢してね!

ドン!

ゴブリンとゴブリンの間をもんどり打って転げて

上手く輪から出た!

「馬車に戻れ!ヤム!フォローお願い!」

「分かったよ!」

飛ばされた冒険者は急いで馬車に戻る。

俺は3匹のゴブリンの真ん中。

ゴシャ!ぐぎゃ!

飛ばした冒険者に1番近い1匹を蹴り飛ばした。

ん?残り2匹が来ない。

周りを見回すと、弓を引く3匹が目に入る。

遅い矢でも3方向同時は面倒だし、待ってられない!

道を塞ぐデカいゴブリンの方向に飛び退く。

ビッ!

矢が1本左腕を掠った。痛った!でも掠っただけ!

飛び退いて、左手を地につき側転。デカいゴブリンの

目の前に来た。棍棒を振り上げ、俺の頭目掛けて

振り下ろしてくる。

「ジュン様!危ない!」

メイの声を聞きながら、馬車の道を開ける為に

飛ばす方向を見定め、右に躱し懐に入る。そのまま

ズドォン!

速い流れの中の全力の発勁。

デカい図体が弾かれるように数メートル飛び

2匹のゴブリンを巻き込み、地面を転がって

動かなくなった。固まるゴブリン達。

よし!馬車の前に道が出来た!

うぉー!って馬車から歓声。

おい!俺こんなに頑張ってんのに

余裕そうだなお前ら!

「馬車を走らせろ!」

俺は叫びながら、近づこうとするゴブリンの1匹を

切り払い、走り出した馬車の後ろに飛び掴み

ゴブリン達が離れるのを眺めた。

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