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6日目の夜。
いよいよ明日、カイダールに向けて出発する。
今朝、先日ゴブリンに襲われてた馬車の人が
訪ねてきて、わざわざお礼を持ってきてくれた。
この広い街の中、探し回ってくれたみたい。
何とも恐縮してしまうな。
それで、探しているうちに、俺がカイダールに
行くことを人伝てに聞いたようで、リナルドは
その途中にある街だから、乗って行ったらどうかと
提案された。
ちゃんと護衛の冒険者は雇ったのだが、駆け出しの
3人組で不安らしい。まぁ、俺としても
乗せてもらえたら楽だし、道間違えなさそうだし。
渡りに船かな?と快諾。
一応護衛として考えてくれるみたいで、無事着いたら
報酬もくれるみたい。
で、その馬車はまた朝早く出るみたいで、今の話を
昼間にシアとアシャに話しに行き、しばしの別れを
惜しみ今に至る。
「店長さん。今日までお世話になりました。
明日、朝早くに出ます。」
「そうなのかい。もっとゆっくりしていって
もらいたかったけどね。」
「ありがとうございます。また戻ってきますので
その時はまた、泊まらせてもらいます。」
ジュンの言葉に笑顔で返すミラン。
「あの、それでこれまでのお代を
お支払いしたいのですが。」
と言うと、店長さんがジッとこっちを見据えてる。
どうしたんだろ?
え?もしかして、言うの遅かったのか?
先払いだったとか?俺が不安な顔すると
「代金の代わりに、一つ頼まれてくれないかい?」
ん?どういうこと?
「うちの子達3人がね、私用でカイダールに
行くんだけどちょっと心配でね。
ジュンもカイダールに行くんだろ?どうだろ?
一緒に連れて行ってやってくれないかな?」
ん?それって、一緒にカイダールまで行けば
良いってことだよね?
それでお代代わりは流石に気が引ける。
「俺は全然構いませんよ?ただ、リナルドまで
馬車に乗せてもらう話になってて、その方に
聞いてみないとですが。」
「ああ、朝見てたよ。カイノの兄弟の馬車だよね?
大丈夫だよ、あたしから明日の朝話すから。」
知ってる人なんだ、流石に顔広いなー店長さん。
「それならば問題無いです。
それとは別に、お代は受け取って下さい。
この6日、すごく良くしてもらったので。」
ミランは上機嫌に
「あんたは本当、良い子だねー。でも、ここは
あたしの顔を立てると思って、申し出を受けて
もらえると嬉しいんだけどね。」
「じゃあ、お言葉に甘えさせてもらいます。
こんなに良くしてもらったのに、何だか
申し訳ないですが。」
「あんたの腕を見込んでのことだからね。」
ん?どういうことだろ?
まぁ、ここの子って女の子ばかりだったから
護衛も兼ねてってことなのかな?
「分かりました。ご期待に添える様、頑張ります。」
「ありがとうね。そしたら、3人には朝ここに
居させるから。」
「分かりました。
それではまた明日、おやすみなさい。」
店長さんは、部屋に戻る俺を笑顔で見送ってくれた。