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「ボスからおまえは丁重にあつかえだとよ」


 ブリッツ・ホーホゴットがイペタムのアジトにはいるとき。上曾洋からいわれた言葉だった。

 アジトのなかは閑散としていて、例のボスの姿はみあたらなかった。

 よくよくかんがえれば、巨大テロ組織イペタムのボスがこんな片田舎の支部にいるわけはなかった。


「じゃあ、この手枷をはずしていただきたいものだ」

 ブリッツは自分の手に視線をおとした。

 その手首には、手錠がかけられている。


「おまえが組織にもどってくれるなら、はずすが?」

「それもボスの命令か?」

「あぁ、そうだよ。腕のいい剣士がほしいんだとよ」

 上曾洋が不満気にうなった。


「本当はおまえを殺したかったんだけどなぁ」

「そのボスとやらの命令をやぶるのが、こいわいってか?」


 ブリッツがバカにするようにいうと、上曾洋は露骨に顔を赤くする。

 そして、ブリッツの首ねっこをつかんだ。


「いいか、おまえ。期限は明日の朝までだからな? それまでに、こたえがなかったら、殺すぞ」

「ふっ、やってみろ」


 上曾洋の殺気をあざわらうように、ブリッツは飄々と軽口をたたく。

「チッ」

 上曾洋はくやしそうに顔をゆがめ、ブリッツから手をはなした。


「ところで、あれはなんじゃ?」

 ブリッツは部屋のすみにあるダンボールをゆびさす。ケーキの箱ぐらいのおおきさだった。

「ボスからおまえへのプレゼントだ。もどってくるなら、くれるそうだぞ」

「ふん、我はわっぱではないんだがな」

 そこで、ブリッツと上曾洋の会話はとぎれた。



 パシッ。

 私、仁禮春姫の頬から打撃音がひびきわたる。

 党首官邸の執務室につくなり、千瀬さんから平手打ちされたのだ。


「春姫ちゃん、身のほどをわきまえようよー」

 つめたい目で、私は見られている。

 千瀬さんはめずらしく、顔に表情をだしていた。

 目尻がつりあがり、眉間にしわができ、口角がすこしさがっている。


 ブリッツのしかめっ面に、まけないほどの鬼のような顔。

 この人が本当に千瀬さんなのか、うたがいたくなるぐらいだった。


「わかっています……」

 私はうつむいたままこたえる。

「まぁ、党首閣下もおゆるしくださるようだし、今日はもういいや。ゆっくり、やすんで明日から……」


「まってください」

 私は千瀬さんの言葉をさえぎった。


「ブリッツは……どうなるんですか?」

 私の頭のなかにあったのは、イペタムにさらわれたブリッツのことだった。

 誘拐されたブリッツの姿を想像するだけで、きがきではなかった。


「どうなるって、どういう意味さ?」

「たすけにいくんですよね……?」

 私はすがるような視線をむける。すると、千瀬さんは首を左右にふった。

「うーん、それはむずかしいねぇ」


 えっ……。

「なんでですかッ……仲間でしょう!?」

 私はおもわず、声をあらげた。


「……」千瀬さんは分がわるそうに口をとじる。

「なんでだまるんですか? 説明してくださいよ」

「私が命令したんです……」

 ソファにすわっていた、閣下が口をはさんできた。

「明日から東との和平交渉をはじめます。そのなかで東とつながっているイペタムとさわぎをおこしたくないんです」

「そんな……閣下」

 閣下は私の顔をまっすぐみつめてくる。その視線が痛かった。


「……」わたしはうつむくしかなかった。

 そんなの……ひどすぎるよ……ッ!


「失礼します」

 たえられなくなり、にげだすように執務室からでていった。

 一瞬だけふりかえると、千瀬さんと閣下のこちらをあわれるような瞳が見えた。

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