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「はぁ……なんだかなぁ」


 布団によこになった私は、天井をみあげていた。

 くらい闇のなか、ブリッツとホムラと木梨田のいびきがまざりあい、三重奏になっている。

 夜、ねるときはいつも佩刀課のみんなと川の字になる。


『今回のイペタムの件がおわったら、私たちとキミの接点はなくなる。そして、もう二度とあうことなく、サヨナラさー』――

 まえにいわれた千瀬さんの声が頭のなかをかけめぐっている。


「サヨナラって……」

 つめたい彼女の言葉が、ずっと心にひっかかってしかたがなかった。


 まぁ、彼女たちも仕事だ。すべてがおわったらサヨナラなんだろう。

 それでも、二度とあえないだなんていわれたら……。

 となりへ頭をむける。


「スゥースゥー」

 夜目にブリッツの寝顔がうつった。りりしいまつ毛に、はんびらきのつやめく唇。

 ――あいもかわらず、かわいい顔だ。

 イペタムが私から手をひいたら、イペタムがこの国からでていったら、イペタムが壊滅したら――もうこんな寝顔もみられないのかな。


「不思議だな。まだであって数日なのに、はなれるのがイヤになるなんて」


 そっと、彼女の額に自分の額をくっつける。

 いや……私が師匠にやられた日に幻覚で見たわけだし、数日ってことはないか。

 まて、あれって本当に幻覚なのか……。たしかに本人はそんなのしらないとはいっていた。

 しかし、いくらかんがえても幻覚にしてはリアリティがつよすぎるような。


「スゥースゥー」

 私の思考にブリッツの寝息がまじる。

 彼女の顔を見ているとなんだか、どうでもよくなってきた。


「我も……」ブリッツの寝言がひびいてくる。

「我もはなれたくない……」


 もにゅっと、やさしい感触が体におしつけられる。

 ブリッツが私をギュッとだきしめて、くっついてきた。


「ちょ……ブリッツ!」

 なんだか、あまいかおりがただよい、頭がクラクラしてくる。

 心臓がゆれて、ドクンドクンとなりつづける。


「……我もはなれたくないよ、お父さん、お母さん」

「ブリッツ……」


 そうか……そうだった。ブリッツはテロリストにさらわれて、そだてられたんだった。

 じゃあ、彼女の両親は……。


「お父さん、お母さん……あいたいよう」

 むにゃむにゃと、寝言がつづく。

「大丈夫……私がいるよ」

 そうささやいてあげると、安心したように彼女は寝息をたてはじめた。

 ふと自分の家族のことをおもいだす。


「おねえちゃん元気かな……」

 警視庁にきて数日。最近、姉とまったく連絡をとっていない。


 いつも私の世話をしてくれた姉。

 いつもやさしい姉。

 なんだか、恋しくなってくる。


「明日こそは連絡しよう」

 そう胸のなかで決意しつつ、私の意識はまどろみにきえていった。



 朝、おきてくるなり、千瀬さんからおねがいごとをされた。


「ヌフフ、今日はいっしょにいきたいところがあるんだー」

「いきたいところですか?」

「まぁ、そういっても警視庁内だけど」

 朝食をとり、身支度をととえ、千瀬さんのあとにつづき、地下室からでた。

 階段をのぼりおりし、廊下をわたって、扉のまえについた。


「……ここですか?」

「うん、そうだよ」

 千瀬さんがドアをあけると、そこはソファ二台とテーブルがおかれた簡素な部屋だった。

 壁にはおおきなモニターがついている。


「うーん、春姫ちゃん。これから、超がつくほどスペシャルなゲストがやってくるんだ。私はおむかえにいくから、ここでまっていてくれないかな?」

「はい」


 千瀬さんがさったのをみおくり、私はソファに腰をかけた。

 超がつくほどスペシャルなゲスト……って、誰だろう?

 この超がつくほどスペシャルな事態におちいってから、なんだかそういうのにたいし、なんの特別性もかんじなくなってきた。


 ビュンッ! ――唐突にモニターの電源がはいった。


「……へっ?」


 画面のなかに、鮮明な画質の写真がうかびあがってくる。

 ながい髪の女が手足をしばられて、口をガムテープでふさがれている。


「へっ……お、おねえちゃん!?」


 その写真にうつっている女は、あきらかに姉だった。

 画面に文字があらわれる。


『開放してほしいのなら、ここまでこい』

 つぎにでたのは、地図だった。赤いバツ印でしめされている場所は――私の家だ。

「そ、そんな、どうして……」

 頭が混乱してくる。

 これをみせているのって、イペタムか……? いや、イペタム以外ありえない。


『なお、このことを誰かにはなしたり、誰かとともにきたりしたら、女は殺す』


 その文章とともに、モニターの画面がきれた。


 そ、そんな……姉が。


 一瞬――思案する。


 もうすぐここに千瀬さんがくる。そのときつたえるべきだろうか?

 ……否。

 誰かにはなしたら、殺すといっていた。


 もしかしたら、そのことを見こして、警察内部にスパイがいるのかもしれない。

「……」

 私は扉に人の気配がないことを確認して、そとにとびだしていった。

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