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宛先のない物語  作者: ナナイ/リル
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ナナイ 4

計画のほうを進ませてもらうって言ってるけど...計画ってなんだっけ?そもそもそんなものあったかな?わけわかんないから、ボクは男の子の方を見る。なんとなく、撫でくり回したくなるような可愛さがある。それでいてキリッとしてて...ちょっと、カッコいいかも。


そんなボクの好奇の目に晒されていたからか、男の子?は少し窓を見るようにして顔を隠してしまった、残念。

「...あれ?悠生(ゆう)君、どーかしたのかい?」

と、本当に男の子だったらしいひと...ゆうくん?を見て少し驚いたようにロキが問いかけた。すぐに「...なんでもない」と返ってきてたけど、こっちを...多分、ボクのことを見ようとしていない。嫌われちゃったかな?確かに、ずっと見られてたら嫌だなあ...。


「...名前は?」

少し物思いに耽っていると、ゆうくんが目の前にいてびっくり。一瞬驚いて声を上げかけたけど、なんとか我慢した。「えっと、ナナイだよ」とボクが答えると、ゆうくんはロキの方を見て「僕はこの子のイラストだけ描く」と答えていた。そして、そのあとはなぜか撫でられた。でも、あまり悪い気はしなかった。そのあと、三人でボクの家に帰るときにイアに「おうおう、お熱いねえ」などと気味悪い笑顔で言われたけどなんのことだったんだろう?


ーーー


「...行っちゃった」

「そんなふうに寂しがるならついていけば良かったのに。多分断られなかったと思うよ?」

同時刻。来る時と同じように社用車に乗って家に帰って行く三人...というよりはナナイのことを思って、悠生の口からため息と弱音が吐かれた。それに呼応するロキの言葉に、悠生が背中を粟立てだが声の主がロキだと知ると、小さくため息をついて「なんだよ」と少し拗ねるように言った。


ロキは「なんて可愛げのない子だね。まあ、自分の意思でナナイを選んでいるのはいいけど、早めに手をつけたほうがいいかもね?」と悠生に向かってニヤニヤしながら自らの席である取締役用の机を回るようにして歩き、椅子に座ると茶番はおしまいだとばかりに少し真剣な顔つきになった。


「...で、イラストはどのくらいで仕上がるかな?」

先ほどまでとは違い、真剣な口調になったロキを見て少し見方を変える必要がありそうだなと気を引き締め直した悠生は、「全速力でやる。少なくとも、三週間以内には収めれると思う」と答えた。そしてその瞬間。


「そっかー。じゃあ、動かす都合と設定...いや、設定はナナイの存在自体か。姿は〜...ああ、webカメラあたりを使えばいいかな?学業との両立は...最初の方は動画で、売れてきたらライブ配信を始める感じにすればいいかな?ま、あとでナナイとそこら辺は詰めればいいか。あ、マネージャーとかどうしよう...最悪、神威使ってどうにかするか...?」


未だ悠生はおろか、ロキやナナイ、そして疑惑のあるイアぐらいしか知らないだろう情報(ヴァーチャルライバー)の片鱗を、ロキの沈んでいく思考という形で体験した悠生は、再びロキの見方を変えた。...もとよりさらに低い方向へと。


ーーー


家に着いたあと、しばらくして二人はいつものように帰って行った。そして、それとすれ違うようにロキが帰ってきた。

帰ってきたロキは、明らかに何かの資料らしきを持ってきていた。


「ナナイ、さっきの男の子はナナイのVtuberとしての姿を描いてくれる絵師さんでね。...あー、オルカ余月(ヨルナ)っていったほうが分かりやすいのかな?」

「オルカさんなの!?」


オルカさん...オルカ余月(ヨルナ)さんは、5年前くらいからイラストレーターとして活動しているイラストレーターさんだ。

色々な作品を描いていて、たまに自作小説を作ってはその作品を漫画として作っている人でもある。


ボクはそんなオルカさんに憧れていて、いつのまにかボク自身イラストを描けるようになっていたのはみんなに秘密にしていることだ。...あーでも、由叉井(ゆきい)リンとしてイラストを描く配信もしたしバレてるかな。


そして、だからこそゆうくんがオルカさんだということにすごく驚いて、何か考えようとするとすごいなあという感想が浮かんでくる。多分、オルカさんは小1の頃からイラストレーターなのだろう。尚更憧れポイントが高くなった。



そして時は流れ、ボクたちは融煉中学校へ進学してしばらく経った。イアは来栖に好意を隠さないようになって、来栖はまあ側から見ればイアに甘いけど、イアはそれに気づいていない模様。突っついてくっついちまえと言いたくなっているけど、こういうのは後方親友面で見ているのが一番楽しいと言うし実際に楽しいので放置している(なお、くっつかないことに対しての苛立ちを抑えられるのならば)。


この学校は絶対何かしらの部活に入らなければならない(不登校など長期休みの人除く)。

ボクたちは帰宅部所属だ。...いや、本当に。

この学校には帰宅部という部があって、どれだけ早く帰れるかを競走する。ちなみに、ボクたちの家はそれでよくゴール地点に使われる。おかげで、帰宅部の殆どがPCの知識を得てイラストにハマるヲタ街道まっしぐら状態になっている。...引き摺り込んだのボクだから、大体がオルカさんファンになるんだけど。


神様は無情で、ボクの体の成長はもう終わったと言わんばかりに背も胸も大きくならない。おかげで、イアには最近抱き枕扱いされている気がする。イアに抱きしめられるたび、ボクの心は未だに伸び悩む傾向のないイアの胸と背に嫉妬して荒れ果てると言うのに。悟られないようにするために引き剥がそうとしても、大抵身長分の筋肉量の差で負ける。これが小さい人の敗北感...?頭の中に、真っ赤な髪で上半身裸の人が「取り消せよ、今の言葉!」と叫んだので考えを止めた。


ゆうくんは、どうやら毎年盆と年末にトールサイトで行われる同胞(ヲタ)の聖典、コミマの次回(今年の盆)にベースを取ることに成功したらしく、「ナナイの姿のコスして行く!」とボクに嬉しそうに報告してきた。

やはりゆうくんは今中学生...しかも同じ学年らしい。いつか会うかもしれないというのは彼の言だけど、それ以前にもっとすぐ会いそうなものだ。...だって、ボクも由叉井リンとして出店するもの。

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― 新着の感想 ―
[一言] なるほど、貴様はコミマ略派か。
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