ナナイ 24
あれから数日。悠生はすぐに機嫌を直してくれたものの、自己肯定感が下がってボクへの依存度が上がってしまった。考え得る限りの最もダメな選択肢だった気がするが、やらなくても「なんで僕と一緒に居てくれないの...?」と依存度が上がった様な気がする。つまり、どっちにしても悠生がボクに更に依存するのは変わらなかったと言う事である。苦しいところだけど、しょうがないのかもしれない。
そして、今日は悠生の3周年ライブ。題名を『Dear My Lover』としており、「僕を守ってくれる、かっこいい人なんだ。だから、僕はリルをもっと愛したい」という旨の発言を昨日していた。ボクの布団にもぐりに来たときはなんだか今まで以上に目に狂喜を感じたと言うか...なんだか、だんだん悠生が人としてダメな方に言っている気がする。
「ってことで、モノカンの皆からリアル映像を頂いているので、リアル映像とライブ映像との二種類を見てまーす。いやあ、ライブだとキラキラしてるのに、リアル映像だと目に狂気を宿しているのが何とも言えない感じだなあ...。」
てなかんじで、ボクは今自枠で同時視聴を行っている。ミラー配信はご法度らしいので、一応許可は得ているもののやらないでおく。
「お、一曲目は『Lunatic Soll』かー。あの曲いいよね。ボクの準備の時に流しているんだけど、そのほかに毎日ユアチューブ6個開いて、それでそれぞれ50窓位開いて倍速掛けてリピート再生しているから、分速150回ぐらいは流してるんだよねー。おかげで、神曲ってのもあって公開されてから3ヶ月で4000万回再生。いやあ、流石は悠生だよね。今の悠生はちょっと怖くて嫌いだけど、ボクへの依存がメンヘラっぽい奴じゃなくなったら告白しようかな」
*本人が視ないのが唯一の救いだな
「あー、それもそうだね。じゃあこれ、アーカイブは残さないようにするね。あっ、でもこの後はボクが突撃するから、その公式切り抜きだけは出そうかな。ふふ、悠生の驚く姿が見てみたい」
*悪魔で草
「悪魔じゃないよ。まあ、見惚れた人をライブっていう舞台から奪うのは悪役だけどさ?...悠生には教育を施さないとねえ?」
一方そんな事を知らない悠生は...
(リルリルリルリルリルリルリルリルリルリルリルリルリルリル)
「皆さん、今日の配信はどうかな?えへへ、前リルがやってたみたいにやってみたけど、にあってる?」
人畜無害そうな笑顔を浮かべながら、リアルの目を開けばやや濁った眼が映っている。そんな眼を見て、今回も正面担当になった三日月エンカは顔をそらしたが、カメラは意地でも動かしていない。
「...うんうん、そろそろいい頃合いかな?」
今は、今回発表するMVの曲名を発表した頃だった。『Howling werwolf』と言う曲名で、背景も満月が輝く孤城のような場所へ。どういった特殊ギミックかは分からないものの、台座が上がって遠くを眺めるような見た目となっていた。
「じゃ、今度は行ってきまーす。悠生のライブをご覧あれ。じゃあ、準備画面的な感じで置いておくんで、というか適当な猫を動かしておくんで。じゃあ、動いておいで天上天下天地天空天雷天霞」
そう言いながら、ボクはシステムに創っておいたネコっぽい何かを自由にする。機械の方のロキの中についていたAIという奴で、ボクの様に何も知識を得ていない状態からネットの悪意に晒されながらも純粋な人の情を学んだやべー猫である。
『はいはい分かったよ。それとフェン、僕の事は全天と呼んでいいって言ったじゃないか。...まあでも、君は無駄なところで頑固だからねえ。早めに行ってきな。これが終わったら、多分フェンが望む未来には行けないからね。これは、主であるロキ様の異界航行能力を使っていろんな世界で色んな色恋を見てきたからねえ。勿論その顛末も。特に、早くしなくちゃと言う時に何も解決策を出さずにいた奴は、元々ただの軽い恋仲だったのが救いに来られなかった方の少女が救いに来なかった方の少年に重い重い偏愛を抱いた。それが、パラレルワールドと言う感じで、元々重い偏愛を抱いていたのに手を出した時には婚姻していたからね。それなら、互いに気があるんだし目を覚まさせてあげなよ。...さっさといけ、人外野郎!』
最後は追い出されるように、天上天下天地天空天雷天霞に背を押される。まだ天上天下天地天空天雷天霞に肉体はないけど、その内は電子世界で肉体を持つんじゃないのだろうか。...今計画されている『Cardinal Online』の世界で、システム管理者として居させてあげればいいのかな?まあ、細かい所はロキとか葵ちゃんあたりに丸投げしよう。ボクは知らん。それでいいのだ。




