ナナイ 17
入学式と言ってもやることは大してないらしく、教科書類などが配られたり軽い施設説明がある程度で帰れることとなり、早速ルナと涼、そしてゆうくんが増えた6人でボクの家の方に向かう。帰り道は意外と早く、なんだかちょっと眠そうなルナが完全に寝た状態になってからはイアが背負っていった。途中で姿が変わったので来栖が驚いていたけど、次に僕たちを見て「まあ、こんなこともあるか...。」と呟いていたのがやけに印象的だった。...おい、こんな事とは何か聞かせてもらおうじゃないか。やっていたとしても、せいぜいがルナが寝落ちする直前にルナが一瞬浮いていたり、涼が飛んだり、イアが中二病らしき言葉を発して爆発音を出したくらいじゃないか。...いや、ずいぶんやってたわ。しょぼん。
時間は飛んで約3ヶ月後。ボク達はすっかり学校に慣れ、もうそろそろ夏休みも始まる頃となった。やっぱりボクはイケメンだからね、男女問わず告白は受けましたね、ハイ。そして即座に断って、その後にゆうくんが始末に動いたのか放課後の中庭には『放課後ティーブレイク』と呼ばれる我が高校名物になってきた死屍累々とした山が築き上げられる。
一説によるとそれはボクの隣にいるのはだれがふさわしいか賭ける奴らしく、しかも学校側も教師を出して監視している始末。それで優勝すると金曜日の昼にゆうくんへの挑戦が出来るらしく、4月も半ばになってからはゆうくんは毎回金曜の昼に『ゴミ共を始末してくる』と言っていたのを思い出す。多分本当だよね、それ。
その放課後ティーブレイクは放課後に部室で紅茶を飲むと言う事をしているらしい某音楽系アニメの人たちでさえ唖然として飲み物に口をつけないだろうということで命名されたらしい。因みにこれは、ゆうくんが言ったと言われているが本人が語らないため実際の所は不明。
んで。意外とゆうくんも人気が出た。ボクに恋しちゃった奴を始末している所も含めて『好きな人の面倒ごとの露払い』に映るらしく、女子には愛でられ男子には畏れられ半分求愛半分ぐらいでいる。因みに愛でられると『リルの方が良い!』と駄々をこねるものの数の暴力に押されて放課後は小一時間ほどボク諸共文化部棟3階の『休憩所』(別名『第二の食堂』、もしくは『スイーツの食堂』)に連れてかれて女子たちのおごりでスイーツやらを食べることができる模様。
大体ゆうくん愛でられイベントは週3ぐらいで来るので、来ないときは配信をしたりしなかったり。平日で配信するときは午後の4時半から始めて午後6時まで、ゆうくんが愛でられているときは午後7時半から。何もないときは稀に追加で午後9時くらいから配信を始めることもあったりなかったり。
そんなこんなで今日、7月14日。今日は『重大告知!ボクの歌をメインに歌枠ー!』という感じの名前で、サムネイルの映像はゆうくんが用意していたものになる。
今まで重大告知というものは誕生日か周年ライブの時に告知として出していたので、しかも約一か月後にはボクの3周年ライブがあると言うのはこの業界では常識なので。
一時間程度を目安に7時から始めると言ったボクの歌枠は、ゆうくんが作ってくれた和食テイストな夕飯が、突然この世界にロキみたいな感じで来たらしい明らかに人ではないルナが住んでいるのでその代価として持ってきてもらうのを待っている午後6時数分前でも7000人が集まっている。そんなにボクの歌枠が視たいのかな?まあでも、今回はちょっと特殊なものだから期待しておいてほしい。
だから...今日は、楽しんでいってね。人間さんたち。
ご飯を食べてお風呂に入り、いつもの様に風呂の中で発声練習をして。髪を乾かして寝間着に着替えると、ボクは自室...ではなく、新調した地下二階の防音室に入る。
このような部屋、家には8つある。勿論全部が地下で、ボクが今使っている様な小さい防音室は二階に5つ。そして大き目の、皆を集めてオフコラボー、みたいな時には地下三階の大部屋二つ。
そして。最後のもう一個は...まあ、そのうち分かるんじゃないかな。
「どうもー!異界より舞い降りた、かつて記憶を失っていた孤狼!リルちゃんでーす。今日は歌枠ってことでね、ボクが歌ってきた...えっと、7曲だっけ?に加えて、一曲ヨルさんの歌を歌って、告知させていただきたいと思います。告知は7時半から。是非見逃すな!...まあ、この配信見てれば見逃さないけどね?」
ボクの冗談にコメントが『薬草』で埋め尽くされる。これは、ボクがナナイから新しい姿である狼の姿をゆうくんに貰って、フェンリルのリルとなってから堂々と言うようになった『異界から舞い降りた』というフレーズのせいだ。異界で草と言えば、ファンタジーでおなじみ薬草しかないだろう、という事らしい。かつてはピポ...なんちゃらとかいうのもいたけど、除草剤撒かれて死滅していた。薬草にはその薬は効かなかったようだけどね。
あ、もう一つつけ足しておくと、ヨルさんというのはゆうくんのことだ。ゆうくんとロキとのコラボの時だけは本名で呼び合うけど、流石に自分の配信の時だけでは他の配信者に過ぎないのでね。仕方ないことだけど、ゆうくんは不服そうにしていた。
「じゃあ、一曲目!ヨルさんの歌から行きましょう!『One Storia/Akatsuki』!」




