ナナイ 15
少し早く出たと言うのにゆうくんはボクが家を出て10分も無しに追いついてきた。頬を大きく膨らませて、ボクを睨みつけてくるゆうくんは本当に女子高生にしか見えない不思議。...というか、これだけ見た人は女子高生とその彼氏みたいに見えてしまうのでは...?
「...どうしたの?リル」
「ああいや、なんでもない」
少し赤くなったのをゆうくんに見られてしまったらしい。それはそれで恥ずかしいけど、ゆうくんは外見を気にしないのだろうか。
「場所は知ってるだろうけど、迷子になったら困るからね!ほら、腕出して!」
そう言うと、ゆうくんはボクの返事も聞かずにボクの腕に腕を通してくる。...ほんと、外見を気にしていないのかな、ゆうくんは。
「...本当に、ゆうくんってボクの彼女みたいだよね」
かろうじてボクの喉から出たそんな言葉は、ゆうくんがボクの脇腹を小突いてゆうくんが不機嫌になると言う悪い結果をもたらしてしまった。
融煉高等学校は、少し前まで通っていた融煉中学校とはこの市の中核ともいえる大通りとデパートを挟んだ向こうにある。中学校からのエスカレーターは非常に範囲の広い学年末テストで一定以上の点数を取ったうえである程度の評定を得ていると問題なく入れる。因みにそこで落ちるような奴はめったにいないので、基本的には殆どの中学3年生がエスカレーター状態。
しかし市内でも特に遠い所、もしくは市外から入るときにある入試は非常に難しい...らしい。でも3年の時の学年末テストと同じ内容らしいので、ってエスカレーターとは...?
ゆうくんはこっちの方で、合格した時は小躍りしていた。今の服を着せてGB素材を上げたいと思える可愛さだったけど、そんな事をゆうくんに伝えてしまうとゆうくんにもっと機嫌を下げられかねない。まあ、賢明なボクはそんなこと言わないけど。
『...あれ、誰だろ?』
『ああ、ありゃ佐々木だな。それと、宇月なんとかだったっけ?ここにある大企業の前の社長の子共だか養子だか...』
『嘘!あれ付き合ってるでしょ!』
「......」
聞こえる声が痛い痛い。ゆうくんには本当に外見を気にしてほしいものだよ、全く。
「...//」
と思って横を見ると、俯いて真っ赤になっていた。もっと男らしくしていたらいいのに...とは、こっそり思ったけど気付かれなかったようだ。
「...リル!早く行こッ!」
「おわっ!?ゆうくん、ちょ、待―――」
ゆうくんは待つことなどなく、全力でボクをぐいぐいと引っ張っていった。ああああ、そんなことすると―――!
『...あの反応、マジっぽくね?』
『あの小っちゃい方、好みかも...。』
やっぱりこうなるんだぁー!
というか、なんかゆうくんに対して好意出してたのいなかった?適当な芋男との同人誌にするぞ、ゴラ。
早めに出た事も、そしてゆうくんに全力で引きずられてしまって早く動いたのもあってか、まだクラス分けの名前があるところには人は少なかった。なんなら、来栖もイアもいない。ちょっとおそいのでは?
「ほぇ?寝坊助なナナイにしては早いね」
「結構早いんだな。...って、服装逆じゃないのか?リル」
と思ったら、後ろから声がした。というか、ボクの呼び名二人として違くない?
変な話ではある。ゆうくんも来栖もリルって呼んでるけど、イアは今まで通りナナイって呼んでいる。
...男だけ、ボクの呼び名が変わった?いや、単純にイアが変なだけかな。来栖が昨日の夜ボクの呼び名がリルになったのを知っているわけじゃないだろうし、それならロキがボクの名前をリルって刷り込んだって言った方が分かりやすい。イアの事をとくいてんとかいってたし、イアには効かなかった説。
しばらくたって、ボク達は自分たちの名前を1年6組に発見した。しかも、ゆうくんも含めてみんな同じクラス。そのクラスの名簿の中には、見慣れた佐々木涼という女性の名前もあったけど...まあもともとの身元も不明なボクみたいな人だし、職って言ってもボク達の監視とかグッズの考案だし(企業勤めの人がなぜこんなことをやっているかって?ヒント:ロキは取締役を降りたものの専務代表みたいな立場にいます)。まあ、あまり不思議はない。あまりってつく時点でダメなような気がしないでもないけどね。
「...あ、リン様お久しぶりです!涼風ですよー!...と、オルカさん、お久しぶり。で、こちらの殿方は友達ですか?」
後ろからの圧力で動けなくなり始めたボク達の下に、聞き覚えのあるちょっと独特な少し低めの女声が聞こえて、周りの人を押しのけて出てきた少女がいた。
「ああ、久しぶりすず...じゃなくて、涼。元気にしてた?」
ボクが頭に手を置きながら聞くと、涼...涼風は一切ない胸を張って「勿論!おかげさまで、元気にやらさせていただいています!」とボクが置いた手に軽く頭を擦り付ける様にして嬉しそうにしながらも答えた。うんうん、ゆうくんと違って同性だし、これはこれで小動物枠としてはかわい―――
「...ッヅゥ...んぐ!?」
「どうしたの?リル。変な声上げて、手首を爪と爪で千切られたみたいな声上げて」
気付けばボクは、ゆうくんに手首を爪で抉られていた。しかも声を上げない様に一瞬だけボクの喉を握り、しかも満面の笑顔でボクを見ている。「い、いやなんでも...?」と、脂汗を少し流しつつも答えるほかに、ボクが取れる手段は無かった。涼が、なんだか白けた目でボク達を見ていたのがやけに心にダメージを与えてきた。




