ナナイ 13
「...いてっ」
ボクは、身体に走る痛みで目が覚めた。目を開けると、いつもの大きなベッドが上にある。どうやら、ずり落ちて目が覚めたらしい。でも、これは寧ろ好都合だ。ボクは、まだ起きているだろうロキの下に向かった。
真っ暗な屋敷の中、ロキがいる部屋からはまだ光がこぼれていた。ゆうくんが寝ている部屋からは明かりが漏れ出ていない辺り、結構夜も遅い時間なんだろう。まあ、ゆうくん自体早く寝ると言うのもあるけどね。
ロキの部屋をノックして、『んー?どうしたのかな?』というロキの声を聴いてボクはロキの部屋に入った。
ロキは、PCをいじくっていた。何やら今度出すソフトの調整を行っているみたいだけど、ひと段落してこちらを見るまでは話し始めないことにしておいた。
「...で、なんだい?こんな夜遅くに来るなんて、珍しいこともあったもんだね」
ちょっとだけ疲れた様子のロキがボクを見る中、ボクはさっき見た夢についての質問をした。
「ロキって、ウァナルとタナトスって言う二人の神を知ってる?」
「...ナナイ。一体それを誰に聞いた?いや、それ自体は問題じゃないんだ。何故、そんな事を知っている?」
ロキがその言葉を発し終わった瞬間、体感温度が20度近く下がった。いくら4月とはいえ、長袖のパジャマを着ておいて良かったと思ったのは今日ぐらいのものだと思う。
ロキの視線は、それだけで人を射殺せるんじゃないかと言うほどに細く鋭くなっており、ロキ自身の顔も猜疑にやや殺意が混じった表情になっていた。
更に空気すらも重くなっており、重圧がかかった様な錯覚も本当なんじゃないかと思うぐらいの圧力を感じながらボクは口を開いた。
「...夢で。タナトスが、グレイムの所に助力してもらおうとか言っていたところで、居たところが壊れて。それで、目が覚めた」
ボクの、その言葉を聞いたロキは...「...そっか」と溜息を吐いた。空気はいつの間にかいつも通りの感じになっており、温度差で風邪をひいてしまうんではないかと思うぐらいに暖かくなった。
「まあ、ナナイには何か近しいものを感じると思っていたからね。そのくらいは当然かな。...でもまあ、ナナイもこのことを知ってしまったんだし、ちょっと話を聞いてもらうかな。―――もちろん、君も一緒にね?宇月悠生」
ロキが先程の空気を再び発して扉を見つめる。そこから現れたのは、ほんとうにゆうくんだった。
「...いつから僕のことを?」
少し言葉足らずなゆうくんも可愛い。今すぐにでも可愛がりたい衝動に駆られたが、ロキの前でそれをすると「お似合いだねぇ」などと言われる気がしたのでやめた。
「最初からかな。強いて言えば、君が自分の部屋で『ナナイ...』とか言いながら恋する乙女みたいな顔で足をバタバタさせてたのも「あああああ!ナナイ、何でもないから!僕は別に、ナナイに気があるとか、ましてやナナイがかっこよくて惚れそうとか、そう言うんじゃ決してないからぁ!」
ロキが何かを口走りかけた瞬間、真っ赤になったゆうくんが弁明を始めた。うん、やっぱり可愛い。
ボクは、ゆうくんを抱きしめた。「んにゃぁっ!?」と猫みたいな悲鳴が聞こえたけど、撫でていると「...うぅ」といつもみたいに悔しそうな目でボクを見つめてきた。やっぱり、この顔が有る事でちょっと優越感に浸れる。その|こと(優越感)を隠したうえで笑顔を浮かべて髪を梳いてやると、「...もう」と真っ赤になって俯いてしまった。ただ、さっきの話が本当ならゆうくんはこんなボクがかっこよくて惚れていると言うことになる。...なんか、それはそれで罪悪感が湧くなぁ。
因みに、ロキはそんなボク達を見てニヤニヤしていた。何やら小さい声で呟いていたけど、聞こえなかった。
「...まあ、そうだね。ナナイが見た通り、あのふたりは僕の昔の共謀仲間だよ。途中で抜けて罵倒されたけど、やっぱり死んでたか。で、ナナイは僕の代わりに僕の位置に付けられた存在ってわけだ。...そうだね、これからはナナイじゃなくてフェンリルって呼ばせてもらうよ。今の関係的に、代々世襲制の神の名前だけど僕は僕で滅びないからねえ。それだったら、この世界において『ロキ』の息子であるとされているフェンリルが良いんじゃないかなって。ほら、ケモミミ差分は大量に用意しているだろう?それでしばらくは狼の耳の差分でも使って、適当な時期にそこにいるのにフェンリルとしての形を貰えばいいさ。そのくらいできるよね?」
ゆうくんは「当たり前だよ。ーーーー」と、最後の方は何かつぶやいていた。しかしロキに、「そうだねぇ。というか聞こえていたよ」と返されていた。「!?」というかおをしたゆうくんに「うん、弱みを握っていると使いやすくていいね」などと言っている辺り、ロキは聞こえていた様。ゆうくんが更に真っ赤に、しかも涙目になっていて最高に可愛かったのは、此処だけの話。
因みに、その日は寝る前に一個イラストを投稿した。
それは、オオカミ耳差分でパーカー姿のボクと、そんな僕に抱き締められながらも涙目で真っ赤なゆうくんがニヤニヤするロキに軽く殴りかかっているもの。
爆速でゆうくんにバレて、眠れない夜を過ごした。...後、一個気付いたことはゆうくんがぽかすか殴ってくるのはアニメであるみたいに全く威力がないと言う事だった。ゆうくん、凄いいい匂いがした。ゆうくんを男の娘に仕上げてやりたい。そんな妄想でもう一個イラストを描いた結果、結局一睡もできずに高校生活一日目が幕を上げた。




