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宛先のない物語  作者: ナナイ/リル
12/27

ナナイ 12

結局、ゆうくんの言う様に校舎を綺麗にして鉄誅が出てくる事は無かった。校舎を綺麗にしているといつの間にかゆうくんは暗い部屋にいた。...なぁんか見覚えあるような...?

「あれ?何ここ」

「さ、さぁ...こんなところ知らないし、実際あってもすぐに来れる場所じゃないしなぁ...?」

「それって知ってるってことだよね...?」

先程とは違い、本当のボクに向けてジト目を向けてくるゆうくん。さっきと違って本当にボクを見てくれるゆうくんに、なんだかかわいく思えてつい撫でてしまう。


「んなぁっ!?」

「ふふ、よしよし」

真っ赤になって逃げようとするゆうくんだけど、やっぱり体格差で僕には勝てない。悔しそうにボクを見るその顔が、たまらなく愛おしい。


ゆうくんが少し進むと、その先はやはり見覚えのある十字路。というか、この十字路があると言う事は...。

「ゆうくん」

「何?」

さっき撫でられて怒っていたそのかおは既になく、純粋な疑問をもってボクを見上げてきたゆうくん。この事実を伝えるのは少し悲しいけど、しょうがないよね。


「...これ、最後の場所です。これをまっすぐ進むと、ラスボスが封印されてます」

「そっか。...ゑ?」

効いた時は普通に反応して画面を見ていたけど、数秒後驚きの表情でボクを見上げていた時には全く違った感情を持っていた。


*ラスダンジョンキタ━━━━(゜∀゜)━━━━!!

*公式のバグ見つけてて草

 ¥8888*『KnockLadder公式』いいえ、バグではありません。繰り返します、これは仕様です...バレるとは思ってなかったけど


なんか公式から金積みコメント来てる。その値段からして、ゆうくんが褒められてる(8888パチパチパチパチなので)。なんだかちょっと嬉しい気がしないでもない。

「んー?ナナイ、どうしたの?」

「ああいや、何でもないよ。ゆうくんがこのゲーム作った公式の人に『作っておいた裏技見破られた...(´・ω・`)ショボーン』ってなってるだけだから」

「ふーん。まあ、僕から言わせてもらえばこのルートできているならこういう所で初見殺し入れたいけど...ねッ!って、危なっ!ほんとに来るのかよ...。」


ゆうくんが喋りながら、飛んできた矢を回避していた。コメントでは、

*『KnockLadder公式』なッ...!?あれを回避する...だとぉ!?

と、少年漫画でおなじみ少年ジャープで聞くようなセリフをコメントしていた。ごめんね、ノックラダー公式さん。

「うちのゆうくんがすいません」

「誰に謝ってるのー?」

公式の心を折ったお前が言うかー!と、内心荒れたのは此処だけの話。


一応時間を測っていたけど、ゆうくんは当然ながら黒猫のTA一位になっていた。記録は1時間12分4秒。今の所の一番の記録だったのが3時間5分57秒だったので、通常記録でこれを塗り替えることは不可能だろう。

其のことを言うと、「それでもさ、あの巫女さんは何だったんだろうね?僕が別ルートで行っていたら...あ、掃除しないルートね?それだったら、巫女さんが言っていたみたいになったのかなー?」とちょっとずれた回答を貰った。


...そして、今回の同時接続数はなんだかんだで6万人と今まで最多の記録をたたき出していた。その少し少ないところで、5.8万を記録したのは12月の10日に行ったボクの3回目の誕生日配信でのこと。...普通の配信に負けるのは悔しい所である。というか、なんでボクはこの日を誕生日にしたんだったっけ?なんだか頭に靄がかかっている様な、そんな気がする。もしかしたら、ボクがボクを『ナナイ』って呼んでいた時期に関係するのかな?

考えても答えは出ないままで、ボクはいつの間にか眠りに落ちた...。



...目を開けると、そこには見慣れない男女二人がいた。片方の姿は確かトーガとかいうどこぞの古代国家の衣服をきた大男で、もう片方は似たような服を着た、やや小さい男だった。

『む?...ああ、おきたか―――――よ』

大男がこちらを向くと、ボクに何かを言った。しかし、恐らく名前に当たる部分はノイズが入って一切聞き取れない状態になっていた。


「うん。おはようウァナル」

ボクの口は、勝手にそんな事を言っていた。そして小さい方の男に向き直ると、「タナトスも、おはよう」と言った。

タナトスと呼ばれたほうは、「どうも。今日はグレイムの所に助力を求めてきますが、前回は私も殺されましたからね。今回は、軍神としての彼に期待したいところです」などと言ってボクを撫でた。


「以前、貴方の代わりをしていた本物の神は『これ以上は、人は我々に危害を及ぼし始める。そのようなことなど有ってはならないのだが、万が一もあり得る』などと抜かして逃げましたからねぇ。奴は今どこで何をしているのか...」

遠い目をしたタナトスは、昔を懐かしむような顔をした。


「思えば、私たちをこの戦に誘ったのは奴でしたよ。人を争わせて、戦に次ぐ戦を起こしては神威を増そうではないか。人は死に、それに比して人は死して生まれ、他を滅さんと知を巡らせて新たな技をつける。それが呼ばれた元々の言葉でしたねぇ。そのうちウァナルを誘ってきて、そこからはさらに激化して...全く、賢い奴ですよ。ロキ・・は」

懐かしむように言ったタナトスの言葉に、何か引っかかる言葉があった。...いや、今ロキと言っていた気がする。


しかしやはり体の主導権は夢の中のボクに在るらしく、ボクは「ふーん。その、ロキとかいうのはすごい馬鹿なんだね。ここにいるだけで力が得られるのにさぁ?」と嘲笑した。

それにつられるように残りの二神も笑いだしたが...直後。空間にひびが入った。

そして、神が滅んでいく中...『いたぞ!殺せ!』などと言う人の姿が見えて...『ボク』の意識は、そこで途絶えた。

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