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4-8.陽光


「そんなことないわよ」


 北の方のフォローする。

 というか普段顔を見せないんだからそう簡単に見分けられるわけないだろ。


「その場で気付いたら止めるなり言葉を取り次ぐなりすればよかったのです」

「旦那様の悪戯はいつものことよ?」

「皆さんは慣れていらっしゃるでしょうが、私は旦那様のことを存じません」


 相手は女の子だし晴明殿も普通に気を遣ってたんだと思うけど椿の君はそれを信頼がないと思ったらしい。


「そういう奥様は吉平様のお声に気付かれていたでしょう」


 まじか俺は気付かなかったぞ。


「幼い頃から見ているのです。息子二人の声くらい聞き分けますよ」

「こりゃ参りましたね」


 たはーと額に手を当てる。お前は漫才師か。


「椿の君。私も吉昌だと思った。兄弟なら似るところもあるだろう?」


 だけど椿の君は堰切ったように泣き出してしまった。


「泣かせるんじゃないよ陽光」

「おどかした吉平兄者が悪いだろ」


 あぁ困った。でもこの事態になった大元は晴明殿か。


「そう泣かなくても、もうじき帰ってきますよ」

「兄者、変な期待させては」

「いいや?『青葉が落ちた頃に待ち人来る』と占いが出ててね」


 ほらと活けられた楓を見ると、一枚の青葉が落ちている。少しすると玄関の方から物音が聞こえて来た。本当に帰ってきたようだ。

 楓はそのために持ってきたのか。


「そんな試しあそばなくとも、予め教えてくださったらよかったのではなくて?」


 北の方は俺の感情の一部を代弁するように質問する。


「人に言ってしまうとそのようにいかない場合もございますし、私も自信がないのですよ。それでは私はこれで。陽光の式神も見たかったですがまた今度にしましょう」


 去り際、吉平が手招きをしてきたので俺はそれについて行き御簾の側まで行く。


「兄者どうしました……」

「昨晩のこと。後で話を聞かせてもらおうか」

「!?」


 その隙に吉平は御簾を潜って去っていった。


「いかがなさいました?」

「いいや……」


 いつの間にか後ろに立っていた北の方に声をかけられて気を取り直す。

 御簾の向こうは茜色に染まっており、ほどなくして反対側から二人分の衣擦れの音と足音が聞こえてきた。


「礼羅さん!」

「北の方!」


 黄緑色の服を着た礼羅も両膝を付いて御簾を潜ってきた。

 隠してた狐の耳はぴょこんと表に出てくる。よく見れば薄く化粧もしてる。まさか鉛白粉じゃないよなそれ……。


「よかった……椿も貴女を心配していたのです。何処に行かれてたのです?」

「えっと……」


 戸惑いながら甘える礼羅の顔が昨晩の顔と重なって少しだけもやっとする。


『手放すことは絶対に辞めてくださいまし』


 北の方の言いたいことは分かる。分かるけどなんだか腑に落ちない。


「礼羅」

「陽光!……っいたたたたた!?」 


 俺は礼羅の頬をつねったのだった。


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