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#6

□富士市・梅の並木道

  川沿いに一面梅の並木道が広がっている。

  剛士、並木道をヒタヒタ歩いて来る。

  全身びしょ濡れで顔色が悪い。

  お爺さんがランニングしてやって来る。

  お爺さん、剛士を見るなり、

お爺さん「昨夜は土砂降りでしたなぁ」

剛士「……」

お爺さん「その荷物、富士山登りに? まだ二月で寒いじゃろう。登るなら夏だ」

剛士「この先の温泉へ……」

お爺さん「温泉? はて、この先に温泉なんてあったかの」

剛士「え?」

  地図を開いて温泉マークを示し、

剛士「ここ、温泉地じゃあ……」

お爺さん「ああ、そこか。そこは去年に閉館したんじゃよ」

  剛士、愕然として、

剛士「そんな……」

  お爺さん、気の毒になって、

お爺さん「少し歩くが、先月オープンしたばかりの銭湯があったがの」

剛士「そこ、どこですか?」

お爺さん「地図じゃ説明しづらい。一緒に行くか、お兄さん?」

  にこりと微笑む。


□天然温泉・前

  剛士、お爺さんに何度もお辞儀をしている。

  お爺さん、笑顔で去って行く。


□同・浴場

  剛士、五右衛門風呂に入っている。

  幸福感に満ちた顔だ。

剛士M「神様はいるようです。あのまま閉館した温泉地へ向かっていたら、もう僕は立ち直れなかった」


□牛丼家・中

  剛士、牛丼特盛りを食べている。

  もの凄い勢いだ。


□箱根峠

  剛士、急な坂道を上って行く。

  その表情には笑みさえ浮かんでいる。

剛士M「人の苦しみを救う神様は、ひょっとしたら温かさと優しさを持った人なのかもしれません」

    ×    ×    ×

  山頂。

  剛士、巨大な石版に彫られた松尾芭蕉の俳句を見上げて、

剛士「霧、しぐれ。富士を見ぬ日こそ……面白き。俳聖芭蕉はここから富士山を見る事ができなかったのか」

 次第に笑みが零れて、

剛士「ハハハ……ハッハッハッハッハ……」

山頂から見える絶景の富士山。


□箱根の情景

  箱根駅伝ミュージアム。

    ×    ×    ×

  雲助だんご。

    ×    ×    ×

  箱根関所。

    ×    ×    ×

  芦ノ湖から見える富士山。


□樫の木坂

  剛士、急な坂道を下って行く。    

剛士M「ここ樫の木坂の険しき事、道中一番の難所なり。男、かくぞ詠みける。樫の木の坂こゆれば、どんぐりほどの涙こぼる」  

  激痛で顔が引き攣りながら、

剛士「うおおお……」

  がむしゃらに下って行く。


□そば屋

  剛士、とろろそば大盛りを食べる。

  凄まじい勢いだ。

  

□小田原・松林

  剛士、松林を歩いて行く。

  

□横浜・馬車通り

  レトロでお洒落な街並みだ。  

  剛士、馬車通りを歩いて行く。


□品川

  剛士、大黒天像にお参りする。     

    ×    ×    ×

  大都会のビルの隙間から東京タワーが見えてくる。

  剛士、東京タワーを眺める。

  

□日本橋

  剛士、日本橋に立つ。

  剛士、都会の摩天楼を見渡す。

  瞳を閉じて辺りの雑踏に耳を澄ます。

  

□メキシコ料理店

  剛士、教授と旦那さんと乾杯する。

教授「でも、大阪から東京まで歩いて来たなんで驚いたわ」

  旦那、カメラのモニターを見ながら、

旦那「凄いよ」

  風景が写っている。

剛士「いや……」

教授「どうして歩こうと思った?」

剛士「たぶん、確かめたかったんだと思います」

教授「確かめたかった?」

剛士「自分の力で最後までやり遂げられるか。これまでずっと中途半端だったので」

教授「そうなんだね。自分を変えたいって、そう思ったんだね」

  剛士、左膝を押さえて、

剛士「諦めなければ、やり遂げられる。この膝が応えてくれました。気持ちの持ち様なんだって」

教授「そうだね。この旅で一番得られたものは何?」

剛士「それは……人の温かさかもしれません。僕の方が感動する事が多かったんです。まるで、マラソンを走った時みたいに沿道の声援が支えてくれていたような。そんな旅でした」

  教授、微笑む。

  教授、バッグからお洒落な包みを出して、

教授「これね、東海道を歩いた記念にって思って」

  剛士に差し出す。

剛士「あ、有難うございます。開けていいですか?」

教授「ええ」

  剛士、包みを開く。

  黄色い花柄の手拭いだ。

教授「かまわぬ。ってブランドの手拭いでね。『鎌』と『輪』と『ぬ』で、かまわぬって読むの」

剛士「かまわぬ。なんか、この旅のテーマにピッタリですね。ははは……」

旦那「ははは……本当だねぇ」

  教授と旦那さんもつられて笑う。


□マラソン・スタート地点

  係員が選手達をスタート地点へ誘導している。

  剛士、黄色い花柄の布を腕に巻いている。

剛士M「これで終わりじゃない。これからスタート地点に立つんだ。一歩一歩が人生だから」

  辺りを見回す。

  沿道の声援が続いている。

  どこまでも、どこまでも。



                【END】


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