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#3

□初瀬街道

  山道が続く伊賀の街道だ。

  河原の水や緑は自然のまま美しい。

  剛士、歩いて来る。

剛士M「ここは、江戸時代に大阪や京都方面から伊勢神宮にお参りする人々が歩いて通っていたそうだ」

  街道に「初瀬街道」の標識がある。

  剛士、胸いっぱいに空気を吸い込んで、

剛士「空気うめぇ。ここを越えたら津市か」

  腕や脇を嗅いでみる。

剛士「……」

  苦い顔をして、

剛士「温泉、あるかな」

  黙々と歩いて行く。


□同・青山高原ハイキングコース

  剛士、急斜面の山道を登っていく。

  手には蜂蜜ボトルを持っていて、

剛士「蜂は、一日に百キロも飛ぶ。ブンブンブン、ハルチルガトルブルン」

  蜂蜜をグイグイ飲みながら歩んで行く。

    ×    ×    ×

  剛士、街道に座り込んでいる。

剛士「はぁ……どこまで行っても、山、山、山。伊賀の国は山ばかり。足腰強くなるわけだよ。忍者の里だもの……」

 ボーっと青山高原の大自然を眺めている。


□うどん屋・中

  剛士、特盛りの月見うどんを食べている。

  うどん玉が三玉のトリプルだ。

  剛士、ダシまで全て飲み干す。

  店員、ポカンと口を開けて見ている。


□津市・天然温泉・外(夜)

  剛士、看板を見上げて、

剛士「あった……」

  疲れ切っていて声も弱々しい。


□同・中・脱衣所(夜)

  剛士、鏡の自分に驚愕して思わず、

剛士「なんじゃコレ!?」

  唇と鼻が赤く腫れ上がっているのだ。

  剛士、唇から鼻へなぞりながら、

剛士「明太子に、トナカイになっちまった」

    ×    ×    ×

  剛士、上着を脱ぐ。

  リュックの跡がついて内出血している肩。

    ×    ×    ×

  剛士、足の下にタオルを敷く。

  そして水脹れの指に針を刺す。

剛士「つぅっ」

  痛みで顔を歪める。

      

□同・浴場(夜)

  満月の夜空だ。

  剛士、露天風呂に浸かっている。

  ボロボロの両足はタオルを巻いて湯船から出している。

剛士「ハァ……何やってんだろ」

  ボーっと満月を眺める。


□津駅・前

  電車が線路と走って行く。

  剛士、ボーっと電車を眺めている。

剛士「今じゃ東京まであっという間なのにね」

  トボトボ歩き出す。

剛士M「高校に入って感じた事は、周りが電車みたいに速かったって事だ。皆、流行の電車に乗って走って行く。俺はその電車に乗り遅れてしまった。世間では脱落者と呼ぶのかな?」

    ×    ×    ×

  回想、名門私立の教室。

  教師が黒板の難解な数式を説明している。

  生徒達が必死にノートに書き留めている。

剛士M「追いかけても、追いかけても、追いつかなくて。ついに立ち止まってしまった」

  振り返る生徒達が後部席の剛士を見る。

剛士M「でも、誰かが手を差し伸べてくれるわけでもなくて。ただ見つめるだけの視線」

    ×    ×    ×

  無人の駅のホーム。

  剛士、立ち尽くしている。

剛士M「乗り遅れた者は、この先どうしたらいい?」

  先の見えない線路を眺める。


□四日市

  剛士、工場地帯を歩いて行く。

  剛士、咳き込んで、

剛士「凄い煙だ。四日市ぜんそくが発症したのも満更じゃないぜ。教科書だけじゃこの辛さは分からなかったな」

  リュックからマスクを取り出してつける。

  白と赤の煙突が黙々と煙を出している。


□アイス店

  剛士、テーブルでアイスを食べている。

  二段盛りのレギュラーサイズだ。

  剛士、黙々と食べ続ける。


□木曽川大橋

  「木曽川大橋」の標識。

  交通網が激しい道路だ。

  剛士、地図を広げて、

剛士「もう少しで名古屋だ」

  ゆっくり踏み締めて渡って行く。

  

□ラブホテル・前

  外観はお城のようだ。

  駐車場には高級車がズラリと並んでいる。  

  剛士、高級車を眺めて、

剛士「平日の昼間から満車か。百年に一度の大不況っていうのに、あちらはいつの時代でも好景気なわけね……」

  落胆してホテルから離れて行く。

    ×    ×    ×

  無人の駅のホーム。

  剛士、線路に降りて歩き出す。

剛士M「なんか、ゆっくり歩んでみるのも悪くないなって思えた。今までは周りと競い合って突っ走って。見落として来たものがいっぱいあったんだと思うから」



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