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41話 さっさとおさまるとこおさまれよ

 入国する度に街で殿下と街を見て回る。それで終わろうと言い聞かせてもどこかで期待してる私がいて抑えがきかなくなりそうだ。


「サク、久しぶり」

「おう」


 アチェンディーテ公爵は一年ほど会っていなかっただけで随分と成長したように見えた。元々大人びていたのがさらに洗練されている。


「なんだよ」


 じっと見ていたら、じとっとした目で返された。こうしたところは変わらない。


「素敵な男性になられたなと思いまして」

「ふん」

「大人の男性になられたようですし、引く手あまたなのではと考えておりました」

「……大人」


 大人という単語に満更でもなさそうだった。まだステラモリス公爵との年齢差を気にしているのだろうか。でも結婚すると聞いてたから気にすることもないのよね? お互い了承してるわけだし。


「サク、貴族院はどう?」

「問題ねえよ」


 知っていることを復習してるだけだなと言うあたり、アチェンディーテ公爵の優秀さがうかがえる。テンプスモーベリ貴族院はウニバーシタス帝国の外、国境を越えた場所に位置する。ほぼ徒歩圏内の南側にグレース騎士学院があり、東にはイルミナルクス王国、西には未開の自然地帯に隣接していた。かつては小さな王国があったがそちらは滅び、今ではイルミナルクス王国が管轄している。近い内に国家連合の完全管轄になると発表されている公的な学舎だ。


「で? お前はいつ継ぐんだよ」

「父上が健在な内はまだだよ~。今回のは皇太子になるのを周知するだけ」


 ちらりと視線をこちらに向けすぐに殿下に戻る。


「イルミナルクスの後は貴族院に行くんだろ?」

「うん。サクは?」

「挨拶だけして帰るわ。クラスいないんじゃ意味ねえし」

「そう」

「最近貴族どもがうるせえし」


 どうやら社交でお近づきになりたい貴族が増えてきているらしい。国家連合設立の先頭に立っているのはアチェンディーテ公爵だ。当然周囲も気になるだろう。

 それにイルミナルクス王国とつながりを持ちたい貴族も多い。宥和政策ゆうわせいさくに舵をきった帝国が厚く信頼を置いているのだから尚更だ。


「俺にはクラスがいるってのに紹介ばかりきやがる」

「それは仕方ないよね~」


 社交でもアチェンディーテ公爵がステラモリス公爵と結婚することは有名だった。それでもお近づきになりたいと言って年頃の女性を紹介されるらしい。


「アチェンディーテ公爵もステラモリス公爵も大変ですね」

「まあクラスが嫌な思いしなきゃいいけど」

「あら」


 相変わらずステラモリス公爵が一番で好きでたまらない様子のアチェンディーテ公爵が見られて嬉しい。頬を赤くして可愛いらしいわ。近くにステラモリス公爵がいればよかったのに。


「本当ソミアってサクのこと気に入ってるよね」

「嫉妬みっともねえぞ」

「えー」


 アチェンディーテ公爵の後見人だからご縁があるだけだし、そもそもアチェンディーテ公爵はステラモリス公爵しか見ていない。そんな公爵だから可愛いくて、その姿に和んでいるだけなのだから嫉妬の要素がなにもないはずだ。

 苦笑する殿下といつも通りの顔の私を見た公爵は呆れたように息を吐いた。


「お前、頭いいのに馬鹿だな」

「公爵閣下?」


 なにも話してないのに私が考えてること丸分かりの上での発言のようだ。聡明さにも磨きがかかっているようね。


「全然分かってねえな?」

「そーなんだよー」

「まあ少し同情する」

「サク~」

「近寄んじゃねえ」


 殿下と公爵で意見が一致した。二人の意見が合う程仲が良ければそれでよしとしよう。


「おい、こいつガキだぞ? 誰かれ構わず嫉妬するんだからな」


 一国の皇太子を指差して言う台詞ではない。信頼関係があるから許されているといったところかしら。


「ガキはやめてよ~」

「ソミア、シレはお前の思ってる程できた男じゃねえって話だ」

「もう少し褒めて」


 この言われよう。確かにイルミナルクスの前に伺った国で嫉妬してると殿下自身も言っていた。

 同じ庭いじりを趣味に持つ王妃の時だ。あの時の殿下の対応よりは護衛騎士から王妃様のエスコートをスムーズに変えてきた王陛下の方が大人の対応だとは思う。護衛騎士への態度も柔らかかった。殿下は笑顔だけど不穏だったし声音も少し低かったもの。

 そういう部分のことをアチェンディーテ公爵は言っているのだろう。言葉遣いは荒いけど、それも殿下と公爵の中の良さがあって許されている。素晴らしいことだ。


「お二人とも仲がよろしいようで」

「げえ」

「ソミアってやっぱりサクに甘いよ」


 まあいいわとアチェンディーテ公爵が後頭部を雑に掻いた。なにか言いたそうだけど、彼にしては珍しくなにも言わない。


「お前らさっさとおさまるとこおさまれよ」

「公爵閣下?」

「お前ら面倒だわ……」


 額に手を当て困った様子でいる公爵に首を傾げた。私と殿下を心配してくれている。優しい性格そのまま成長しているようで安心した。

 そんな私の思考を読んでか、うげえと公爵が唸っていたけど、これもまたいつものことで、こういう外遊ばかりならいいのにと思ってしまった。

ソミアは本当にサクに甘いと思います(笑)。クラスとの結婚式とか喜んで参列するぐらい好きですよ。

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