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28話 恋愛相談

「なあ何がいいと思う?」

「女性が好むのは花や茶かと」

「花はユースティーツィアがしょっちゅう持ってくるし、茶は自前の薬草茶使ってるから、それ以外」

「身につけるもの……服や宝飾品でしょうか」


 アチェンディーテ公爵にステラモリス公爵への贈り物で相談されている。というよりも、ステラモリス公爵全般のことで相談されることが極端に増えた。近くにいる女性が私とユラレ伯爵令嬢だったからだ。

 ユラレ伯爵令嬢は騎士として多忙、私以外の侍女だとメルが仲良さそうなのだけどからかわれるのが嫌とのことだった。なので最近は神童と詠われる小さな男の子の恋愛相談に乗るのが仕事だ。


「最初にする贈り物ですし、髪飾りはいかがでしょう?」

「髪飾り……」

「ステラモリス公爵は髪をいつもそのままにされています。治癒や薬作りで結ばれてる時はありましたが、極普通の紐を使われていたので」

「……そうか」


 採用してくれそう。

 カタログを持ってきてくれる商人がいるのでとりつけるよう伝える。

 どういうものを選ぶかはアチェンディーテ公爵次第だ。こればかりはきちんと自分で選んだ方がいい。

 その方がステラモリス公爵も喜ぶだろうし。


「それ贈ったら少しは意識するかな」

「あら」

「……なんだよ」


 つい声が出てしまい、アチェンディーテ公爵に睨まれてしまった。だって可愛いことを言うものだから。

 若干六歳。神童と呼ばれているけど、恋をしてると年相応……いいえ、少しおませさんかもしれない。でも小さな公爵が一生懸命意中の人の気を引かせるために頑張っているのは可愛い以外の言葉がなかった。


「失礼しました。私であれば出来得る限りお力になります」

「……男が異性の髪をいじるのって気持ち悪い?」

「確かに社交としては好ましくありませんが、ステラモリス公爵に髪飾りをつけて差し上げる為であれば、この限りではないかと」

「……」


 じとっとした目が向けられる。

 ステラモリス公爵ならアチェンディーテ公爵が理由なく触っても許してしまうだろう。彼女は元々寛容だし、なにより傍から見ててもアチェンディーテ公爵を可愛がっている。アチェンディーテ公爵が望む好きではないけど、触るという点で考えれば優位だ。


「ステラモリス公爵はアチェンディーテ公爵に信頼を寄せているから嫌がられないと思いますよ」

「……そうか」


 可愛い。ステラモリス公爵が余程好きなんだわ。

 顔が緩みそうなのを力いれて阻止する。いくら子供相手とはいえ、相手は公爵閣下。御祖母様の教え通りにしないと。


「なあ、髪のまとめ方教えてくれよ」

「まとめ方?」

「今度選ぶ髪飾りに似合う髪型」


 帝都とか一緒に外に出る時に着飾ってやりたいとアチェンディーテ公爵が言う。なんて健気なのかしら。


「ええ、喜んで」

「おう」

「しかし結ぶ為にもう一人ほしいのですが……メルを呼んでもよろしいですか?」

「……分かった」


 少し嫌そうにしたけど、許してくれた。メルが軽口叩かないよう伝えると言うとアチェンディーテ公爵は頼むと短く返す。やっぱりメルみたいなタイプは少し苦手のようだ。


「では後日」

「おう」


 アチェンディーテ公爵が去ると見計らったかのように殿下が現れる。


「ソミア」

「殿下、結構前からいらしてましたね」

「まあね」


 なぜ出てこなかったのかきくと、アチェンディーテ公爵を気遣っているらしい。


「サク、恥ずかしがるから僕はいいかなあって」


 確かに私の隠せない反応に過敏だった。ステラモリス公爵への想いはあまり人に深く知られたくないのかもしれない。


「あ」

「どうしたの?」

「いいえ」


 まさか公爵の言っていた運命とはステラモリス公爵のこと?

 今はステラモリス公爵の名を奪われているけれど取り戻すことはできると聞いた。となると身分は問題ない。年の差は気にはしてるようだけどアチェンディーテ公爵自身は埋める気でいる。


「ソミアにもクラスにも懐いてくれてよかったよ」

「懐く?」

「僕は後見人でイグニス様のことを知ってたから受け入れてくれたみたいだけど、あのツンツン具合でこっち来て大丈夫かなって心配だったんだ」

「アチェンディーテ公爵閣下は素直で健気ですよ」


 私の健気の言葉に驚いていた。


「あんまりソミアに懐いてるのも嫉妬するなあ」

「子供相手に大人気ないです」

「分かってるよー。それにサクはクラスのことで頭いっぱいだから、そこまで焼きもち焼いてないし」

「はあ」


 殿下は少し躊躇った後、小さく囁いた。


「それに……ソミアとの子供ができたらあんな感じかなあなんて思って」


 言ってから口元を手で覆い「やっぱ今のなし」と目元を赤くして否定した。でも私も殿下とアチェンディーテ公爵が一緒にいるのを見て同じことを思ったからいいのでは。


「弟ではなかったのですか?」

「いやそこはさあ!」


 殿下の焦った姿に小さく笑ってしまう。いけない、最近本当弛んでいる。でも殿下が私の様子を見て微笑むから甘えていた。

 こんなに笑っていては御祖母様に怒られてしまうわね。

ツンデレショタっ子書くのたんのしいいいいい(落ち着け)。本編でもご活躍の髪飾りですぜ(´ρ`)おいしいいい(落ち着け)。でもこういうワンクッションがあることによって、ソミアの鉄壁が崩れるのですよ。それで殿下に対して笑ってしまう。この好循環!(落ち着け)サク自分の為にしか動いてないけど結果恋のキューピッドしてるんですねえ。

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