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ガラ!
廊下をまっすぐ走る。
ガッ、ドタ!先頭を走っていたりくとが何かにつまずいた。
「「いってぇ。」」
「ちょっと大丈夫?」
梨乃が手を差し伸べる。
「いってぇな。どこ見て走ってるんだよ。廊下は走るなって言われなかったのかよ。」
「「「「「「「すみません!!!」」」」」」」
びっくりして謝る。
「え?」
「どこ?」
「誰?」
声の主を探すけれど、目の前にうずくまっているのは、柴犬?である。
「わんちゃん?」
「犬?」
「だーれが犬だよ。久しぶりに出てみたら、相変わらずガキは失礼だな。」
犬は背を向けたままどこかにいってしまった。
一瞬見えた顔は人間のような気がした。
「見てない!」
私たちは見ていないふりをした。
「しょ、職員室行こうか。」
「うん。」
わたしたちは、職員室にむかった。
ガラっ
「しつれいします」
みんな小声になってしまう。そこには松田先生がいた。やっぱり八重歯が光っている。
「おう!どうしたんだ。」
「あのー。学校がなんか変なんです。」
「行きたい場所に行けないんです。」
「何言ってるんだ?」
「大玉が追いかけてきたんです。」
「分数のテストを受けさせられたんです。」
「校歌を歌わされたんです。」
「はははっ。先生をからかおうとしても無駄だぞ。」
「嘘じゃないんです。」
「何言ってるんだ。もう、先生も帰るぞ!帰れ!帰れ!」
「帰れるなら帰ります!」
ガラ
奥のドアが開いた。中からちょっと小柄な優しそうな先生がでてきた。
「松田先生、まだいたのかい?」
「校長先生、この子たちが変なこと言って帰してくれないんですよー」
「ははは、この子たちは僕が相手するから、君は帰りなさい。」
「いいんですか?じゃあよろしくお願いします。お先に失礼します。」
「え?待って!おいてかないで!」
「まあまあ、みんなこっちにおいで。お菓子でも食べようじゃないか。みんなが卒業する時には、校長室で給食を食べることにしているんだ。ちょっと早めに入れてあげるよ。」
「え?ちょっと力つよっ」
私たちは校長室に引きずり込まれた。
校長室には、たくさんのおじさんやおばさんの写真が飾ってある。
「この写真はね、代々の校長先生の写真だよ。」
壁には、150人ぐらいの子供たちが集合している写真もあった。
「これはね、この学校が建てられた時の写真なんだ。この学校はね、みんなが羽ばたけるようにと鳥の形なんだ。」
「鳥っていうけどさ、羽片方ないじゃん。」
りくとが突っ込む。
「そうなんだよ。建てたときは、すぐに子供たちが増えて、すぐに鳥の形になるはずだったのに。そうやってデザインしたんだ。初代校長がね。」
校長先生はニコニコしているが、なんだか笑顔がさみしそうだ。
私と絆以外の5人は不思議そうな顔してる。
「ねえ、おじさん、誰?」
「おいっ」
「りくと!」
つかさくんと彰斗が急いでりくとの口をふさごうとする。
隣にいた、綾が、上を見上げて固まった。
「ねえ、ねえ。あれ見て。」
うえを見ると、初代校長の写真には、目の前のおじさんがうつっていた。
「鳥の形になるようにデザインしたのになあ。いつまでも飛べないんだ。だって、羽が片方しかないからね。」
「ぎゃー!」
私たちは、校長室を飛び出した。