10
中庭についた。中庭の木が光っていた。いや、木ではなく、木の周りに無数の光が浮いている。
「きれー」
梨乃が言った。その中の光の一つがふわふわと近づいてくる。その光の中には羽の生えた人がいた。
「妖精?」
そう。妖精に見える。
「妖精なのかな?僕たちは鳥だよ。」
その妖精が喋った。
「鳥?」
彰斗が答える。
「そう。ぼくたちこの木に住んでいる鳥なんだ。君たちをここに呼んだのは、僕たちをいつも守ってくれているこの鳥が困っているから助けてほしかったんだ。」
「この鳥?」
「うん。この鳥だよ」
学校が大きく揺れた。
「きゃっ」
「わっ」
私たちはしゃがみこむ。
「びっくりさせてごめんね。この学校は鳥なんだ。でも何年たっても何年たっても片方の羽ができなくて。かわいそうで。どうにかしてくれないかな?」
「どうにか?」
「そう。君たちには羽を作ってほしいんだ。」
「僕たち建物なんて建てられないよ。」
「それはわかっているよ。そのまま飛ぶんじゃないんだ。そこから魂だけ抜けて浮くんだ。だから、形さえあればいいんだ。」
「書けばいいってこと?」
「うん。」
「この学校にあるものを使って羽を書いてほしい。そうすれば君たちを出してあげるよ。」
「わかった。」
「みんな、とりあえず、そこに行ってみよう。どうやって書けばいいのかわからないし。見てみよう」
私たちはそこに向かうことにした。