転校
見切り発車です。目標は完結です。
私は香耶、小学5年生。
お母さんが、何年間か海外に出張することになったので、お母さんの故郷の猪名川町で暮らすことになった。
新しく通う学校は、学年で一クラスずつしかない田舎の学校でみんな知り合いだろうから、ちょっと不安。ちゃんと友達できるかな。
「それでは、9月からよろしくお願いいたします。」
お母さんが四月から担任の先生になる田先生に挨拶している。白くてきれいな学校だけど、春休み中なので、校舎の中は静まりかえっている。外からは少年野球の声がする。蝉の声がうるさい。こんなにたくさんの声がするんだなとしみじみ思った。
「水本さん、9月から一緒に頑張りましょうね。」松田先生は、八重歯を光らせて微笑んでくれる。その微笑みがちょっと怖いと思ったのは内緒だ。
校舎を出て、校舎をぐるっとまわって駐車場までの道を歩く。校舎の入り口から駐車場に行くには、少年野球をしている運動場の前を通るか、校舎をぐるっと回るしかないそうだ。
―変な形の学校。―
「上から見ると鳥の形に見えるらしいよ。」
「へー。」
じゃあ、ここは鳥の羽の先っぽなのかな。鳥の羽の先をまわると途端に蝉の声も遠くなった。少年野球の声がかすかに聞こえる程度だ。さっきまで日差しがじりじりとして痛いほどだったのに今は肌寒く感じる。あれは何だろう。少し離れたところに建物が見えた。
「香耶、どうしたの?」
「ううん。なんでもない。」
とても気になったが、またいつでも来れると思って帰ることにした。