第8話 女の結託とテンプレデート前編
8話目、後少しで十連です。
俺は部屋に戻った後、少し横になるつもりが寝てしまったようだった。
「風呂場は空いてるかな?」
風呂に入ってリフレッシュしたいと思って着替えを持ってリビングの方に向かうと、
「凄くいいお湯だったね~♪」
「戦闘用の宇宙船の中が客船よりも豪華だとは・・・堪能させてもらった。」
「いつぶりかしら?湯船に浸かるのは・・・」
「お母さん、考えちゃダメだよ、悪いのはアイツらだし・・・でも、気持ち良かった。」
少し拐った奴に対してエルフ親子が殺意を抱いているが、全員が風呂上がりの良い匂いをさせている。
「みんな、一緒に風呂に入ったのか?」
俺がそう聞くと、
「うん、トオ君も今からお風呂?」
カエデがそう答えるので、俺も風呂に入ってくる事を伝えると、
「あうあう、私が入った後に・・・」
「アリア?大丈夫か?」
「平気よ、トオ君はさっさと入ってらっしゃい、ご飯もカエデちゃんと用意しておくから。」
「あ、はい。」
そう言われたので俺は素直に風呂に入りに行った。
「アリアは結構ムッツリね?」
アルミスの言葉にアリアは顔を赤くする。
「あぅ~・・・だって・・・」
「アリアちゃん、トオ君の事直視出来てないから丸分かりだよね。」
カエデはアリアのウブなところをつつき、
「アリア、襲うか襲われるかは早めにね?お母さんが手引きしてあげるから。」
「「メリアさんは何を教えているの!?」」
メリアが娘に謎の指導をしている事をカエデとアルミスは二人でツッコミを入れた。
俺が風呂場に向かった後も女性達は賑やかだった。
俺は風呂場で体を洗って湯船に浸かると、
「・・・なんというか、女の子の良い匂いがするな。」
なので、とても落ち着かない。
せっかく足が伸ばせるお風呂なのに、これでは少し損をしている気分だ。
「・・・カエデに今夜も相手をして貰おう。」
そう考えて俺は風呂から上がった。
風呂から上がるとしっかりとご飯が用意されていた。
「ほら、ご飯出来てるから座って?」
メリアさんがご飯を用意してくれたようだ。
カエデとアルミスはなぜか戦慄しているようだ。
「・・・どうした?二人とも?」
「ううん、何でもないよ?」
「そうだな、ただ経験値の違いを思い知っただけだ・・・」
俺は何の事か分からず首を捻ると、
「多分、トオ様はわからないと思いますから、食事を暖かい内に食べた方がいいですよ。」
と、アリアが言うので俺はご飯を食べる事にした。
「今日のメニューは、白米にサバ焼き?に味噌汁?と、お肉の野菜炒めか?」
「トオ君、妖精食が好みなんでしょう?」
「妖精食?」
「あら?知らない?この白いお米と魚や野菜の炒めものなんかは、エルフやドワーフしか作って食べたりしないのよ。」
メリアがそう説明すると、
「エルフもドワーフもお酒が大好きな種族で美味しいお酒を作ることが出来るお米をそれぞれ母星やコロニーで作物として育てているのですよ。」
アリアがそう補足した。
「だから、白米に合う食事メニューの事を妖精食と言われているのだよ。」
そうアルミスが締めくくった。
「まさか、日本酒がエルフやドワーフのソウルドリンクの一つになっているとは・・・」
俺がそう呟くと、
「その、日本というのは二人の故郷かい?」
アルミスが遠慮がちに尋ねる。
俺とカエデはお互いに頷いて、
「確かに俺達の生まれ故郷だよ、どこにある星かはちょっとわからないけどな・・・」
「そのあたりの説明をしても良いのだけど、正直信じられる話ではないと思うわ、それでも聞く?」
俺とカエデの言葉に三人は、
「私達は既に同じ船の仲間だろう?そういう水臭い事は言いっ子無しだ。」
「私達親子とて同じです。恩人に報いる事が出来ない程恩知らずではありません。」
「だから、教えてくださいトオ様とカエデさんの事を・・・」
アルミス、メリア、アリアの順に励まされた俺とカエデは素直に自分達の生い立ちを教えることにした。
「なるほど、ゲームの世界か・・・その、ステータスとやらは今は見れないのかい?」
「それが見れたらここはゲームの中だと思えるのだけど一切見れないんだよな。でも、アーツだけではなくスキルを使えるからある程度ゲームのステータスを引き継いでいるのは間違いない。」
「私はまだ物造りをしてないからどこまで使えるかはちょっとわからないけど、トオ君がスキルをそこまで使えたとなると、私も結構使えると考えていいと思う。」
アルミスが俺とカエデのスキルやステータスの事を検証し、能力的なものから俺達の存在について考え、
「しかし、地球ですか・・・蒼き星という事ですが、まだお二人の話だと宇宙進出は成されていないと・・・」
「お母さん、精霊の伝承に近い話がなかったっけ?」
「精霊の伝承?」
「どんな話なんですか?」
メリアさんが地球の話を聞いて、宇宙進出をされていない文明レベルだと知って悩んでいると、アリアがなにやら心当たりがあるようだ。
「精霊の伝承はエルフとドワーフで伝わっている伝承で双方の生まれ故郷について語られていると言われています。」
メリアはひとつ咳払いをして、
「その星は蒼き星、エルフとドワーフの生まれ故郷なり、科学を究め、魔法を作り、大いなる宇宙に進出した者達こそが我らエルフとドワーフの祖先なり、なれど、その星は封じられし星、大いなる災いを封じる棺となり、長き時の眠りにつく。」
そう詠いきり、メリアが更に一言、
「これは私達エルフに伝わる詩で、創生録の一節です。」
「大いなる災いが何かはわからないのですが、エルフとドワーフのお酒も元々はこの蒼き星で作られていた物の一つだと言われています。」
「酒造系はエルフとドワーフが独占して作っているからね、他のメーカーが太刀打ち出来ないくらいにね。」
アリアとアルミスがそう補足して、答えるので、俺はカエデに、
「地球はあるっぽいけど、下手に探すのは危なそうだから、適当に冒険と傭兵稼業で稼ぎながら旅をしないか?」
「そうだね、とりあえずエルフとドワーフの母星には行ってみるとして、探すのはその後に決めようか。」
と、地球の情報は集めるが、地球を探すのは一旦中止する事にした。
星一個まるごと封印するような奴をわざわざ起こしに行くような事はしない。
「とりあえず超大型レイドになるよな、地球一つ分のデカさだと。」
「そうだね、小型が一杯なのか、超大型が一匹なのかはわからないけどね。仮に私のティタンがいても無理だね。」
カエデの言うティタンとはゲーム内でのカエデの愛機で大型可変型スペースギアである。
一個大隊ぐらいなら真っ正面からケンカが出来るが、地球一個分の大きさだと、それでも多分無理だろう。
「まぁ、そういう訳で私とトオ君は稀人って奴になるのかな?」
「エルフとドワーフの伝承に地球っぽい話があるのは驚いたな・・・」
俺達の様子にアルミスが、
「二人はとりあえず、今の伝承を調べてみるという事で構わないか?」
「そうだね、それでいいよ。」
そしたら、メリアが、
「だとしたら、後はトオ君をどう分け合うか今のうちに話合いましょうか?」
と、爆弾を落とした。
「え!?ちょっ!?」
俺は想定外過ぎて、言葉が出なかった。
「・・・メリアさんはトオ君から離れる気はないと?」
「ないわ、私は彼が気に入ったの。まぁ、こんな未亡人だとちょっとアレかもしれないけど・・・」
「いや、メリアさんは綺麗ですけど・・・ってそうじゃなくて!?」
パニックな俺を他所にカエデが意見を促し、尚も話は進む。
「でも、ちゃんと避妊の用意が出来るまではダメですよ。まだ船医もいないですし。」
カエデが俺の意見も聞かずそう言うので、俺は口をパクパクさせながら心の中でそうじゃなくて!?とツッコミをいれ、
「避妊の用意が出来たら良いんですよね?早く届くと良いなぁ~・・・」
アリアの爆弾発言で更に思考が止まる俺にアルミスが、
「私はもう避妊用の薬も用意してあるから、後はカエデとの予定を組むだけだ。」
諦めろと言わんばかりに事実を突きつける。
「・・・君たち、複数でも気にしないの?」
漸く俺が意見を、というか疑問を聞くと、
「トオ君はいい男だから仕方ないかなぁ~?でも、調子に乗って変なのに引っ掛かったらダメだからね?」
カエデが恐ろしく寛容に答えた、ダメなところはダメと言うがそんな怖い事を言うなら最初から許可しないで欲しいのだが、
「・・・はい、がんばります。」
と俺には言えなかった。
「それに、今日はトオ君が満足出来るまで好きにして良いからね?」
困惑している俺は今のカエデの言葉を聞いて少しフリーズした後、
「わかった、俺は頑張って受け止めるよ。・・・とりあえず、カエデにもちゃんと責任とってもらうから。」
とりあえず、勝手に許可を出してしまったカエデにお仕置きをするため、カエデにそう言ってからお姫様抱っこでカエデを抱き上げ、
「その、みんなお先にね?」
「頑張っておいで!」
アルミスがカエデに一言かけたら、トオはそのままカエデを自分の部屋に連れていった。
その後、アルミス達は、
「・・・今日は仕方ないか、というかアレを一番最初に受けるのはちょっと勇気が・・・」
「・・・凄いわね~♪」
「あうあう、私も・・・」
「とりあえず、こっちも順番を決めようか?」
かなり興奮していたトオのモノを目の当たりにして三者三様の反応をしながら、
「私達も傭兵ギルドに登録しないといけないし、後、弓を用意しないといけないわね?」
「それは、元々いたコロニーに行ってからだね。自由航行権を発行しないといけないし。」
「二人で百万ガネーはかかりますよね?」
「大丈夫じゃないかい?途中で宙賊を狩っていけば百万ガネーくらいはあっという間に貯まるさ。」
今後の日程を話し合いながら、決めていった。
翌朝、案の定カエデは動けなくなった。
「・・・ごめん、カエデ。手加減出来なくて・・・」
「良いの、嬉しかったし、その、気持ち良かったから・・・ただ、避妊しないと確実に妊娠してるよう。」
カエデは少し顔を赤くしながら首を振って、その後ゴニョゴニョと何かを呟いた。
よく聞こえなかった俺は、
「どうした?」
と聞いたが、
「何でもないよ!?それより、アルミス達と傭兵ギルドに行って情報の収集をお願いね?」
カエデがそう言うので、アルミスが、
「わかったよ、ついでにフードカートリッジとか買ってくるからね。後は適当におやつになりそうな物も買ってくるよ。」
と言ったので俺はアルミスとコロニーに出た。
その後、カエデとメリアとアリアは、
「カエデちゃん、大丈夫?」
「そんなに凄かったんですか?」
「・・・こっちの世界に来て、今まで毎日していたのが、トオ君が凄い我慢していたんだなって思い知りました。・・・あんな、あんなに獣だなんて・・・」
そんなカエデの様子を見た二人は、
「・・・そんなに凄いんだ?どうしましょう、アリアの兄弟が簡単に出来そうだわ・・・エルフは子供が出来にくいのに・・・」
「私も、あんな風に・・・あう~・・・」
自分の順番が来るのを悶えながら待っていた。
傭兵ギルドに向かう途中でアルミスが、
「トオはこうどういった女の子が好みなんだい?」
と質問してくるので、
「言葉にすると難しいな、とりあえず頑張り屋さんかな、外見は特にこういうのが好みってモノはないな。後は、その子らしさがあれば良いと思うぞ?」
俺がそう言うと、
「本当かい?私、あの中で胸が小さいのだけど・・・」
アルミスは小さい声でそう言ったが、それは俺に聞こえていて、
「アルミスのも十分魅力的だよ、そもそもアルミスって立ち振舞いが綺麗だよな。」
と褒めると、
「そうかな?」
アルミスは少し信じきれていない表情でいるが、俺は更に、
「斥候というかスカウト系の役割をこなしているからか、歩き方とかこう猫科の動物みたいでスマートに見えるぞ。」
そう言われたアルミスは顔が真っ赤になって、
「あ、ありがとう・・・」
凄く可愛かったのでそのまま手を繋いで、傭兵ギルドまで歩いてきた。
「ここからは手を離していいから・・・帰りに繋いでもらうから・・・」
と言ったアルミスに萌えない訳がなかった。
昨日は驚いたが、彼女達がそれで幸せなら俺はその為に努力をするべきだろう。
そう腹を括って、俺は彼女の手を繋いだままギルドの中に入った。
「あっ、トオ、さすがに恥ずかしい・・・」
顔を赤くするアルミスを可愛く思いながら、俺は受付に向かい、
「パーティー宇宙の勇士達のトオだ。昨日の件の情報を聞きたくて来たのと、後は、宙賊狩りに行って良いか聞きたくて来たんだ。」
アルミスの手を繋いだまま、俺は受付に用件を言うと、
「その件はギルドマスターに聞かないと答えられないので少々お待ちくださいませ。」
そう言って受付が連絡をとり始めると、後ろから、
「おい、お前、影女に御執心みたいだけど、どこのどいつだ?」
「あ?なんだ、お前?」
よくわからない雑魚臭のひどい奴が声をかけてきた。
「俺はCランクのゲルド様だ、てめえのランクはいくつなんだ?」
「Dだよ、まだなって一月も経っていないからな。」
鬱陶しいので適当に答えたらますます調子に乗って、
「はっ!?ただの新人がBランクの女におんぶに抱っこ・・・むがっ!?」
「少し、五月蝿い・・・」
少しイライラしてきたので顔面を握り締めた。
「ごっ!?・・・はなっ!?むがぁぁぁぁ!?」
俺の腕を振りほどけず、体を持ち上げられて、顔面に指がビキビキとめり込んでいく。
「俺をバカにするのは結構、だが彼女にふざけた事を言うならなら潰す!!」
そう言って俺は手を離した、
「・・・けひ!?、調子に乗っ・・・・ぶらぁ!?」
後、更に調子こいているようなので腹に蹴りを入れた。
そしたら、入り口の先まで飛んでいった。
「ちゃんと飯を食わないからイライラするんだよ、飯を食ってから仕事に来いよ。」
「・・・いや、そう言う事ではないと思うが、庇ってくれてありがとうトオ♡」
ときめいているアルミスにお礼を言われて、手を繋ぐどころか、彼女は大胆にも体に抱きついてきた。
「・・・アルミス、これじゃ歩けないよ?」
「ギルドマスターからの連絡が来るまでこのままで♡」
受付の背後から黒いオーラが立ち上ぼり始めたが、幸い、すぐに連絡がついた。
結論から言うと調査はまだ始まったばかりなので、報告するような事はないと言われたのと、宙賊を狩りに行くのは許可する旨が伝えられた。
「わかった、じゃあ俺達はこれで・・・」
「ちょっと待てやぁ!?」
失礼すると言おうとしたら、さっきの雑魚が仲間を連れてきたようだ。
仕方ないので俺は受付に、
「確か訓練場みたいな所があるって話だよな?今すぐ貸して貰えるか?30分くらい。」
俺は受付に冷静にそう聞くと、
「は、はい!?すぐに貸し出せます!」
受付は何かを感じたのか即答した。
「それじゃ、先輩少し指導をしてくれよ?」
「上等だ、いくぞお前ら!!」
俺の挑発を聞いてぞろぞろと、俺に後に続いてきて、訓練場の中で対峙して、
「てめえ、さっきみたいには・・・」
「トオ~!頑張って~♡」
「・・・ぶっ殺す!」
一人、というか仲間と揃って勝手にヒートアップしている雑魚メンバーを見て、
「さっさと終わらせよう・・・」
俺は怒るのもアホらしくなったので、とっとと殴って終わらせる事にした。
開始準備のブザーが鳴ってから、合図が鳴り響くと、俺はまず一番手前の青い雑魚の顎にアッパーを食らわせて、
「げぎゃっ!?」
「壱!」
次は右側の黄色の雑魚をワンツーで沈め、
「ぶべしっ!?」
「弐!」
今度は反対の左側の緑と白の雑魚に蹴りをぶちこむ。
「ざべし!?」「あびばぁ!?」
「参、肆!!」
ぶっ飛んで壁に叩きつけられた雑魚に見向きもせず、主犯の赤い雑魚の傍にいた黒い雑魚に、
「(剛拳擊)!!」
「・・・・・かひゅ!?」
強力なボディブローをかまして、悲鳴をあげることもせず、崩れ落ちる。
「これで、伍!」
最後の標的に視線を向けると、
「ひっ!?く、くそ!こうなりゃあ殺傷モードで・・・」
「遅い、(百撃襲)!!」
赤い雑魚が二度と喚けないように、殴って蹴りまくった。
「あだだだだだだだだだだだだぎゃあ!?!?!?」
「これで、陸!っと、3分もかかってないな。」
宙を飛んだ雑魚を無視して俺はアルミスの所に行って、
「受付に後始末を言って、買い物して帰ろうか。」
「わかった、トオ、格好良かった♡」
「ありがとうアルミス。」
と、腕を組んで、帰りに寄り道デートを楽しみながら帰った。
後日、この傭兵達はギルド内の規律に反したとして研修の再受講を言い渡された上に治療費と訓練場の貸付料を自腹で払わせられた。
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