ガチャ
遠い昔、石と石が衝突して小さな星が誕生した。石の破片からはやがて衛星が生まれ、他方からは光を放つ恒星が発生した。やがてとても長い時間を経て、ただの石はアステロイドを形成したのである。
そしてどういうわけか、小さな星には光や水、空気が揃ってしまったために、生命がまた誕生することとなった。生命は成長と絶滅を繰り返すうちにどんどんと高度化、複雑化していき、やがて驚くべき知能をもつ種が生まれた。種は瞬く間にその星を覆い尽くし、他の種を統べるほどの力を得るようになった。またその星の構造を理解し、姿形を変えるまでに至ったのである。
しかし、結局のところその種は愚かだったと言うべきほかなかった。他の種を統べるほどの力は互いを傷つけ合う為に発展し、海や空を通じて火矢が飛び交うようになった。姿形の変わった星は毒の雨が降るようになり、結果として己が身を傷つけるようになってしまったのである。
種が自身の愚かさを嫌が応でも認識しなければならなくなり、何にもならないことを考え始めるようになったある日のことであった。突如空から石が降ってきて、数秒も経たぬうちに全ての生命は絶滅してしまった。驚くべき知能も、それが今まで築いてきた力や文化も、変わった姿形の星とともに例外なく全て石に戻ってしまったのである。
なぜこんなことが起こったのかといえば、このあたり一帯を支配していた神の仕業である。というのも、この神の間で流行しているゲームがあった。
石と石を衝突させれば星が生まれる。あとは知能を持つ種が誕生するまで待ち、生まれればプレイヤー同士でそれを戦わせる、というものである。この宇宙ではそのような育成を何回も繰り返してきたため、この星も別に特別なものではなかった。
ゲームは多くの熱中者を生み、元となる石を課金する者も多いのだが、この神はそれらをしない方のプレイヤーであった為、運営のお詫びをただ待つだけであった。次の生命が誕生するのは、また遠くの未来になりそうである。
神はまた石をぶつけはじめた。先程の星はもう存在しないが、この宇宙はそうそうサービス終了しそうにない。