表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。

残念聖女シリーズ

聖女ですか? いえ痴女でした。

作者: 獅堂 凛

初投稿の短編です。至らない点多々あるとは思いますが、生暖かい目でスルーしていただけると幸いです。

とある国の王城、その中の大広間には光があふれていた。


そして光が収まると、広間の中心には一人の少女がいた。


「おお! 成功だ!」

「女性ということは、聖女様だ!」

「よかった、これでこの世界は救われる!」


周囲がざわめく中、一人の女性が少女へと近づいていった。


「聖女様。私はこの国の第二王女、マーリンと申します。どうか、どうかこの世界を救うためにお力をお貸しくださいませ」


しかし、少女はすぐに返事をすることなく、周囲を見回してから


「ふむ、我が手を借りたいというのであれば吝かではない。だが、対価はどうするのだ? また、元の世界には戻れるのであろうな?」


「はい、対価につきましては我々のできうる範囲で望むままにさせていただくつもりです。また、魔王を倒すか、この魔方陣に大量の魔力を注ぎ込めば元の世界にお戻しすることは可能です」


「なるほど。あいわかった、その願い受けてやろう。だが、まずは食事だ。如何せん、ここのところ満足のいく食事をとれておらぬでな」


「かしこまりました! すぐに食事の手配を! 聖女様におかれましては、別室にてお着替えなどいかがでしょうか?」


「否。我はこの格好が気に入っている。このままでよい」


「かしこまりました。それではお食事の準備ができるまで、こちらにてお茶などいかがでしょうか」


「うむ、よきに計らうがよい」


「はい。それではこちらへどうぞ」


マーリンとしては、可能なら着替えさせたかったのだが、気に入っていると言われては仕方がなかった。

そう。

何というか。

聖女様、服装がどう見てもメイド服を破廉恥に改造したものにしか見えません!

スカートは膝までしかなく、おへそも肩も見えていて、胸の谷間も強調している、でもベースはメイド服!

何でしょうか? いかがわしいお店の従業員だったのでしょうか?

話し方もすごく上から目線でしたし・・・

あ、いえ、上から目線は全然問題ありませんが、ただ、服装・・・


そんなことを思いながら客間に案内し、席に着いていただきました。

そして、お菓子と紅茶の準備をメイドに指示したあと、聖女の向かいの席に座ろうとしたとき、


えっ、えっ? えええっ???


そう、聖女様。

履いていないのです。

何がとは言えませんが、履いていないのです。

足を組んで座っているから、よく見えました。

何がとは言えませんが。


えっ、えっ? えええっ???


そうしてお菓子の準備ができ、紅茶が淹れ終わるまで放心していたマーリンは、しかし何とか復帰し、


「あ、あの、聖女様・・・の世界では、そのような服装が一般的なのでしょうか?」


「ふむ? 服装? ああ、一般的かどうかは知らぬが、このような服装の者は多々いるな」


「そ、そうですか・・・。あ、いえ、もちろん、こちらの服装を強要することはございません。聖女様の好きな服装で問題ございません」


「そうか。それは助かる。この服装は動きやすいのでな」


というか、そんな服装と状態で動き回ったら、大事故案件です!!!

そもそも、そんな服装の人間がたくさんいるとか、どれほど恐ろしい世界なのでしょうか!!!

きっと風紀とか風紀とか風紀とかこの世界とは根本的に違うのでしょうか・・・


そうして、リスのようにお菓子を頬張る聖女様を見ながら、とんでも思考を巡らせるマーリンであった。





コンコン


「失礼いたします。お食事の準備が整いました」


「そうですか。聖女様、お食事の会場までご案内させていただきます」


「うむ、たのむ」


「はい。ではこちらへ・・・」


そう案内しながら、私は聖女様の後ろにいるメイド2人に目線で合図を送った。

『聖女様 後ろ 守れ 隙間 作るな』

合図を受けたメイドたちはすぐに準備をし、聖女様とともに部屋を出る頃には聖女様の後ろにぴったりと張り付いてくれた。

よし、これでいたずらな風が吹いても事故は防げるはず。

ようやく私の心は落ち着きました。


ええ。


食事が始まるまでは。











「まずい」


会場内の空気が凍りました。

誰も動けません。

聖女様、一口目の感想がこれです。

もきゅもきゅと食べ続ける聖女様以外、しばらく誰も動けませんでした。


が、


「申し訳ございません! すぐに作り直しを!」


何とか正気に戻った私は料理長に指示を飛ばそうとします。


「うむ、できればもっとコンガリとガツンとしていると良いな」


「料理長! もっとコンガリと、ガツンと、です!」


「か、かしこまりました! すぐに作り直しいたします」


そうして、”食べ続ける”聖女様の意見を聞きながら何度も何度も作り直した結果・・・


「うむ、これだ! これぞ至高・・・!」


ついに聖女様に満足いただける料理をお出しすることができました。

ええ、正直アレを料理と言うにはかなりの勇気がいりますが。

あ、料理長、倒れた。

仕方ないですよね。

アレを至高と言われたら。

だってアレ、塊肉を表面焦げるまで焼いて塩降っただけですから。

正直、野営の時の干し肉の方がおいしそうです。

こうして、山海の珍味を集め技術の粋をこらしたフルコースに満ち溢れた料理会場は、最終的に肉をこんがり焼き焦がすだけの場所へとなったのでした。

というか聖女様、まずいと言いながらも出た料理全部食べてましたよね?

でもスタイルが一切変わっていない・・・

うらやましい!!!!!!


こほん。


こうして、満足のいく食事を取られた聖女様は、世界を滅ぼそうとしている魔王を退治するための旅に出てくださることになりました。

そして、聖女様の『食事係兼後始末係』として、私マーリンと2人のメイドが付き添うことになりました。

え、騎士? 魔法使い? 回復役?

そんなものはおりません。

騎士は、騎士団総出にも関わらず、木の枝でボコボコにされた時点で全員同行を辞退されました。

魔法使いは、彼らの最大魔法より遙かに破壊力のある魔法?を片手間に放り投げているのを見て全員辞退されました。

回復役は、聖女様の食事内容についていけず、全員辞退されました。

つまり、

聖女、後始末係、食事係、食事係。

これが魔王討伐メンバーです!


ははは!


ははは・・・


はぁ。











こうして、魔王討伐の旅に出ること3日。

ついに魔王城へと到達しました。

ええ。

到達しちゃいました。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・・


道中にあるはずの龍のすむ山脈や、海獣住まう大河や、魔王軍侵攻軍駐屯地。

どこにいったのでしょうか?

そもそも、魔王城と我が国の王都は早馬でも3ヵ月かかるはずなのに。

聖女様がどこからか出した乗り物に乗っていたらあっという間でした。

もちろん、聖女様以外は搭乗中気を失っていたので、道中がどうなっていたのかはわかりません。


ええ。


問題が起きていたとしても、わからない以上対応できないので、後始末係としましては問題ないことを願っています。


そうして、ついに魔王城へと乗り込むことになりました。


それからの光景は、もう、地獄と呼べるものでした。

あの光景は、生涯忘れることはできないでしょう。

ええ。

魔族があそこまで泣き叫び逃げ惑う光景は。

おかしいですね。

不倶戴天の敵なのに、なぜか魔族を哀れんでしまいました。

そうしてついに聖女様は魔王と相対しました。


さすがは魔王。


聖女様と互角の戦いをしております。


ちなみに、意外と魔王は紳士的でした。


聖女様との戦いの前にわざわざ広い平野へと移動し、私たちに強力な結界を張ってくださいました。

一見すると檻のようにも見えますが、私たちにとっては心強い強力な防護壁です。

これだけ丈夫な防護(檻)なら、聖女様が多少やらかしても生き残れるかもしれません。

よかった・・・。

これで聖女様の流れ弾を気にせずにすみます。


そうこう思いを巡らしていると、戦いはいよいよ佳境に入ってきたようです。


魔王の防御をなかなか崩せない聖女様は、ついに勝負に出ました。

魔力弾を連続で放ち、横に回ると見せかけて空中からの大上段斬りです。

しかし、そこは魔王。

聖女様の動きを見切っておりました。

魔力弾を爆風が起きにくいように弾いた後、上空に飛んだ聖女様に対して強力な魔法で迎撃をしました。

いえ、

しようとしました。

上空を見、魔法を放とうとしたところで、魔王の動きが止まりました。


あ。


どうやら、魔王は見てはいけない物を見、フリーズしてしまったようです。


そうですね。

私も初めて見てしまったときはしばらくフリーズしてしまいました。

訳がわからないですものね。

そんな風に魔王に同情している間に、聖女様は魔王を真っ二つにしていました。





こうして、この世界は救われました。


聖女様は思う存分塊肉の焦げ焼きを召された後、元の世界へと戻られました。


そして私は・・・


聖女様の活躍を後世に残すため、冒険譚をまとめなければなりません。

正直に書くと、私の頭がおかしいと思われてしまうので、頑張って改編する必要があります。

ですが、

これだけは書いておきたい。


あの服装だけはだめです!!!



単に、洗濯中に呼び出されただけです。ただ、元々服装にあまり気をつかっていない上に期間が短すぎたため、誰も突っ込まないまま元の世界へと戻っていきました。


お読みいただき、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ