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第二話 異世界転生

連休長くて暇だからまさかの続編作ってしまった。

連休終わっても持続できるように頑張りたい(小並感)

どのくらい、寝ていただろうか。

突然意識が戻ってきて、目を開け、飛び起きる。

俺は丁寧にベッドに寝かせられていたようで、周りを見渡すと、自分はどうやら狭い部屋に入れられているようで、左には小さな机に山のように書類が積まれており、右側には、俺とおそらく同じタイミングで目が覚め、まだ状況を掴めていないであろう千歳が、自分の方を見ていた。

「え?俺たち、助かったの?」

「分かんない。ただ痛みは全然感じないけど」

言われてみて初めて気が付いたが、千歳は銀行にいた時と同じ服を着ているのに、撃たれたときに付いた血痕などは見えず、服は綺麗なままだった。

楓自身も、ナイフで刺されたはずなのに、背中を触っても、服の傷どころか、刺された跡すら感じられない。

「死んだよ」

感情を感じさせない低いトーンの声が、書類が山積みになった机の向こうから聞こえてきた。

机の奥から姿を現したのは、赤を基調とした法衣に身を包んだ、自分と同年代くらいの容姿端麗な美少女だった。

「死んだって、どういうことだよ」

楓が聞くと、問いかけた相手は、気だるそうにため息をつきながら、「だから、死んだの。文字通り、あんたらは強盗に遭って命を落としたの」と答えた。

頭はフル回転してるのに、全く思考が今起きていることに追い付かない。

自分たちが強盗に遭った現場にこんな目立つ子はいなかったし、何故自分たちが強盗に遭ったことを知っているのか。

「そんな、死んだって言われても私たちはこれからどうすればいいの」と、静寂を裂くように千歳が聞いた。

「やれやれ...まあお前らに分かるよう一から簡単に説明すると、私はテラっつー、死者の魂を司る神様みてーな存在で、お前らみたいな可哀そうな死因で死んだ人間に異世界でセカンド・チャンスを与える仕事をしてんだ。まあとどのつまり、ラノベでよくある異世界転生ってやつだ。そっちの根暗オタクっぽい少年は今の説明で十分理解できただろ?」

身もふたもない発言なうえに、オタクっぽいは余計だ。

「言いたいことはたくさんあるが、大体のことは分かった。だが何でラノベなんて知ってんだよ」

「転生をスムーズにさせるために、その時代の有名な地球の文化などはある程度学んでいる。例えば中世だと「黄泉の国」、戦時だと「七生報国」とかだ。現にお前ら、ラノベって言われて結構飲み込めたところあるだろ。」

「確かにその説明があったら俺たちみたいなオタクにとっては十分わかりやすいが、現代でもラノベ知らない人はたくさんいるだろ。そして黄泉の国って、何百年前からここで仕事してんだよ・・・」

「おっと、初対面の女性に年齢を聞くのはダメだって教わらなかったのか?」

そんなに生きてても気にするもんなのかよ、と楓は心の中で悪態をつく。

「ねえ、ところでラノベって何?」

千歳が誰にともなく訪ねてきた。おっと、千歳は意外にもラノベを知らないのか。さて、この女神はラノベを知らない人にラノベを一体どう説明する?

「まあ詳しい話はあとでそこの少年から聞けばいい。私も暇じゃないのでね」

クソ、あの女神、俺にめんどい説明を押し付けやがったか。

「そして、異世界に生身で転生というのもそこの卓球少女はともかくこのオタクには酷な話なので、君たちにはラノベでおなじみの『特殊能力』を選ばせてやろう」

こいつ、わざと俺をけなしてんのか?

「君たちがこれから転生していただく異世界は、世界情勢については詳しく話せないが、そこの住人は生まれるときに特殊能力をひとつ持って生まれる。まあ、両親の能力を引き継いだり、異世界の住人達にとって最初の特殊能力は遺伝みたいなものなのだが、君たちはその最初の特殊能力を、転生前に直接選ばせてやろう」

「最初の、っていうことは、二度目とかもあるのか?」

「ああ、異世界でいろんな経験をしたら、経験値がたまる。そしてレベルが上がれば、新たな特殊能力を身につけることができるわけだ。特殊能力はレベルが上がるごとに色々なステータスが上がったり、特殊効果が付与されたりする、一生モノの能力だ。ちなみに二度目からは、異世界の住人も自由に選べるようになるがな」

「それで、私たちが転生した時、年齢とかレベルはどうなるの?」

「その点については問題ない。君たちは現世でもいろんな経験を積んでるだろう。だから実感こそないが、現世でもきちんとレベルは上がっている。だから転生時に年齢が変わったりはしない。君たちの容姿はそのまま、特殊能力をプラスアルファして転生させてやろう。私の予想だとそこの少年はレベル13、君はレベル19で転生するだろう」

俺の方がレベルは低いが、そこは思い当たる節しかないので言うのはやめておこう。

「ちなみに一般人たちのレベルの目安は年齢×0.8だから、少年よ、君の方がレベルが低いからと言って、悔しがることはない」

気にしないようにしてたのにわざわざ言われると無性に腹が立つ。

「まあ、勇者の宿命を背負ったものは、常人には想像もつかないほどたくさんの戦いを経験してきてるから、レベルの上がり方もその分凄まじいことになるがな、まあいい。こんなところで話し続けるより君たちにも最初の特殊能力を選ばせてやった方が早いな。」

テラはそういうと、書類が山積みの事務机から大きなファイルを二冊取り出して、俺たちのベッドに放り投げた。

「そのファイルは異世界転生時に君たちがもらえる特殊能力の一覧表だ。様々な能力がジャンル別に載ってるから、好きに選ぶといい。決まったら呼べ。私も忙しいから早くしろよ」

そう言うと、テラは忙しそうに事務机の方に引っ込んでいった。

「まあ、とりあえずこれ読んで自分がすぐに欲しい能力を選べばいいってわけだ、千歳はさっきの説明で分かったか?」

「大丈夫。あらかた理解できたから。ラノベについては後で聞くね。」

さっきの説明で理解できたとは、流石の理解力だ。ラノベについては俺もどう説明すればいいのかわからないが。

とりあえずページをぱらぱらと見ていく。剣スキルだの、槍スキルだの、攻撃系の特殊能力、回復や援護魔法など、支援系の特殊能力、農業や職人など、仕事系の特殊能力や、さらに雑多な能力など、様々な能力が掲載されている。

まあ異世界で生きるためには、とりあえず仕事系の特殊能力でも身に着けるかな。異世界で平穏に暮らしていけるなら攻撃系なんていらないだろう。

「これって、スキルごとに就ける職業とか、そういうもんはあるのか?」

一応気になった俺はテラに話しかけた。

「ああ。剣スキルを選んだなら剣士、兵士に就職できるし、槍スキルなら防人、衛士などに就職できる」

事務机の向こうからテラの声だけが聞こえてきた。随分と職業のレパートリーが時代錯誤的な気がするが、まあいいか。

「ちなみに異世界は住人の殆どが農家や職人、商人だから仕事系はあまり重宝されないぞ」

「マジかよ!?」

「ここで転生する輩の半分ほどがそんな反応をするな。江戸時代の身分制度みたいに思ってくれたらいいのだが」

テラがさらに身もふたもないような発言をしたせいで、俺の異世界への希望が失われかけたその時。

「この一番最後のページの『現世を見通す力』って何?」

「おお、それは君たちが元居た世界を見ることができる力だな。転生後の異世界も、君たちが元居た世界も、そしてこの部屋もすべて同じように時が流れている。最初は一日一時間だけ君たちがいた世界の様子を見ることしかできないが、レベルが上がると現世と異世界でモノの等価交換ができたり、現世で寝ている人の体を借りることができたりする。現世に思い入れが強い奴はこれを選ぶ傾向が強いな」

「私この能力にする」

俺が言いたいことを言う前に千歳は返事をした。

「お、じゃあ君はそれに決定だな。あとは少年だけだ」

「えっ!?」

突然のことに頭がついていかない。

「千歳、お前ほんとにそれでいいのかよ」

「大丈夫だって三笠。私は自分が欲しい能力を選んだんだから」

「そういう事じゃない。おいテラ、この能力で装備できる武器とかあんの」

「戦闘系か職業系以外を選ぶと無職になるな。無職は武器を買えないしそれといったステータスの上昇はない。最初から身についている初級魔法でひたすら戦うしかないな」

「おい無職だってよ。考え直さないか?」

「彼女がこれでいいって言ってんだから口をはさむことはないだろう。誰も彼女の選択をとがめる人はいない」

事務机の向こうにいるテラにもっともなことを言われ、反論ができない。

ていうか千歳がてっきり戦闘系特殊能力を選ぶと思っていた俺がバカだった。

万が一の時戦闘職は必要だろうし、職業系は必要とされてないということを先ほど聞いた俺にとって、もう選べるのは戦闘系しかない。

「じゃあ、弓スキルで」

もう俺が選べるスキルはそれくらいしかなかった。なかなか俺にしては合理的に選んだと思う。異世界で戦う奴らの見た目がどうであろうと、返り血を浴びたりマズい光景を目の前で見るのは勘弁だし、第一に死にたくない。

「弓スキルか。これは戦闘系の特殊能力の中でも数が少ないから重宝されるぞ。まあ命中率が高ければの話だがな、まあいいだろう」

また余計なことを言いやがって。確かに俺は弓なんてしたことないが、必死に練習をしたらそれなりに上手くなるだろう。重宝されるなら練習場がどこかにあってもおかしくないはずだ。

「よし二人とも決まったな。じゃあいよいよ転生だ。」

そういうと、テラが事務机の奥から現れて、読んでいた本を書類の上に重ねて事務机の前に立った。

「まずは、ベッドから出て私の前に並んで立つんだ。異世界に転生する儀式を始める」

テラがそう言うと、命令通りに俺と千歳はベッドから出て、千歳と並んでテラの前に立った。

「ところで転生って言ってもどこにスポーンすんだよ。魔王城の中だけは勘弁だぞ」

「大丈夫さ。RPGもチュートリアルの村か街があるだろ?君たちが転生するのは、そんな初心者たちが冒険を開始する街、ローフェだ」

「まあ初心者向けの街ならどこでもいいんだ」

「ローフェの街はかなりの大都市で、中には貧民街などもあるが、できるだけ町の中心にある噴水広場に飛ばすよう努力はするよ」

「そんな広いのかよ。まあ後は何とか頑張るけどよ」

「そうだ。頼んだぞ。」

「よし、今から転生魔法の詠唱を開始する。君たちは特に何もしなくてもいいが、魔法陣からは出るなよ、いいな」

テラがそう言い、詠唱を開始しようとしたその時。

「ねえ、この本何?」

千歳が指をさしたその先には、テラが先ほどまで読んでいた本が置かれている。

テラで隠れてこちらからは見えなかったが、千歳の方に移動してみると、それがなんであるか分かった。

「お前、なんでラノベなんて持ってんだよ・・・」

言うが早いか、テラが慌てて本を裏返したが、俺も一瞬表紙が見えてしまった。

そう、俺が見たのは、間違いなく現世のラノベである。しかも表紙がかなりマズいタイプの奴だ。

「これがラノベなの?ねえラノベっていったい何?」

千歳が俺にそう聞いてきて、ようやく自分の失言に気づく。

「マズい!ラノベっつーのはえーっと、まああれだ、説明はまた今度しよう!」

「ところで転生先の世界で使われてる文字は私たちは読めるの?」

「あ、それは俺も気になってた、テラ、その辺は大丈夫なのか?」

千歳がここにきて良いことを聞いてくれた。確かに言葉が通じないとなると一発でアウトだからな。

「よし!お前ら今見たものは現世の文化に触れていたのだと思って忘れろ!異世界の言語についてはきちんとこちらで読み書きスピーク全てが問題なくできるよう調整してあるから心配はしなくていい!わかったらさっさと並べ!儀式を始めるぞ!」

顔をほんのり赤くしているテラがそう言うが早いか、詠唱を始めると、足元に青く光る魔法陣が現れた。

心なしか詠唱が早口になってきている気がするが、多分気のせいだと思うことにしよう。

魔法陣はだんだん大きくなっていき、魔法陣の光もだんだん白く、強くなっていく。

まぶしさのあまり、目が開けられなくなり、そしてついにテラの詠唱が終わったその時、俺と千歳はまばゆい閃光に包まれた・・・!




「ふう・・・上手くいったか。マジで恥ずかしかったから詠唱を早口にしてしまったが、手ごたえはここ数十年の中で一番の出来だったな。もしかしたら本当に噴水広場に届いたかもしれん。・・・ふっ、こいつは面白いことになってきやがったな、しっかしこれだけはバレないで助かった・・・神がこっそり仕事を放棄して現世に出向いてるなんて奴らはともかくアマンダにバレたら大変だからな・・・」

テラは誰もいなくなった真っ白な部屋でそうつぶやくと、自分の机に高く積み上げられた書類

ーー人はそれを同人誌と呼ぶーー

の上のラノベを手にし、また事務机に戻っていった。

次回作は一週間後くらいになるかもしんない。

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