表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/15

第6話

「話しの流れを考えるのであれば誰かが[ウサギ]は「スナイパー」にとって脅威だ、と指摘するまでは少なくとも計算に入っていると考えられます。ですから、わたくしを「指名」しないという約束に嘘はありませんわ」


「それはリボン、お前の予想でしかない。確かめる術はないんだぞ。どうしてわざわざ危ない橋を渡る」


「分からないのですわね」


「スケボー、落ち着いて考えれば分かるから」


深く深呼吸する音が聞こえる


「時間もない。教えてくれ」


「あんな曖昧な命令になにか制約がないはずがありませんわ。[ウサギ]は予めゲームマスターに自由発言を使用すること、なにを言い、なにを約束するかをある程度伝えてあったはずですわ」


「嘘を吐いたと判断されれば駒が動くだろうが、動いていない。だから本当に「指名」しないということか」


「それも違うよ」


「なにが違う」


「嘘と本当はコインの裏表とは違うから…。嘘は吐いていないけれど、本当のことでない。そんなことは沢山あるんだよ。…残念だけど」


「[ペンギン]の言う通りですわ。[ウサギ]はわたくしを「指名」しないと約束はしましたが、「スナイパー」を「指名」しないとは約束していませんのよ」


「リボンと同じマスになったときに能力が使用されれば「交換」されたことになる。だから元の「交換」の持ち主を「スナイパー」と「指名」するということか」


「これは「スナイパー」の能力が動くことを防いだだけじゃないんだよ。リボンは今周囲に他の参加者がいなくてゴールも近いから、今自分を「指名」しないと約束出来ればゴール出来る可能性の方が高いんだ」


言われなくちゃ気付かなかったくせに、最初から分かっていた様な様子で参加してくるこの男を、私はやっぱり好きにはなれそうにない


「これで今持ち主がはっきりとしていない能力は「交換」と「NOT.GOAL」と「敗者復活」。「交換」が封じられている今、「NOT.GOAL」さえ分かれば残りの全員が「負け」とならずこの「双六鬼ごっこ」を終えることが出来るんだよ」


甘い

ウサギが「指名」しないのはリボンだけなんだから「能力なし」だって「指名」される可能性はある

この場合ウサギがどんなつもりであるかが、最も重要になる


「なるほどな。4つのゲームで平均殺人数が1.1人とはこういうことか」


感心している場合じゃない


「ウサギ、ひとつ――」


ゾワッとした感覚が背中を走り、思わず言葉を止める


「負けたら死…」


『5分が経過しました。第7回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』


一体ウサギはなにを言おうとしていたのだろう

それに気になることがある


このゲームのルールや能力の説明、オプション、更には主催者側の発言には一度も「死」という単語は出て来なかったはず

それなのにウサギは迷わずその言葉を口にした


確かにさっきのゲームでは多数決に「負け」たら死だった

でも今回は?

「負け」の先のことはなにも言われていないし書いていない

全員にそう認識されているから説明しない

そんなおざなりな理由以外で考えられるのは…


「そう誤解してほしい…」


『警告します。[ペンギン]賽を振って下さい。これ以上の遅延行為は「負け」とします』


「あ、しまった。またやってしまった。すみません」


[海豚]2マス

[ペンギン]1マス

[犬]1マス

[針鼠]2マス

[ホルン]2マス

[スケボー]1マス

[リボン]3マス

[ウサギ]2マス

[蝶]2マス

[海月]3マス


「矛盾」である海豚と能力が分かっていない海月が同じマス…

でもウサギが言った通り出来ることなんてないはず

気にし過ぎるのが悪い癖だと言われたんだから、駄目だよ


…でも、なにか嫌な予感が拭えない

それは何故なのだろう


『王様は命令をして下さい』


「この7周目で能力を使いたくない者、又は相手に使ってほしいと思う者は1マス戻る」


駒が動いたのは海豚と海月


「意味が分からない命令ね」


「同感だ。ウサギのように考えがあっての命令だとも思えない」


「大丈夫」


「…なにが、ですか」


嫌な予感がすぐ背後まで迫っている

焦燥感を覚える


「私には伝わった」


「是非私にも分かるように教えて下さい」


「一緒に死のう」


その一言を最後に2人は待機中になってしまう


「ウサギ、能力を使わないで下さい」


「出来ません」


「どうしてですか。そんなに自分の身の潔白を証明することが大切なんですか」


「違います。…テスト勉強に集中できず部屋の片付けをしてしまうように、そのとき必要でないと分かっていても、どうしても必要なことはあります」


「それがゲームに負けることだって言うんですか」






「殺されたいと思う人に殺されることが出来るのは――とても幸福なことです」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ