第3話
『2つの能力が使用されました。ゲームに「負け」となった参加者はいません。第4回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』
能力が発動されたのに「負け」がいない?
そんなことが起こりえるのは「矛盾」が能力を発動したときだけ
今「スナイパー」が動くとは思えない
「鬼」は同じマスにいないと能力が使用出来ない
つまり「矛盾」は同じマスにいる
そして、6人中4人が同じマスにいる相手が確実に「鬼」と「矛盾」でないことを認識したことになる
「鬼」は「矛盾」が誰か分かったわけだから、しつこく追い回して3回目を狙うことも出来る
「他に比べて情報が少ない…」
思わず強く拳を握った
そのとき、ぴこぽこん、という間の抜けた音が部屋に響いた
画面には『走れ@海豚』と表示されている
「オプションの個人メッセージ…!」
海豚は犬と同じマスにいた
走れってことは…
いや、考えろ
「鬼」である海豚があたかも自分が「矛盾」であるように思わせるためのものかもしれない
じゃあなにも行動しない犬が「矛盾」ってこと?
さっきも人の死についてなんとも思っていない様子だったし、ないとは限らない
だけど今言えるのはひとつ
確実にどちらかが「鬼」だ
でも例えば海豚とリボンが協力関係にあるとしたらどうだろう
リボンは絶対に海豚を捕まえないと約束している
走ればリボンに追いついてしまい、捕まえられる
まだマスの間隔があるからスケボーになんのアクションがなくても不自然ではない
誰だっていつ使うか分からない所持金を減らしたくはない
『警告します。[ペンギン]賽を振って下さい。これ以上の遅延行為は「負け」とします』
「あ、はい。すみません」
どちらにしても私にオプションは使えない
慌ててボタンを押す
[蝶]3マス
[ウサギ]2マス
[犬]4マス
[海豚]1マス
[ペンギン]0マス
[針鼠]2マス
[ホルン]1マス
[スケボー]1マス
[リボン]4マス
[海月]4マス
リボンが4マスということは…単に運が悪かっただけなのかもしれない
だけど、私がさっき考えていた可能性を消しても良いんじゃないか?
ゴールまで10マス
もし「鬼」なら0か1で留まって後方の参加者を待つ
でも進んだということは、やっぱり犬か海豚のどちらかが…「鬼」
犬なら利己的であると予想出来る分まだ良いけれど海豚なら…
わざわざオプションを使ってまで「勝ち」を取ろうとする人物に、私は――
「勝てるのだろうか…」
『王様は命令をして下さい』
「1人も殺していないゲームがある者は1マス進みなさい」
進んだのは針鼠、スケボー、そして蝶本人
つまり蝶は早くゴールしたいのか
でもそれならどうして3マスではなく1マスなのだろう
不自然だ…
これも誰かを割り出すためのものだったのだろうか
けれど動いたのは本人を除いて2人
私はスケボーを特定しているようなものだけれど、蝶はそうじゃない
針鼠と同じゲームから進んできたのだろう
そして、協力出来る関係にある
さっきの私と全く同じ状況
だけど蝶は特定に失敗している
それとも、進まない方で特定しようとしたのだろうか
デスゲームでそれは無理がある
『能力の発動はありませんでした。第5回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』
[リボン]2マス
[ウサギ]2マス
[海月]3マス
[蝶]1マス
[海豚]1マス
[ペンギン]2マス
[犬]4マス
[針鼠]1マス
[ホルン]2マス
[スケボー]1マス
犬と針鼠、海月とウサギが同じマス…
もし能力が使われるのなら犬が「鬼」だと考えても良いのだろうか
でもそれは「鬼」だって警戒しているはず
だけど海豚が個人メッセージを送ったことを「鬼」が知るはずもない
『王様は命令をして下さい』
「「殺人犯の子供は殺人犯である」。そう思う者は1マス進む」
これは多分個人的な理由だから無視しても良い
そう思いたくない
それで駒が動かないことはない
恐らくリボンの父親は殺人犯なのだろう
動いたのは…海豚とリボン本人
「…そう。綺麗事がお好きなのね」
「この駒の動き、嘘吐けない。だから、違う。親の人生で子供の人生が決まる。そんなの、おかしい」
声が震えているように聞こえる
今まで一度も発言していない海月だから、なにか思うところがあるんだろう
「…分かっているわ。ごめんなさい」
そう言うとすぐに待機中になってしまう
他の参加者も次々に待機中になる
私もなにも言えず、待機のボタンを押した
『1つの能力が使用されました。ゲームに「負け」となった参加者は1名です。オプションが使用されました。これより2分間の自由発言タイムを設けます』