第2話
『王様は命令をして下さい』
「4番は参加したゲーム数と意図的に人を殺した数の合計を答えよ」
『4番の[ウサギ]は答えて下さい』
「参加したゲーム数は4つです。意図的に人を殺した数は多分4.5人です」
「合計に小数点以下とはどういうことだ」
「参加した人は分かると思いますが、デモンストレーションで人を指名するゲームがありました。そこで私はその役をやりました。それだけです」
「デモンストレーションで死んだ者は参加者ですらなかったと言うのか」
「次のゲームでゲームマスターから明確にそう言われました」
口々に納得の声があがる
「酷い…ひとり死ん」
「納得」
ひときわ大きな声で言葉を遮られる
「出来たことだし、次へ行かないか」
どうして良いのか分からず、私は黙って待機のボタンを押した
私がなにも言わなかったからなのか、他の参加者も次々に待機になる
『能力の発動はありませんでした。第3回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』
[ホルン]2マス
[リボン]3マス
[スケボー]マス
[海月]3マス
[蝶]2マス
[ウサギ]1マス
[海豚]2マス
[ペンギン]4マス
[犬]0マス
[針鼠]3マス
犬と海豚、スケボーとリボン、蝶とウサギ
それぞれが同じマスに止まった
もし誰かが「鬼」なら同じマスの人は――
だけど人の心配をしていられる状況ではない
もし犬か海豚が「鬼」なら…
それに今回私は4マスも進んでしまった
ゴールしてはいけないのに
『王様は命令をして下さい』
「殺した人数の平均と合計が同じ者は返事を」
一体どういうつもり
このゲームが私にとって第2ゲームだと知っている参加者は2人
やっぱり2人も参加している
狙いは兎も角、返事をしなくてはルール違反となってしまう
ルール違反をすれば死ぬのだろうか
そういえば、説明のときに言っていなかった
質問がなかったのは暗黙の了解だから、ということか
それなら、違う場合もある
「はい。ペンギン、同じです」
「分かったよ、ありがとう」
この問いで私はホルンが誰であるかを把握した
そして、もうひとりはホルンと私が誰であるかを把握した
2人の内片方だと断定した理由はスケボーのさっきの行動
スケボーは優しい
ホルンは易しい
問題は3つ
ホルンが私を特定しようとした、参加しているか否か確認しようとした理由
参加者全員に私の参加ゲームが2つ目だと分かってしまったこと
そして、ホルンと私が互いを認識したことを参加者全員が把握しているだろうこと
このあまりに的確な質問
特定の誰かを探したと考える方が自然
つまり私はホルンと1つ前のゲームで一緒だった
しかも、協力出来るような関係にある
そう思われるだろう
いくらホルンが易しいとはいえ考えなしに行動するような人物ではない
「鬼」で私を利用しているのなら浅はか過ぎる
となれば能力が弱いか、ないか、それで助けを求めている
もちろん私にではなく、スケボーに
誰がなんの能力を持っているかも分からないのに…
でもいつ王様が来るか分からない
そう考えればタイミングを考えている余裕はないか
―――――
冷たく突き放す
協力的な反応をする
咎める発言をする ←選択
―――――
だけどこのままでは結託したと思われてしまう
私はホルンのような易しい者と組む気はない
さっきのゲームのことは感謝している
だからわざわざ突き放すようなことをするつもりはない
どうしても必要なら仕方がないけれど、今は良い
「ゲームに不慣れな者を炙り出して利用するつもりですか」
「そう思われても仕方のない質問だったね。でも違うよ。誤解させてしまったのなら謝るよ。ごめんね」
「誠意がないですね。なにか目的があるようですが、とんだとばっちりです」
「誠意か…よく言われるよ」
「特定の人物同士の会話になってしまいますね。強制終了もありそうですが、そうされる前に誰かなにか言うことはありますか」
誰からの返事もない
「ではホルン、以後気を付けて下さい。狙われても知りませんよ」
言うだけ言って待機のボタンを押す
狙われても、というのはもちろん「スナイパー」に
でも、もし私が「スナイパー」なら狙わないけどね
相手が「鬼」でなかった場合がリスキー過ぎる
狙うなら「鬼」一択
撃った弾丸が通るか判断するのが他人の個人的な判断なんて、冗談じゃない
「スナイパー」は「能力なし」よりも外れ
『2つの能力が使用されました。ゲームに「負け」となった参加者はいません。第4回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』