第1話
『それでは、「双六鬼ごっこ」開始いたします!』
「しっかりしないと!」
私は画面上で回るサイコロを止めるため、コントローラーのボタンを押した
[ペンギン]1マス
[針鼠]2マス
[リボン]4マス
[ホルン]2マス
[海月]1マス
[スケボー]2マス
[蝶]1マス
[ウサギ]0マス
[海豚]2マス
[犬]3マス
オプションでサイコロの目を変えられない私にしては上々
このまま進むことが出来れば良いけど…そんなわけにはいかないだろうなぁ
他の参加者も流石に初っ端からオプションを使ってはいないだろう
でもどれくらいの所持金があるのか予想も出来ない私には安易にそう決め付けるわけにもいかない
『王様は命令をして下さい』
なにをして良いのか全く分からない
ただ、今は自由に発言出来るのに王様である私の言葉を待っている
これは落ち着いている、ということなのだろうか
それなら対戦相手の9人は一体、いくつのゲームに勝ってきたのだろう
そうか、それを質問すれば良いんだ
さっきのゲームで一緒だった人がいるなら、そうじゃない人に聞きたい
だけど番号はおろかいるかどうかも分からない
ここは運に頼るしかない
そういえば一緒に生き残った2人はすぐ前に参加したゲームの内容が違うような言い方をしていた
ゲームの内容も聞けるなら聞きたい
私には知らないことが多過ぎる
―――――
1番に問う ←選択
3番に問う
6番に問う
8番に問う
―――――
「1番は参加したゲームの数とゲームの内容を言って下さい」
『1番の[海月]は答えて下さい』
「「名前当てゲーム」と「ギャンブルの塔」の2つです」
「…雑多で良いのでルールも聞けませんか」
『出来かねます』
内容にそれが含まれないとは…
また王様を引くようなことがあれば質問の仕方には気を付けないと
「全員に自由な発言が認められているのに、みなさん静かなんですね」
画面を見ると私以外の全員が待機中になっている
早く2周目をやりたいらしい
もしかして、これって取るに足らない質問だったのかな
だったら私がゲーム自体の経験が浅いことはバレて…
「はぁ…」
『能力の発動はありませんでした。第2回王様ゲームの王様を決定し、賽を振って下さい』
[犬]3マス
[ペンギン]1マス
[針鼠]0マス
[リボン]3マス
[ホルン]2マス
[海月]4マス
[スケボー]0マス
[蝶]4マス
[ウサギ]3マス
[海豚]4マス
針鼠、犬、私、海豚が並びになった
この中に「鬼」がいれば、もしかしたら…
ホルンとリボン、スケボーと海月が隣
その間は1マス
こっちも同じ可能性がある
残りの蝶とウサギも隣同士
固まったな…
『王様は命令をして下さい』
「4番は参加したゲーム数と意図的に人を殺した数の合計を答えよ」
意図的に…?!
生き残るために仕方なくではなく、個人を殺そうとして…?
そういう質問をするということは、そんな場面に遭遇したことがあるのだろう
そして…珍しいことではない
『4番の[ウサギ]は答えて下さい』
「参加したゲーム数は4つです。意図的に人を殺した数は多分4.5人です」
「合計に小数点以下とはどういうことだ」
「参加した人は分かると思いますが、デモンストレーションで人を指名するゲームがありました。そこで私はその役をやりました。それだけです」
「デモンストレーションで死んだ者は参加者ですらなかったと言うのか」
「次のゲームでゲームマスターから明確にそう言われました」
口々に納得の声があがる
「酷い…ひとり死ん」
「納得」
ひときわ大きな声で言葉を遮られる
「出来たことだし、次へ行かないか」
声は中性的な感じに軽く加工されている程度で、元の声を知っていれば人物の特定は容易に思える
話し方から考えて今のは…
でもそれを利用されているのかもしれない
理由は珍しい話し方ではないから
ただそれだけ
でも実際犬だって同じような話し方じゃない
理由としては十分でしょ?
なにを信じて良いのか分からない
なにを疑うべきなのか分からない
自分のことですら、信じられない
主催者にそう思わされるよう誘導されているのでは、そう考えてはたった一本の道を進むのですら足踏みをしてしまう
私はどこへ向かうのだろう
自分を変えるのだと意気込んでいた
でも、どう変えるのかは考えていなかった
ここへ来れば変われるのだと思い込んでいたのかもしれない
いいや、思い込んでいたのだ
だから私はなんの計画、立案もなしにここへ赴いた
その結果がこれでは笑えない
―――――
相手に賛同する
言葉を遮ったことを非難する
なにも言わない ←選択
―――――
どうして良いのか分からず、私は黙って待機のボタンを押した




