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今日も君は

作者: 青春に乗り遅れたじじい

 LIMEの通知が「いつもの場所ね」ときている。それを確認した僕はちょっとうれしくなりながら,自転車に鍵をかけて少し急ぎ足で移動する。ここは田舎だ。さらに早朝ともなると,歩いている人は誰も居ない。改札に財布をかざしながら,「もうすぐつく」って返信をする。始発の電車の出発3分前だ。エスカレーターを歩ってホームに移動する。駅員さんのアナウンスを聞きながら電車のドアの開けるボタンを押す。すると君はケータイの画面から目を離し,僕を見つけ手を振りながら「おはよう」という。疲れた顔をしながら,いつもと同じ大きな鞄を抱えている。

 君の話すことは,好きなアイドルのこと,変な写真が撮れたこと,昨日あった面白かったこと,そして最近よく遊びにさそわれる彼のことだ。ぼくはどんな話題にも適当なあいづちをうって,そしてたまに笑ってみたりする。君の周りにはいつも楽しいことであふれている。こんなことを言うと君にしかられそうだ。「大変なこともいっぱいあるんだけど」って。そんなことはわかっている。けどぼくのまわりにはなにもない。遊んでくれる人も居なければ,笑ってもらえるような面白いことも起こらない。そんなことを君と居るときに考えてしまう。そして君が笑いながら話しているときにぼくも笑えているかどうか不安になる。

 時間がたつにつれて数人しか居なかった乗客がほぼ満員になった。もうすぐ終点につく。一緒に電車を降りて君は「またあしたね」っていい,ぼくはうなずく。ぼくは君の周りの楽しいことの一部になれているかな。いつか君に楽しいことをしてあげられるといいなって思っていると,君は急に振り返り笑顔で手を振ってきた。今日も君は昨日と同じだ。そして明日も同じでいてくれたらいいなって思いながらぼくも手を振った。


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