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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

きっと腹が減っていただけから

作者: 達磨

食べてしまいたいぐらいという形容詞がある


俺の彼女もそれぐらい可愛い


でも実際に食べたいわけではない、「ぐらい」と言う程だし










その日は曇りで朝から頭が痛かった


冷蔵庫が空で朝飯を食わずに大学に向かった


高校生の時から付き合っていて、同じ大学に進んだ彼女が毎日弁当を作ってくれているので、それをあてにしていた


だが、彼女は寝坊してしまったらしく、今日は料理を作れなかったと言う


しかもその日は財布も空だった


ではどうしようかと悩んでいたが、金の貸し借りは嫌いだし、奢ってもらうのも嫌な質だったものでその日は空腹のまま過ごした


講義も終わり、彼女から家に泊まりに来ないかという誘いがあったので、有りがたくその誘いを受けた




台所に立つ彼女を眺めながら雑誌を読んでいた


不意に彼女が小さく声を出した


心配して駆け寄ると小指に怪我をしたらしい、何故小指な

のかと疑問には思ったが、まあ、安心したその頃丁度頭痛はピークに達していた




小指の先から血が垂れている


そこで、何を思ったのか俺は彼女の小指を口に含んだ


彼女は照れつつも困惑している


少し指を舐めた


彼女は顔を赤らめている


そして付け根の方から思い切り歯を立てた


彼女は悲鳴を上げた


軋む音を聞きながら、歯が固いものに当たった、おそらく骨だろう


彼女は痛みを訴えながら泣いている


一度力を緩め、また思い切り噛んだ


彼女はまた悲鳴を上げた


ガチッという自分の歯がぶつかる音と同時に、思いの外簡単に彼女の指は手から離れ、口内に入った


彼女は泣きながら崩れ落ち、手をおさえている


指を数度咀嚼してから飲み込んだ


彼女の服は赤く染まり、その赤はカーペットにも及んでいた


残った鉄の味を感じながら、彼女に目を向ける


彼女は此方に血と涙でグショグショな顔を向けている




美味そうだな、と思った


彼女がか細い声で俺の名前を呼んだ


さっきまで続いていた頭痛が消え、急に頭が冴えてきた


彼女がもう一度自分の名前を呼んだ


自分がやったことをハッキリと理解した





その後のことはよく覚えていない

パニックになったまま彼女の家を飛び出し、走って自分の家に戻ってきたと思う


気が付くと顔は血に濡れ、服は血と汗で湿っていた


そこでまた頭痛が激しくなり、服を洗濯機に投げ入れ、シャワーを浴びて手近な服を着て寝た







インターホンの音で目が覚めた、頭痛はもうしないが、視界は霞んでいる


固くなった身体を音を立てながら起こし、蛇口を捻り、落ちていく水をコップを使わずに飲んだ


少し視界が開けた気がする


玄関の扉を開くと、彼女が笑顔で立っていた


左手にだけ手袋をしている


その瞬間に、自分がしたことを思い出した


言葉が出ない俺に対し、彼女はいつもと変わらない笑顔を向けている


お腹すいてるでしょ?


彼女はそう言った


たしかに腹が減っている


彼女は部屋に入り、テーブルにいつもより多い弁当を広げた


彼女に促され、困惑しながらもテーブルにつく


彼女曰く、自分は彼女の家に行った日から三日間連絡がとれなかったらしい


どうやら三日間寝ていたようだ


恐る恐る彼女に質問しようとしたとき


彼女は、いただきます、と言って手を合わせた


右手は素手で、左手には手袋


俺が呆然としているのを不思議そうに、彼女は弁当に箸を伸ばす


食べないの?


彼女にそう言われて自分も食べ始める


霞掛かった頭のままで、食事を続ける


絶食のせいか、やけに美味く感じた




食事が終わり彼女に質問する


あれは現実だよな?


あれって?


三日前の、俺が、お前の指を、、、


ああ、その事? 夢だと思ってたの?


そう言って彼女は手袋を外した





その手に小指は無かった


大丈夫、あなたは悪くないの


彼女はそう言ったが、俺は訳がわからなかった




私ね、いつもお弁当に、血を混ぜていたの


私ね、いつも好きな人に食べられたいって思ってたの


でも、嫌われたくなかったから、打ち明けられなかったの


でも、我慢出来なくて、いつも血を混ぜていたの


だから、いつもあなたが私の作ったお弁当を食べるとき、いつも私は幸せだったの


だから、あの日あなたが私の指を食べたとき痛くて泣いちゃったけど、私は今までで一番幸せになったの



俺は彼女が何をいっているか分からなかった


彼女の手を見た瞬間から私は彼女の話が聞こえなくなった






彼女の手には小指と薬指が無かった

彼女はいつも料理を作る際に、小指から血を垂らしていました

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