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終わりと始まり

閲覧下さりありがとうございます。

拙い文書かつスマホ執筆ですので、誤字脱字などあるかとおもいますが、確認し次第直して行きますのでよろしくお願いします。


あ、死んだ。

そう思ったことある?



お腹の底が冷えて、全身の感覚が無くなる。そして、全てがスローモーションになる。一瞬は一瞬なんだろうけれど、嫌に長く感じる。

何となく自分は助からないって言う変な確信。そこには恐怖とは表現しにくい変な感情があるんだけれど、案外冷静。こう言うものなのかも。



何があったかって?

学校に行くために家を出てしばらく。黄色い帽子をかぶったランドセルの男の子がトラックに轢かれそうなのを見て、咄嗟に助けに入った。



ああ…。

今日は部活で次の大会のためにミーティングがあったのに。キャプテンの私が出席しなかったら迷惑かけるだろうなぁ。

短い、人生だった。みんな、ごめんね。ありが…。



【キミは死なないよ。】



声が聞こえた。優しい、男の人の声。

固く瞑っていた目を開けると、時間が停止しているみたいに私以外の全てが止まっていた。



「!? えっ!?!」



私とぶつかる数十cm手前で止まっている大きなトラック。仰け反るように後退ると、突き飛ばした男の子が空中で止まっている。


何これ!?何が起きてるの…!?



【やあ。】



後ろから声が聞こえた。さっきの優しい声?

振り返ると、そこには魔法使いみたいな白いローブを着た明るい薄紫色の髪の男の人が私にほほ笑み掛けていた。



【ルーカス、お疲れ様。 神気(しんき)も高いし清らかだ、彼女にしよう。】



ローブの男の人は、私が助けた男の子に語りかけると、微動だにしなかった男の子が光に包まれておさまると同時に、耳が翼で尻尾が体より長い猫のような姿になった。

多分、この生物がルーカス?え?私?当然思考なんて追いついてないですけど、何か?


ルーカスと呼ばれた生き物は、翼のような耳を羽ばたかせ、ローブの男の人の右肩にとまった。



【この子の名は、ルーカス。 空猫(スカイキャット)だよ。】

【ご主人様、ニャーの紹介よりご自分の紹介をするのにゃ。】



喋ったあ!?

もう色々追い付けないんですけど!



【これは失礼。 俺の名はロレス・レインバース。 こことは違う世界、アルスティナと言う世界で九貴神(きゅうきしん)をしている者だよ。】



あ、頭が爆発するーーーー!!!



【キャパをオーバーしたのにゃ。】



―― しばらくお待ちください ――



「つ、つまり!」



異世界のアルスティナは、剣と魔法、神様や悪魔とか魔獣と呼ばれるものも生き、多種族が暮らす世界。

そして、ロレスさんはその世界で9人存在する、神や邪神にすら認められ、それらに等しい存在とも言われる、九貴神(きゅうきしん)の内の1人と。



【そういう事だね。】

「そ、そんなすごい人が何か用なんですか?」



異世界からこっちの世界に来れて、私が落ち着くまで10分ほど。それほどの時間を停めることが出来る人。

まだ、色々と訳が分からないし、夢だったらいいだろうけれど…私がキャパオーバーしている間に、ルーカスがそれらをことごとく否定した。そう認めざるを得ないくらいに。


あ、そうそう。ルーカスを抱っこしてるの。マシュマロを抱っこしてるみたいに軽くてフワフワしてるの!可愛いの!気持ちいいの!

因みに、ルーカスはロレスさんの使役獣らしい。



【俺達、九貴神の長からの命令でね。 近隣の世界を対象に()()()()()()を選び、弟子として迎え入れ、世を救済出来る存在へ育てよ。ってことなんだよね。】

「なるほど……。」



要するに、九貴神のリーダーから命令を受け、この世界に弟子を探しに来たってこ、と?…あれ?ちょっと待って?

そのロレスさんが、数秒後には死んでいたはずの私を、時間を停めてまで助けたってことは…?


背中に嫌な汗が滲むような気がした。



【キミは察しがいいね。 そう、俺はキミを弟子に迎えようと思っている。 だから、キミを助けさせてもらったよ、アマネちゃん。】



刀柄 天音(とつか あまね) 。18歳。

どうやらまだ、私の頭は現実に追いつきそうにありません。そろそろ本当に頭が爆発しそうな感じがする。




【残念だけれど、この状況を見てもらったら分かるようにキミの死は確定なんだ。】

「そんな…っ。」



分かる。こんな大きなトラックに突っ込まれて生きているなんて奇跡としか言いようがない。でも、改めてそう言われると…。



【選択肢は2つ。 このまま死を受け入れるか。】

これ(トラック)に追突されたらきっとめちゃくちゃ痛いのにゃ。 あらゆる所がぐっちゃぐちゃなのにゃ。】



ルーカス黙って。想像したくない。



【アルスティナへ即身転生をして、俺の弟子なるか。】

【アルスティナはいい所なのにゃ。 それにご主人様の弟子になれるなんて…世界を制して1億人のイケメンに囲まれるより幸せなことなのにゃ。】



ルーカス、本当黙って。

例えが俗っぽいし、それ逆に怖い。


よくよく考えてみよう。

私が死んで家族の皆はどうなるの?娘が死んでその亡骸が見るに堪えないってなったら…ただでさえショックなのに、更にショックを与えちゃう。

それに友達は?皆気さくで優しいのに、約束だって…受けてる相談だってあるのに。…皆やっぱり悲しむのかな。

そもそも弟子?理由は?危険なの?考えてみると、頭の中がおかしくなりそう。



【ふふっ。】



頭の中がぐるぐるして、それでも考えていると優しい笑い声が聞こえた。笑い声の主はロレスさんで、首を傾げてロレスさんを見ると彼はゆっくり口を開いた。



【いやね、キミは真っ先に家族や友人のことを考えたなって。 とても優しい子だね。】

「それは…。 死んじゃうのは確定だけど…やっぱりお母さんやお父さん、お兄ちゃんのことが…。」

【大丈夫だよ。 死は俺にも他の九貴神にも変えられない。 けれど、その事実をほんの少しなら変えられる。】

「…どういうことなんですか?」



私が問いかけるとロレスさんは目を細めて微笑んだ。



【先程、ルーカスが言った通り…キミのこの後の亡骸は見るも悲しきものになる。 だからせめて、家族のショックが少しでも和らぐように…キミの意志を尊重しよう。】



うっ。私が考えてるのが分かるの?



【友人達もね、キミの死をきっかけに良い方へ気を向けられるよう(まじない)をかけておこう。】



やっぱりこの人、私の考えが分かるんだ。



「あの、私が死んだ後のことは分かりました。 その、アルスティナ?に行く理由とか…弟子とか、色々教えてください。」



自分の死を受けいれたわけじゃない。そんなの簡単に受け入れられるわけがないよ。そもそも実感ないし。

でも、この人達の弟子とか世界とか、よく分からないし、ちゃんと聞いておかなきゃ。

お兄ちゃんが契約とかそんなのを交わす時は、しっかり契約事項とか確認しておけって言ってたし。



【この地球を含むこの世界はね、俺達の間ではクルクスと呼ばれる世界なんだ。 これがクルクスの全貌だよ。】



ロレスさんが静かに説明を始めると、私とロレスさんの間に地球の3Dの映像が浮かび上がり、太陽系、銀河系みたいな感じでズームアウトされていく。最終的には黒く所々砂粒が混じってキラキラ輝いている大きなモヤになった。



【このクルクスのような世界は膨大に存在する。 俺が住む世界、アルスティナだってそうだ。】



今度は、そのキラキラ輝くモヤのような周りに多少色は違えど似たようなものが12個浮かび上がった。



【各世界は、5~15個程度で1つのグループになっている。そして、そのグループの中には核と呼ばれる世界が存在していて、この地球を含む世界(クルクス)が属しているグループの核こそがアルスティナなんだ。】



地球を含む世界(クルクス)や他のモヤより遥かに大きなモヤが浮かび上がり、拡大されると地球によく似た世界が映し出された。



【…グループになっている世界は多少干渉しあっている。 良い事も悪い事もね。 そして、核の世界(アルスティナ)はどの世界よりも多種多様な干渉を受ける世界でもあるんだ。】



ロレスさんの声がほんの少しだけ険しくなった。



【悪い影響というものは、みんなの力でなんとかしている。 (ウロ)だって俺達九貴神が抑えられてるし。】

(ウロ)…?」

【虛は悪意なのにゃ。 各世界に生きるもの達の負が集まって核であるアルスティナに溜まり溜まって、アルスティナを滅ぼそうとする化物になのにゃ。】

「なんでアルスティナを?」

【核世界を破壊し、消滅させたのなら各世界のバランスが取れなくなって、遅かれ早かれ各世界は死んでいく。】

【グループは大きな木なのにゃ。 核世界は根であり幹なのにゃ、そこが死ねば水や栄養が回らず、

その木は死ぬのにゃ。】



だから (ウロ)は核であるアルスティナを攻撃するんだ…。



「その (ウロ)を九貴神さん達は止めているんですか?」

【そうだよ。 まあ、溜まり溜まって具現化するから毎日ではないけれどね。 でも実際、奴らを倒せるのは九貴神だけだし…同時に複数体現れるし、毎回形状も違う…俺達はアルスティナを離れるわけにはいかないんだ。 これを頭に入れて話を聞いてね。】

「? は、はい。」



よろしい、とばかりにロレスさんは頷いて、それと同時に浮かんでいた3Dはスウっと消えた。



【アルスティナが核を務めるこのグループ名はボーヴィックと言ってね。 ボーヴィックには全部で12の世界が属しているんだよ。】



新しい3Dが浮かび上がった。

さっきのモヤが12個あって、ロレスさんの説明に従って展開されている。



【12ある世界の内、現在4つでとんでもない事がおこっているんだ。】

「とんでもない事ってなんですか?」



該当しているであろう4つのモヤが浮かび上がり、私はそれに近づいてモヤの1つを覗き込んだ。



【事象は様々、魔王の出現。 世界が滅ぶ程の大戦争、文明繁栄の失敗、勇者と呼ばれる者の悪行。 それ故に4つの世界からの負がとても大きくなっていてね。 それまで月に1度~2度の頻度だった虛の襲撃が1週間に1度のものに変わってきている。】



え…!?待って!そんなに頻度上がるの!?

核であるアルスティナが崩壊しちゃったら、ほかの世界も無くなっちゃうんだよね!?もちろん、私が住んでるこの地球だって…。という事は家族も友達も…。



【どの世界でも負の力は絶大なのにゃ。】

【さっきは九貴神はアルスティナを離れられないって言っていたけれど、それは今の話。 以前はね、俺達九貴神も他の世界の視察に行ったりしていたんだよ。 それくらいの余裕があったんだ。 けれど…。】



ロレスさんは1度瞳を閉じてからゆっくり開いた。



【今は離れられない。 今この世界に来ているこの瞬間だって、俺が護らなければいけない所を他の九貴神が負担してくれているんだ。 この瞬間、俺が管轄している場所への襲撃がないことを祈るばかりだよ。】

「あの、ごめんなさい。」

【え?】

「私が説明なんか求めたから…大切な時間を…。」



ロレスさんは私の言葉に一瞬驚いた表情を見せて、すぐに優しく微笑んだ。



【キミは優しい子だね。 俺の方こそごめんね、そんなつもりで言ったんじゃないよ。 それにキミに説明するのは義務でもあるし、俺もちゃんとそうしておきたいから。】



うっ、ロレスさんいい人だ…!

感動していたらロレスさんがパンっと両手を叩いた。



【さて! 簡潔に言うとね、俺達九貴神はアルスティナを離れられない。 でも、この悪循環を断つ為に4つの世界をどうにかしないといけない。 ならば、どうにか出来る者を各世界から見出して、弟子として育て、このボーヴィックを護ろうじゃないか! …という事になったわけさ。 そして!】



すびっと指をさされる。ロレスさんに。



【九貴神が1人、天蒼(てんそう)のロレスはトツカ アマネ…キミを弟子に迎え、蒼水(そうすい)の勇者として育てたいと思っている!】

「あ、へ…!? 私が勇者!!?」



ちょーーっと待って!!

何かしらお手伝いをするんだろうなとは思ってた!けど、私を勇者に選ぶの!?!もしかしてとか嫌な予感したけど、考えたくなかったのに!!



【あれ? 不満かな?】

「いやいやいやいや、不満とかもうその次元じゃないです! 蒼水の勇者ってなんですか!?」

【…蒼水の勇者の響きが嫌?】

「や、そうじゃなくて! なんやかんやすっ飛ばしますが、世界を救う為に弟子を探してるんですよね!?」



清々しい笑顔で深く頷くロレスさん。

イケメンでも許されないことって私はあると思う。



「なんで私なんですか!? この世界の人間は魔法使えないし、剣とか一部の人だけですよ、使えるの!」

【ちゃーんと教えるよ? 俺ね、こう見えても九貴神の中ではNo.2だから! 任せてよ。】

「ぐっ…。 ちまちま修行とか、急を要するんじゃ…!」

【大丈夫さ。俺達九貴神がいるからね。】

「世界がヤバイから弟子を探しに来たんじゃ!」



大いに焦る私にロレスさんは首を傾げた。

そして、何か考える素振りを見せたあと、私と目を合わせて微笑む。



【説明不足だったね。 この状況が悪化し、毎日(ウロ)の襲撃を受けたとしても、俺達九貴神はなんとしてでも世界を護り抜くよ。 何百年、何千年、何万年経ってもね。】



声や表情、雰囲気はとっても穏やかで優しいけれど、何か強い意志をひしひしと感じる。



【一番強くて厄介な虛は俺達(九貴神)で食い止める。 けれど、()()をなんとかしなくちゃ永遠にこのままだ。 俺達はいいよ、誰がなんと言おうとボーヴィックを護る。 でも他の世界は? そして、その世界に生けるもの達は? 今はアルスティナだけだけれど、全ての世界が多少なりとも干渉しあっているんだ。 という事は分かるね?】



いずれ、各世界が悪い干渉を受ける。って感じかな。

九貴神の人達は、虛を食い止める。だからこそ、離れられない。離れられないから自分達の弟子に原因をなんとかさせようとしてる。

それに私が選ばれた…?12の世界を護るの?私が?



【本当は…俺達だけで全部出来たらいいんだけれどね。残念だけど 俺達は()()()()()。 俺達が虛から世界を護る間、弟子達に原因の根絶をお願いしたいんだ。 大丈夫、ちゃんとサポートはするよ。 だから…。】



ロレスさんは瞳を伏せ、ゆっくりと深々と私に頭を下げた。



【ご主人様!?】



それまで、神妙にしていたルーカスが困惑した声をあげた。



【お願いだ。 どうか、俺の弟子になって…一緒に世界を救ってはくれないかな。】



頭を下げたままのロレスさん。とっても真剣だ。

私がどう反応していいか困っていると、ロレスさんはゆっくり頭を上げて微笑む。



【キミは既に神気を纏っている。 しかも、清らかな魂と優しい心を持っているよ。 大丈夫、キミは強く優しい勇者になれる。 何万年も生きてきた俺が言うんだから間違いないよ。】

「…っ…。」



嗚呼、お父さん。お母さん。兄ちゃん。

私ね、どうしたらいいんだろう…本当。全く…。





~完~


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