出来ること
………どの位時間が過ぎたのか、ふと気が付くと辺りは闇の中、ホタル達もいない、
ただ俺に関する当事者達だけが、この場に残っている。
イワガミ様とその傍らに幽かな姿の男の子
俺の側には妹の莉子と共に真白い光の玉がふわりと浮かんでいる。
………何だかなぁ、この展開『神様VS人間と幽霊チーム』争う気なんかない俺はな……
しかし妹はヤル気満々の雰囲気をだしてるな、神様に逆らうなんか不遜だろ、お兄ちゃんはそんな妹に育てた覚えはないぞ。
「お兄ちゃん!近づいちゃダメ」
俺の行動を察知した莉子が牽制をかけてくる。仕方ない、こいつから何とかしておこう。
「いいだろ?どうせもう粗方入ってる様子だし、それに大して変わり無かったから」
俺の楽観的意見に文句を言ってくる。懐かしいな、こういうの………
「だって、混ざったら絵の具みたいに他の色になっちゃうかもしれない!神様が言ってた!清らかなる者になるって!そんなの莉子のお兄ちゃんじゃない!」
おいお前、何か俺は酷く傷付いたぞ!
「はぁ?何か俺はひどく悪者の様な言い方しやがるな、お前」
莉子はぷぅと頬を膨らませ文句を言い立てる。
「だって、ニンジン残すし、絵の具買いに行ってくれないし、バイトしてるのに莉子にお小遣いくれないし」
おい、お前何だ?その理由は!いやいやいかん、こんな所で下らん兄妹喧嘩繰り広げてる場合じゃないだろ。
「まぁ、そう言うな、もうお兄ちゃんお前に何もしてやれないけどな、でも何とかしなくちゃならんだろ」
俺は神に向き合う、一応覚悟は出来ている。自ら進んで求めればそれは犠牲にはならないと思ったからだ。それに今から出せるのか?アレ………
「ここから俺が出るのにはどうすればいいですか?それとこの子達もどうなるのか。教えて欲しいです」
『貴女は間も無く外へと出れます。あの子達は私から離れてしまったのでそのまま天へと昇るでしょう、そしてこの子は』
淡々と答えるイワガミ様、そして淡々と男の子を眺めつつ
『このまま消える』
はぁ、やっぱりな、そんな事だろうとは思ったけど、ならば出来ることはしておこう。後悔はもうしたくない。
「その子を受け入れます。もう粗方入ってるのなら構いません」
その返事に驚く神、まぁさぞや珍しい人間だろうと思ったのは間違いない様子。
我ながらバカかもな、と苦笑しながら俺は男の子に近づき、ほらおいでと声を掛ける。
良いの?と聞いてくる男の子、良いよと俺、君には助けてもらったしな。アレがなければ干からびてたし、その様子を目にした神がポツリと言う。
『いいのですか?自ら受け入れると?それまでの自分とは違ってしまうのに?』
あーやっぱりそうですかー人格とか変わるんですかね?最後の1ピース入れたら、と考えてると、腕の中の男の子がにっこり笑って言ってくれる。
「お兄ちゃんの中で寝るからだいじょーぶ」
オオーなんて良い子なんだよ!生きてる時過酷だったにも関わらずにコレだよ?莉子にも是非とも見習って欲しい所だ。
お前いい子だなぁ、と可愛くなり抱きしめた。えへへと笑う男の子、次第に姿が解れて光となり俺を包んでゆく。
『貴女の様な人間がいるのですね。ではその子をお願いしました』
何処か満足そうな声色の神に最後の問いかけをする。
この先も清浄なる世界にはするべく続けるのかと………
暗闇から白い世界へと変わって行くなかで、イワガミ様は語る。
『貴女の様な人間はいませんからね、さぁ、どうしましょうか?』
曖昧な返事、答えになってないなぁと案外神様もいい加減なのか?
出来れば計画とやら、俺に免じて中止をしてくれればいいな、と思いながら、天へと昇る莉子と光を見送る。俺は礼を言う。
ひとまず莉子達が俺を守ってくれたから自身を保つ事が出来たと思ったから、そしてその事が、この子に対して後悔しない行動が出来たから。
イワガミ様のお姿も次第に薄れてゆく。やっと終わったらしい。
何だかな、またしても眠たくなってきたし………
うん、寝て、戻って、帰ったら、あの子の頼まれ事をしに行こうか………