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平家蛍と甘い水  作者: 秋の桜子
5/12

 不思議な感覚の夢を見た。


 夢の中で俺の姿は幼い男の子、冷たい床の上で泣いていた。


「おとうさん、ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」


 幼い男の子の中に入り込んだ俺、床にうずくまり泣いている。小さな両の手で頭を抱えながら泣いている。


 その小さな背中に容赦なく父親の「躾」と称した黒い力が加えられている。


 助けの母親も何処かに行っていない。


 ――――――目が覚め、取り巻く空気はとてつもなく清々しいのだが、気分は最悪という正反対の朝を俺は迎えた。


 あ?何だ?この夢は、そういや出てきた、あの子似てたような?昨日のあの子なのかぁ?嫌!違うだろう、


 頭を一振りしながら、夢の残骸を追い払う。


 早朝の山からは、賑やかな日暮の合唱が響いている。夕方だけかとおもっていたが、どうやら気温で鳴くらしい。


 時間を見れば、何と!まだ5時前ではないか!再び寝ようかと考えたが、続きが怖かったのでとりあえず起きることにした。


 窓へと近づき網戸を開ける。冷たい冷気で背筋がしゃんとする、深く深呼吸を1つ、「夢」外へとを吐き出す様に深く深く………


 ――――――「オオー!これが「イワガミ」様の祠ですか!」



 超早朝始動のお陰で、お昼過ぎにはお大師さんのお堂巡りも終わり、最終段に入っていた。


「綺麗でしょう?茅吹き替え終わったばかりだから」

 

 ………村の丁度真ん中位にある小高い丘の上、深い木立に囲まれた場所に小さな茅葺きの祠が奉られていた。


「この神様はね「ケガレ」を何よりお嫌いになられるの「清い」神様なのよ」


 案内してくれる彼女の話をメモを取りながら興味深くあちこち眺める。


 そこは小さな異空間、とも取れる神聖な空気の冷たさが満ちている。


 清い神様って本当だな、素直に思った。


 本来なら、写真の1枚も撮りたい処なのだがそれすらも拒否するかの様な静寂さがあり、俺は撮影は諦める事にする。


 何か写りそうだしな、俺は自慢じゃないけどホラーは嫌いだし、色々説明してくれる彼女に聞くと、


 ホームページで写真がアップされてるらしいので、まぁ何とかなるだろう、と祠を後にした。


 ――――「ありがとうございました。助かりました」


 軽四に乗り込むと、俺は彼女にお礼を伝えた。本当!助かった!1つの集落内だけど、離れてる!離れてる!


 田舎はスケールがやはりデカイ!実感した。誰も歩いてない歩道も軽四位走れるスペースとってあるしな。


「お礼何て良いわよ。お客様なんだしね。とりあえず遅くなったけどお昼食べなくちゃ、喉乾いてない?」


 運転しながら助手席の足元にある小さな保冷バックを開けるよう薦めてくれる。遠慮なく開けてみると、そこにはあの水のペットボトル、


「これって、ここで作ってるんですか?部屋にもあって、美味しいですよね」


 手に取り彼女に聞いてみる。やはり村起こしの一品らしい。


「そこそこ人気はあるけど、生産量が少ないからネットで売ってるの、工場は山向こうに有るのよ」


 へぇーネットかぁ、家に帰ったら頼もうかと考えてたらまずい、眠たいぞ!


 朝が早かったせいか、睡魔が急に襲ってきた、もうすぐ宿なのにこれはいけない。


 クスクス笑いながら、眠いの?と聞いてくる、俺は大丈夫ッス返事したまでは覚えていたが


 ―――覚えていたのはそこまでだった。


























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