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片想い ~Part4

「別れの手紙」


新神戸の駅のホームであなたを見送ってから

もう三日が経ちます

涙を見せない別れだったけれど

心はもはや避けそうな程苦しい

ありがちな遠距離恋愛

でも私達は大丈夫、て

二人で笑いあった日々も今は

遠い……

私は何を望んでそして

あなたは何を欲していたの

自問自答を幾度繰り返しても見出せない

私達は何に負けてしまったのでしょうか

こうして綴りながらけれど

あなたには決して届かない

届けない手紙をしたためつつ

私は今、

初めて涙を流しています

在りし日の輝いていた二人をうつす

ポートレートを目の前に置いたまま








「あの長き翠の黒髪の」


あの髪を切った日から

もうどの位経つだろう

何もかも忘れたくてこれ以上

自分を嫌いになりたくなくて

私は私の長い長い髪を切った

幸せな想い出も一瞬にして過去になる

そんな恋の無常を識り私は大人になる

そうなろうと心で呟いたあの日

けれどどれほど月日が流れても

過去に囚われ未来に怯え

何も変われない私の中で

ただあの黒髪だけが

昔と同じ長さに戻る

あの人が好んでいた

長く翠の黒髪に……








「夢路だに」


ふと気がつくと追われていた

得体の知れない何かが背後から忍び寄る

私は必死で走って走り続けるけれど

異形の者はなお私を執拗に追い縋る

助けて!

息も絶え絶え叫んだ途端

いつの日か共に遊んだ懐かしい旧友達が

次々と現れては消えてゆく

ああ、助かるんだ……!

彼の者もまたいつしか彼方へ消えていた

そして私は夢から醒める

いつもいつも

見たくなどないのに見てしまう夢の中で

どうして

あの人は一度たりとも現れてはくれない

決して助けになど来てはくれない……








「泣ける夜」


泣いてこなかったんだね君は

その人は言った

素肌の私を包みながら

初めての夜……

その胸に縋りながら私は泣いた

もうずっと昔から私は

そういう風に泣きたかったんだ

キスより愛撫よりにもまして

ただ黙って受け止めてくれる

その胸の中で私は

そういう風に泣きたかった








「終楽章」


好きなんだけど踏み込めない

何かが違うような気がしてる

好きなんだけど

好きな筈なのに

何故、こんなにも

涙が零れてしまうんだろう……








「分岐点」


「愛してる」

このたった一言が

何故、言えなかったのだろう……

幾千と悔やめども

あの時代(とき)あの人はもう二度と還らない








「悲哀の絆」


美しいあのひとが亡くなって

愛するあのひとが悲嘆に沈み

私はその哀しみを癒してあげたかったけれど

私の入り込める場所なんてどこにもなかった








「涙の訳」


理由(わけ)もなく涙あふれるのは

悲しく哀しくあなたを想う

私が在るからいついつ迄も








「その恋」


見つめないよう

求めないよう

愛しすぎないよう

いつもいつも臆病だった

その恋は……








「随想」


愛された記憶は今も

残れども

しあわせ薄き日々の

間にまに……











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