血管について
今回からのシリーズでは、血管に関する病気と、その治療、薬について語ります。
唐突であるが、日本人の死因の1位は、悪性新生物、即ち癌である。2位は、心疾患、即ち、心筋梗塞や、血管に関する病である。3位は、意外に思われる方が多いと思うが、肺炎である。高齢者の誤嚥性肺炎の増加が、原因である。4位は、脳血管疾患、即ち、脳梗塞などの病である。肺炎に関しては、65歳以上の高齢者を対象とした、肺炎球菌ワクチンの定期接種を受けることによって、重症化の予防が出来るとして、癌は、簡単な問題ではない。前回までに述べた通り、遺伝子の異常、食事などの生活習慣、年齢など、様々なファクターが絡み合っている。ただ、治療技術の進歩により、不治の病ではなくなったことは、様々な媒体で伝えられている。この食品は、癌予防に効く、などという話題も多く見受けられる。全ての情報が正しい、とは言えないと思うが、それでも、何十年もの研究を経て明らかになった事実があることは確かであり、予防の大切さを改めて実感する。
さて、死因の2位と、4位は、どちらにしても、血管がキーワードになる。心筋梗塞は、心臓を栄養する動脈が詰まることによって、心筋が壊死を起こし、ポンプとしての機能が不十分になってしまう病態のことである。脳梗塞は、脳を栄養する動脈が詰まることにより、脳機能が低下する病態のことである。
ここで、血管について確認してみる。血管は、動脈と、静脈、加えて、毛細血管に大きく分類される。動脈は、心臓を起点として、全身に血液を送る血管のことで、静脈は、全身から、心臓に帰ってくる血管のことである。毛細血管は、組織において、酸素や、二酸化炭素、栄養などの交換を効率よく行うため、張り巡らされている血管のことである。体内の血管を全て一直線に繋ぐと、何んと地球二周分程の長さになる。薬は、吸収された後、血管に入って全身循環すると述べたが、その移動距離を考えると、途方もない、壮大な旅と例えても、過言ではないだろう。
さて、この血管が詰まるという話をすると、まず思い浮かぶのは、コレステロールだと思う。血中コレステロールが上昇して、血管壁に付着、血管を狭めて、最終的には、狭窄する、と言ったかんじである。
脂肪を多くとることによって、蓄積していくコレステロール。どちらかというと、悪者扱いされがちである。ただし、コレステロールは、様々な物質の合成源でもあるため、そういった意味では重要でもある。例えば、ステロイドホルモンを考えると、生殖器官の形成、甲状腺機能などに大きく寄与しているし、肝臓における、胆汁の合成にも関わる。そして、ビタミンDの合成にも関わる。
次回からは、コレステロールに関する薬や、動脈硬化、更には、血管の病気に大きく関わる高血圧について語ろうと思う。