抗がん剤 その3
代謝は、英語でメタボリズム、という。今日、話題になっているメタボリックシンドロームは、代謝異常に関する病気である。診断基準は、腹囲、血糖値、血圧、中性脂肪、善玉として知られるHDLである。自慢ではないが、私は、食欲旺盛で、カロリー摂取も、平均を超えているのに、あまり太らない体質のためか、BMIは、おおよそ、20くらいに保たれている。といっても、大学がない日は、基本、家で寝ているため、健康的とはいえないが。
運動医学の授業で、教わったことなのだが、BMIが多少高くても(基準値の22よりも高い)、日々運動をしている人の死亡率は、BMIが正常で、運動をほとんどしない人よりも低いとのこと。
改めて、きちんと運動しないといけないのだと感じつつ、家に引き篭もる今日この頃である。
がんに対する治療薬について、今まで説明してきたが、最後に説明するのは、代謝拮抗薬という種類である。がんに限らず、抗菌薬の中にも、菌内の代謝を阻害して、増殖を抑えようとする薬がある。
ところで、日常生活で話題になる代謝を、ミクロの視点で考えると、細胞内では、様々な代謝活動が行われ、エネルギーを産生したり、逆に、貯蔵したりと、上手い具合に、バランスをとっている。抗がん剤が拮抗する代謝は、DNA、つまり核酸の代謝である。今までも、アルキル化剤などの話の時に述べたように、がん細胞のDNAを破壊、もしくは、阻害することが、抗がん剤の目標である。
核酸を構成する塩基は、4種類ある、と述べた。アデニン、グアニン、シトシン、チミンである。これらが、規則正しく二重らせん構造を保つことにより、生命の設計図として機能するわけである。
つまり、この4つの塩基のどれかと、非常に似た構造を作って、核内に放り込ませることが出来れば、異常なDNAが作られることになり、排除される、という仕組みを利用することにより、抗がん剤として、作用するわけである。5FU(5フルオロウラシル)が、これに当たる。
もう一つ、核酸の合成、代謝に欠かせない素材がある。それは、葉酸である。よく、妊婦は、しっかり葉酸を摂取したほうがいい、などという話を聞くと思うが、これは、人体の発生の過程において、非常に重要な働きをする。葉酸は、神経系の発生、特に、神経管の閉鎖に関係する。これが起こらないと、脳や、脊髄が、体外に出てしまうことになる(無脳症、二分脊椎など)。
葉酸の類似構造を示す物質として、メトトレキセートがある。