難しい医学から、納得の医学へ
西洋薬と、漢方薬について、暫く書きたいと思います。
よろしくお付き合いください。
西洋薬 vs 東洋薬 その1
「新しい漢方の薬を試してみましょうか」
高校生の頃、鼻づまりがひどく、とある耳鼻科を受診した時のことだった。その頃は、医学的知識が皆無だったので、能書きなど気にすることは無かった。巷の人でも、風邪をひいたら葛根湯を飲む、などという話をしていたことを思い出す。
大学に入学して、解剖が一段落した後、薬理学の授業がスタートした。
くすりのことわり、と書いて、薬理学。薬学とは、違うらしい。正直に言って、最初の頃は、特に気にしていなかったし、そんなこと、どうでもいいでしょう、と思っていた。
医学部で受ける教育は、大半が西洋医学であり(最近は、漢方学などの東洋医学も若干ではあるが、市民権を獲得し始めた)、薬理学の授業に関しても例外ではない。
西洋薬と、東洋薬の違いは何でしょう、という問いの答えは、意外にもシンプルである。試しに、風邪薬について考えてみよう。風邪をひくと、顔が赤くはれるだとか、熱が出る、咳が出るなどという症状が出る。ここでは、全てを説明することは出来ないので、解熱剤について考える。(解熱は、熱を下げるという意味だから、下熱だとずっと勘違いしていた。あれ、そうだったの、という方がもしいらっしゃれば、こっそり訂正を。)発熱の詳細なメカニズムは、ここでは割愛するが、単純に言えば、脳の視床下部というところに、体温を司る中枢があって、そこが、身体の各部に指令を出すことで、体温が上がるということである。運動した後に汗をかくのも、この視床下部からの指令によるものである。
さて、解熱、つまり熱を下げる薬というのは、この、視床下部に働きかけて、体温を上昇させよう、という作用をブロックすることにより、効果を発揮する。
薬を飲んで、消化管を通過し、小腸、大腸において吸収され、血管に入って、全身を循環する。これについては、西洋薬も、東洋薬も同じである。
それでは、西洋薬と、東洋薬の違いは何か。
答えは、西洋薬には、標的があるが、東洋薬には、標的がない(というより、詳細が分からない)ということである。
標的のことを、英語でターゲットと言う。ターゲットがあるか、ないか、これが本質的な違いである。